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月間シナリオ2008.3月号

《シナリオとの読み比べ》瞬の衝撃のシーンがあったことに驚き(ディープにネタバレ)


シナリオ 2008年 03月号



今ではかなり高騰しているのですが(汗)


このシナリオとの読み比べで一番驚いたのは、瞬が自殺を謀って失敗したシーンが描かれていること

それに伴い、他にもカウンセリングなどで瞬のそういう死のうとする気持ちに触れている部分はカットされています。

脚本での、ギャラリーで自分の作品について批判された後に、香澄さんがカウンセリングを勧めるまでの流れ...

映画では、ギャラリーで激昂した後、車に轢かれることも気にしないような態度をとったことぐらいしか描かれていなくて、
心配もあるけど、瞬の性質についての興味深さもあってカウンセリングに紹介したようにも見えるのですが...

シナリオでは、ギャラリーで激昂した後、アルバイトの約束に訪れない瞬を心配して部屋を訪れた香澄さんが、横たわる瞬の痛ましい姿を見つけるシーンがあります。

このエピソードを知ってから観ると、心配して娘にカウンセリングを頼む流れがしっくりとくるし、その後も香澄さんが瞬を放っておけないという切実な思いが深く伝わります。

発作で苦しむ香澄さんの手を握って、『一緒に死んでもいいよ』という瞬の言葉の中に
落ち着いてきているように見えても、まだ死んでもいいと思う気持ちは残っていたり。

その他にも、瞬の攻撃的な性質と、それに深く切り込む形のカウンセリングのセリフなどが、部分的に削られていて

脚本よりも映画はかなりマイルドになった印象

ただ、圭くんに関しては、編集の意図的な場面カットを覗いては、一字一句脚本と同じところがほとんど。

香澄さんのセリフが意訳なのに対して、返す瞬のセリフは、完全にシナリオ通りで、意味として覚えているだけでなく、細かいところまでセリフを覚えきっていることに驚きました。

(それは、もしも命の長ゼリフでも感じたことでした)

全体的に、シーンの順番の入れ替えと、2、3行のセリフのカットが何ヵ所かあり

そのカットされている言葉が、ハッとするキツい言葉だったり、尖ったエピソードだったり

例えば、娘の由里子のセリフで、香澄さんが由里子さんと父親の仲の良さを妬んでいた...と瞬に言うセリフや、

瞬が、自分が放火したから警察に行く、と言い出す前の百合子さんの言葉で
『あんたみたいなロクデナシが、いろんな人を惹きつけて、今までどうして生きてこられたか〜 中略 〜たまたま、普通よりし少し整った顔立ちをして生まれてきたから。ただそれだけ〜』など

現場で削ったのか、編集で削ったのかはわかりませんが、そういう尖った部分を少しずつ排除しながら、脚本より少し優しいイメージに整えられたのかな?という印象でした

また、その分、生々しさを丁寧に取り除くことで、あの詩のような世界観が生まれたのかもしれない...

もし、カットされた数々のシーンが入っていたとしたら、ガラスのように繊細な圭くんの演技が作り上げた世界観には、その生々しさはあの映画の中では濁りのように見えたかも知れない、とも感じられました

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