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「夏ハモノカゲ」

カナカナカナカナ・・

ひぐらしが鳴いている

この声を聞くとああ、夏が来たのだと思う

また一年だ

カーテンが波風のように

すぃー
すぃー

と揺らいでいる

また一年

あと一年

想像すらない

限界は急に訪れる

痛みと苦しさが愛しい夜を支配するとは

私の肚は決まったのではなく

私の腹を破くかのようなおそれを

撫でなする

オートバイのとどろきが響き渡り

ホッとする

ミミズたちがコンクリートに這い出し

絶命していた

蟻ばかりでなく

ゴミ虫までが死骸に集っていた

ダンゴムシに似てはいるが

体の巻けない

何を考えているかわからない虫だと思った

なぜわざわざ灼熱のコンクリートに

草むらから出でるのか

草むらも熱に蒸されいたたまれなかったのか

ほんの短い時間を往復する間に

ミミズの体は大体が分解されて消えていた

弱ったミミズが光に射されてはっきりと見えた

草の茎で掬い上げ

湿った日陰の土に置いた

ミミズは蚯蚓と書いた

ああ、なるほど

コンクリートは固くて痛かったね

せめてあと少しでも長く生きるんだよ


ミミズの血はなぜ

人間のように

赤いのだろうか

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