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ミニノートへの書き込み / Webで稼ぐ3 / セルフ・スタディーズからはじめる4

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2022/12/05 第634号

はじめに

ポッドキャスト、配信されております。

◇第百十八回:Tak.さんとタスク管理の基本について(後半) 作成者:うちあわせCast

今回は「タスク管理の基本」の後半として、プロジェクトという概念についてお話しました。

総じて出てきた結論は「GTDを再評価・再検討しよう」というもの。「一日の行動をどうするのか」とは違うレベルでの思考法・情報処理を提示してくれるメソッドとして位置づければ、現代でもたいへん有用なものだと感じました。

〜〜〜『ライフハックの道具箱』プロジェクト〜〜〜

2022年版の『ライフハックの道具箱』を現在製作中です。

まずは、寄稿していただいた原稿を電子書籍として「組む」必要があり、その準備を進めています。

というのも、去年はRe:VIEWというシステムを使っていたのですが、マークダウン記法をそのまま使えないという問題がありました。変換を噛ませることで一応は使えるのですが、面倒なことは間違いありません。

そこで今年から運用を始めたPandocを使うことにしました。さまざまなドキュメントを変換できるツールで、たとえばmdファイルを与えてやれば、epubファイルが自動的に生成されるといった機能があります。

ただしpandocのコマンドはオプションが多くてたいへんなので、makefileを準備して、makeコマンド一発でepubファイルを生成できるようにしておきました。

加えて、今作っている本は複数のchapterに分かれており、それぞれが別のmdファイルになっていて順番の制御が大変だったので、それを処理するコマンドもセットにしておきました。

具体的には、index.listというテキストファイルを作り、その中に並べたい順番にmdファイルのファイル名を書き込んでおくことで、コマンドがindex.listの中身を順番に処理して、一枚の大きなmdファイルとして出力する、というスクリプトです。これはPythonで書きました。

makeコマンドは、まずそのPythonスクリプトを実行し、しかるのちにPandocを叩くという流れになっています。

長々と説明しましたが、やっていることは本当に簡単なことばかりです。しかし、手動でチマチマとやれば間違いなく面倒なことです。

こういうことを簡単に自動化できるのがプログラミングのいいところです。

{情報源}

◇Re:VIEW ナレッジベース — Re:VIEW knowledge ドキュメント

◇Pandoc User’s Guide 日本語版 — 日本Pandocユーザ会

〜〜〜単語によるアイデアの類似性〜〜

これまでに思いついた一行目メモを書き留めたファイルがあるのですが、その内容が手違いで重複していました。簡単に言えば、プログラムで「上書き」すべきところを「追記」していたのです。

結果的に、1000行くらいであるはずの中身が9000行くらいになっていました。開いたときにあまりに処理が重すぎるので気がついたのです。

さすがにその重複を手作業で取り除くのは人類の手に余るので、正規表現に活躍してもらいました。VS Codeでは行をソートできるのでアルファベット順でソートし、以下の正規表現を使います。

(^.*$)(\n(^\1$)){1,}

置換後は以下。

$1

ある行と、その次の行が同じなら一つにしますよ、という処理です。同じ行が複数回登場しても、上の置換で一つにまとめられます。

参考:Visual Studio Code 重複行を削除する | Qiita

この変換処理をした後、中身を確認してみると無事重複はなくなっていました。めでたし、めでたし。

というわけにはいきません。もともとの順番をソートして並び替えたのですから、もとの順番に戻す必要があります。が、そのことをすっかり忘れておりました。上の処理は破壊的なもので、ようするにそのファイルの中身をそのまま書き換えてしまうものであって、元の順番はすっかり失われています。

でもって、単にテキストファイルに保存してあるだけなので一行ごとのタイムスタンプもありません。せめて処理の前に行番号を振っておけば、それを元に再ソートできたのですが……

と思ったのですが、よくよく考えたらこのファイルは普通に読み書きするものではなく、「新しく追加されたら上に追記」「ランダムに5個取り出して、自分のinbox宛に送信する」という役割しかないのでした。でもって、ランダムに取り出す操作(とそこに戻す操作)で毎日順番は変わっているのです。

