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「爛々と光る目」

とても不気味な芋虫だった

胴体に大きな一つ目のような模様のある

それが異様な黄色と黒に縁取られている

いや、赤だったような眩暈がしてくる

それでいてからだは鮮やかな緑色

篠竹が密集する法面の

水の溜まった側溝の日陰だったから

もっと深緑色でも良いような気がした

その目のような異様な模様と姿態は

あまりに漫画チックだが

気色が悪かった

秘密結社のロゴマークや、ピラミッドの中に描かれているような瞳

予言と象徴の

それもあまり善くないものをイメージした

神はなぜこのように気持ちの悪い芋虫を創造したのか

あえて神が創造したことにしよう

おそらくとてつもなく美しい成虫に脱皮する

または倒されて落ちて来た、いばらの刺に貫かれて絶命する

我々がその木々を倒さなければ

『彼』は、または『彼女』は

その木の枝のどこかでサナギになっていただろう

踏み潰さないように避けるのがミッションのような気がした

周辺の人々には遮光していた篠山が明るくなり

電波も正常に流れるようになり喜ばれた

神はなぜ、命の道のりを中途半端に終わらせるのか

振り落とされてもただそこにいて

みすみす下敷きになる姿は

哀れだが

爛々と光る目は

所詮偽りの見掛けだおしの目で

やはりトロくて滑稽なのだった

人はどうでもいいものの命や存在を

虫ケラというのだったか



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