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「たぶん、恋愛小説家」_恋愛はツーブロックで

最近の拓人は、どこか暗っぽい

と言うか、暗いっぽい色の服を着ている

まさかのカーキ色

何か変な活動に目覚めたんかな

ドンキーポンタの洋服売り場で
拓人はあたしにウンチクたれたことがある

「あんたさあ~もっと明るい色の服着なよ~暗い色の服ばっかじゃんか~」

「はあ?うっさい、拓人。別に何着ようが関係ないじゃないのよ!似合わないんだし!似合いそうなの、これでも必死に探してるんじゃないのよ!あんたとは違うの!」

すったかもんだかで、結局プーマンのチャコールグレーのmen'sのSを探しだし、女物の服を戻した

拓人はため息ついた

「あっちの店員さん。俺が明るい色の服着な、って言ってた時「うん、うん」って、頷いてたよ!絶対そーなんだよ。素直じゃないんだから」

あたしは店内である手前、強く出られない

だからなんで、あんたらいつ、あたしを見てたんだよ

そっちのほーが、こわいわ!

「あたしだって、爽やかに軽やかに着て飛び回りたいわよ!だって出来ないンだもん!似合わないンだもん!あたしを見たら誰でもわかるでしょ!拓人のバカ!」

とか言いながら、いつか拓人が着るのを夢見て、ネイビーブルーのストライプのYシャツをこっそり買う

拓人のカーキ色のカーゴパンツ

靴を見ると・・また変わってる

ベージュ系だけど、モスグリーン入ってるように見える

パンツと色、合わせてる

やっぱこいつはお洒落なのよね

たまにゆく拓人とのデート

だからあたしもお洒落したい
でも面倒

慣れなくなったお仕着せ

だったらうちでダラダラ売れない小説書いていたほうがいいんだ

バキバキ、ミントチョコ噛み砕く

ふと、口をついて出るのは「あー、つまんない」

いつも、たいてい、つまんない

トンカントンカン
階段を上がって来る

拓人💖来てくれたんだっ

「たっでぃま~(*´∇`*)ゆっくりさせて~」

「ちょっと拓人!ジャージ履いてよ!」

「え~?これハーフパンツだよぉ~(///∇///)」

「すぐ脱ぐンじゃないわよっ!変態か!」

「いいじゃあ~ん。くつろぎだよぉ~」


暮れてくると、あたしは外の変わる面影に胸が踊ってくる
部屋の照明が少し、あたしに力を貸してくれる
ちょっぴり可愛く、大胆に

本当はあたし、素直だ

ことん、と拓人の膝に頭を乗せる

どーしたのさ、って拓人照れるの


「俺、ちんぽ、ダメ」

「は?」

「出ない。俺、ちんぽ、ダメ」

なんかその言い方が可愛くて、あたし笑っちゃった

「やだ、拓人」

頭、大丈夫だよって撫でる

「拓。拓人、あたしがダメなの?」

思い当たらないこともない

あたしのほうがうんと歳上

拓人だって心が揺れるだろう


明るい服、フワッといい匂い、風になびくサラサラの髪の女の子とすれ違ったらきっと・・


「俺、ダメ、自信もうない」

「ハイハイ、じゃあ若い畑に行くか、青い粒でも飲んでみれば?」

「あんた冷たいぃー(ToT)」

男の自信と女の自信って、元は同じなんだろうか

世間の普通、常識とやらを知らないあたしにはわからないや

拓人の腕枕

ものすごく熱い体

あたしには燃やすほどの夢も希望も情熱もない

願いが叶うことの少なさは人から人生を楽しむ気力を奪う

次の日の朝

拓人は「出たー」って、喜んでいた

若いって、単純に明快で、ぎとぎとねちねちじゃないのがいいわ

彼氏や彼女、旦那や奥さんのノロケとか、誰かの不満や自分の悩みや自慢聞いて、ちやほやしてやればいいーんだけどさ

あたしはそういうの聞いてると
だんだん、後から具合が悪くなってくる
あの人たちと違う拓人が好き

「頭、似合うね」

拓人があたしの頭を触る

「昨日言ったのに、ニヤケて見てたくせに」

「だって恥ずかしかったんだよぉ~」

拓人、あんたとカーゴパンツとブルゾン着れる季節が来るからさ

あたしは耳脇と襟足を刈り上げ入れたんだ

ツーブロック、年甲斐もなくさ

外に出る度

下を向いてしまう

「どうぞ前を向いて歩いて下さい!」

それは美容師さんからのエールだった

拓人は長い足を蹴りあげてチャリに乗り

すぐに見えなくなった



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