なのでもともとの順番にこだわる必要はありません。今度こそ本当にめでたしめでたしです。ただし、後日談があります。

一応重複の消し忘れはないかな〜と上からそのファイルを読んでいました。アルファベット順なのでアルファベットから始まり、あいうえおと続いてきます。すると以下のような部分に出会うわけです。

・アイデアが使えるようになるということ。
・アイデアとwin-win
・アイデアとリソースマネジメント
・アイデアに手を入れることについて
・アイデアの作成と評価
・アイデアの並木道
・アイデアプラント(2022年06月16日)
・アイデアをいかに熟慮につなげていくか。
・アイデアを泳がせておく
・アイデアを処理するとはどういうことか。(2021年4月2日7時52分)

以下のような部分もありました。

・タスクは、どのオブジェクトが持つか?
・タスクはタスクリストの中で起きているんじゃない。現場で起きているんだ。(2021年5月7日8時35分)
・タスクリストに名前をつける。終わってから。(2021年3月25日6時31分)
・タスク管理が注意を向けられた行動とするならば
・タスク管理とは別のところに問題がある場合がある。不安が強すぎる。
・タスク管理の7つの大罪(セルフマネジメントの)
・タスク管理の用語とそのズレ

これは何かと言えば、これまでに自分が思いついた「アイデア」や「タスク」についての着想メモ群です。思いついた時間はバラバラですが、それぞれ「アイデア」や「タスク」という共通軸を持っており、その軸に応じて着想メモが集合しているのです。

つまり、アルファベット順のソートは部分的な「検索」と似た効果がある、ということです。もちろん、文頭ではなく文中にその単語が出てくるものは集まっていませんので不完全な検索&抽出でしかありません。それでも、重要なものほど頭に書かれる傾向があることを考えると、かなりの程度を網羅していると言えるでしょう。

Scrapboxのリンクによる関連つけがうまく機能するのも、この点が関係しています。

たとえば「タスク管理」という言葉で思い浮かべるもの(あるいはその概念グループ)は人それぞれで違うでしょう。そのことは、Googleで「タスク管理」を検索してみればよくわかります。

一方で、私の中の「タスク管理」は、時間軸的に普遍性が高いものです。私がイメージする概念グループにラベルを貼ったものが「タスク管理」であり、私がそれについて何かを思いつくたびに「タスク管理」という単語が引っ張り出され、それがメモに記されます。

だからその単語で検索すると、私の脳内の概念グループに関連するメモ群が引っ張り出せるのです。

言い換えれば、それらのメモ群は単に同じ単語を共有しているのではありません。同じ概念グループに属しているのです。

この話がどれくらいうまく説明できているかはわかりませんが、自分の中では大きな発見でした。特にこれまでは「時系列至上主義」だったので、かなりそのパラダイムが揺らいだ気がします。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. アイデアリストをアルファベット順でソートしたことはありますか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。今週は倉下の仕事術としてミニノートのお話を。加えて二つのエッセイをお送りします。

ミニノートへの書き込み

前回までは、「インボックス」あるいは「デイリーインボックス」の話をしておりました。特に「デイリーインボックス」システムの特徴を検討しました。

今回は少し脇道に逸れて「ミニノート」のお話をします。倉下が以前までずっと使っていたミニノートについてです。

■安心のポケットノート

大学生時代から、ずっとポケットにノートを入れていました。ノートというかメモ帳サイズのミニノートです。そのノートとペンとセットにして持ち歩き、何か思いついたらそこに書きつける。そういうことを"基本動作"にしていました。

書きつけるものは雑多です。着想の走り書きメモがあり、買い物リストがあり、ちょっとした考察がありました。日記的な自分の心境を吐露した文章もよく紛れ込んでいたように思います。

そうしたミニノートはたいてい移動中(バスや電車)に書きつけるので、移動先に落ち着いたらそれを読み返して必要な処理をします。たとえば喫茶店でオーダーが済んでからコーヒーが運ばれてくるまでの間に終了したタスクは線で消したり、自分の考察を読み返してさらなる検討を進めたりするわけです。

思い返してみれば、そうした行為が可能だった日々はじつに牧歌的だと言えるでしょう。そこまで「情報」に追い立てられていなかったのです。

■iPhoneが変えた世界

"筆記具"が変わったのはiPhoneを導入してからです。もう少し言えばEvernoteを使うようになって、FastEverという最高のメモアプリが登場してからです。

そのセット(iPhone+FastEver)は、入力として見れば最高のメモ環境でした。即座に書き込めるし、パソコンにも同期される。自分の汚い字ではなくテキストデータで保存されるので、そのまま他の作業で使うこともできる。なんなら写真なり音声メモを添えることだって可能。

これ以上ないメモ環境でしょう。

しかしながら、完全な上位互換でもありませんでした。変わった点があったのです。それは、入力したものをパッと見返すことをほとんどしなくなった、という点です。

FastEverは、送信に非常に適していますが、逆に言えば「送るだけ」のツールです。そこでは見返しは行われません。見返すためにはEvernoteアプリ本体を立ち上げる必要があります。iPhoneでです。

今のEvernoteアプリはかなり高速になっているのでそこまで億劫さは感じませんが、その当時のEvernoteは、iPhoneのスペックも相まって、気軽に起動できるものではありませんでした。外出先でどうしても調べなければならないことがあるけども、パソコンを開く余裕はない、という「緊急事態」においてのみ発動されるコマンドだったのです。

結果的に、FastEver経由で入力したものはパソコンでしか見返すことがなくなりました。でもって、パソコンでは作業をするので、作業外のこと──ちょっとメモを読み返して、それについて考えること──は行われなくなってしまったのです。

■生産性と有用度

デジタル最強メモセットのおかげで、メモの件数(あるいは総文字数)は飛躍的に増えました。しかも、労力や手間を増やすことなくその結果が得られたのです。「生産性」という観点から見れば、グレートな結果と言えるでしょう。

一方で、そうして書き留めたものをどの程度「使ったのか」という指標で計ってみると、むしろその数字は低下していたのではないかと思います。特に、総記録数自体(つまり母数)が増えているので、その低下率は相当大きかったように思います。

もちろん、iPhone+FastEverの運用が完全に失敗だったわけではありません。むしろ「情報の流れ」の全体から見れば有用度は高かったと言えるでしょう。しかし、すべての情報に対して同じ有用さが発揮されたわけではない、という点がこの問題のややこしいところです。

ある種の情報においては、iPhone+FastEverの運用は有用度を低下させてしまっていました。でもって、その情報が「アイデア」だったわけです。

■ミニノートは何をしていたのか

では、うまく運用できていたミニノートは一体何をしていたのでしょうか。

ポケットにミニノートを忍ばせておくことで、何か思いついたら即座にメモできるようにする、という環境が構築されていたことは確認するまでもありません。メモの極意その1「思いついたら、即座に書き留めるべし」を達成するためにも必要な環境です。

では、そこに書かれていたものはどんな情報だったのでしょうか。

まず、先ほど確認したように、買い物リストや簡単なタスク(たとえば「月末までに市役所にいく」など)があります。これらは単純に実行されるか、「今日のタスクリスト」などの別のリストに移されて実行を待つことになります。で、実行するかリストに移せばお役ごめんです。

タスクに限らず、「とりあえず書いておいて、後から処理する」という情報は他にも多くありました。でもって、この構図だけ見ればこれは「インボックス」だったと言えるでしょう。デビット・アレンが言うそれとは異なるかもしれませんが、担っている役割自体は共通していると言えます。

そして、こうした情報については、デジタル体制に移行しても問題なく機能していました。iPhoneでメモして、Macで処理する。これでうまくいったのです。

■それ以外の情報

ミニノートにはそれ以外の情報、つまり「とりあえず書いておいて、後から処理する」ことをしない(あるいはできない)情報も書かれていました。それらはどこか別の場所に移されることなく、ただじっとそのミニノート上に鎮座し続けていたのです。

デジタル体制に移行して、うまく運用できなくなったのはこの類の情報でした。それが前回に書いたインボックスで「アイデア」の運用ができなかった、というお話になります。

それもそのはずで、アナログ時代ではアイデアは「処理」されていなかったのです。たしかに、タスクと同じ場所に書かれていたので、それが「インボックス」的な場所に置かれていたとは言えるのですが、二種類の情報についての手つきはまったく異なっていたのです。片方は処理して、もう片方は置いておく。そういう相反する処置を施していたのでした。

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