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第十五回 第三の方法としてのアウトライン

「文章を書く前に、アウトラインをちゃんと作りなさい」

と教わったことがあるかもしれません。「ちゃんと」ってなんだよ、という気持ちもわずかに生まれますが、それを除けば私もそのアドバイスには賛成です。

今から書こうしている文章で、「何を、どのように」書くのかを検討し、その結果を一列に並べて表示しておくこと──アウトラインを作ること──はたいへん有用だと言えます。

そしてそれは、「一日を始める前に、デイリータスクリストを作っておきましょう」というアドバイスと基本的には同じことです。

執筆の計画

アウトライン作りは、執筆の計画作りです。たとえば、以下のようなアウトラインは、

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以下のようなタスクリストとほぼ同じ意味を持っています。

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つまり、アウトライン≒タスクリストだと捉えられるわけです。デイリータスクリストならぬ、ブックライティングリストと呼んでもよいでしょう。

そして、「ブックライティングリスト」だと捉えるなら、この順番は入れ替えても大丈夫だと思えるようになります。

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この感じがわかったら、あと一歩です。

かわりゆく計画

一度デイリータスクリストを作り、それを使ってみると、「自分で作った計画なのだから、その通りにできるはず」というのが単なる思い込みに過ぎないことが体感できます。予想外のことはいくらでも起こりますし、自分が見逃していたこともいろいろ発見されます。

よって、その変化を受けて、デイリータスクリストも修正してよいのでした。むしろ修正していくことにデイリータスクリストの妙があるのでした。

これは、アウトラインに関しても同じことが言えます。

アウトラインは、これから書く文章についての、自分が作った計画です。そしてそれは、執筆を進めていくうちに、修正を迫られます。自分が書いたことによって理解が深まった、足りていないものを見つけたり、最近読んだ本によって新しい情報を得たり……。さまざまな変化要因がありえます。

だからこそ、アウトラインを作るのです。

一日の中に「予想外の変化」が次々と発生するからこそ、デイリータスクリストを作らないのではなく、むしろ積極的に作るのが良いように、執筆を進めるの中で「予想外の変化」が生まれるからこそ、積極的にアウトラインを作るのです。

むしろ、アウトラインを作ることによって、そうした「予想外の変化」とうまく付き合っていけるようになります。

手に負えないもの

では、どのような文章であっても、その執筆にはアウトラインが必要でしょうか。答えはNoです。

たとえば、私は今この文章をアウトラインなしで書き進めています。ここまで1100文字ほど書いてきましたが、特に問題は起きませんでした。しかし、数万字の文章となると同じようにはいきません。その違いがどこにあるのかと言えば、予想外の変化が「手に負える」量なのかどうかです。2000字ほどの分量であれば、予想外の変化が起きたとしてもその影響は小さく、脳だけで処理できます。一方、数万字の文章から生じる予想外の変化は量も多く、脳だけで処理するのは極めて困難です(個人差はあります)。

これは、デイリータスクリストを考えてみてもよいでしょう。そのリストには「やること」を書きますが、たとえば爪の切り方の手順一つひとつを記述したりはしません。それは「手に負える」ことだからです。予想より爪が伸びていても、あるいは深爪してしまっても、大勢に影響はありません。爪切りを完遂することは可能です。

しかし、それと同じようには一日の行動はいきません。だからリストを作るのです。

つまり、リスト作りとは、手に負えないものを、手に負えるようにする≒「操作」できるようにするための手段というわけです。

よって、手に負える量の文章ならばアウトラン作りは不要ですが、手に負えない量の文章であればアウトラインが役立ちます。もちろん、どのくらいの量でそれが必要となるのかには個人差がありますので一概には言えませんが、数千字以上といったところがよくあるパターンのようです。

さいごに

「アウトライン通りに書けないからこそ、アウトライナーが必要になる」

アウトラインとは、執筆前に立てる計画であり、それは執筆を進める中で変化していくものです。だからこそ、自由に項目を動かせるアウトライナーというツールが役立ちます。

立てられた計画に従順に従うのでもなく、かといってまったく反抗してアナーキーに進めるのでもない、第三のやりかた。それが「アウトラインを作り、それを作り替えていく」という執筆のプロセスです。

この考え方は、デイリータスクリストと通じていますが、それだけでなく、私たちが直面するある傾向の行動、つまり「未知の物事に、一定の方向性を持って対処する」こと全般に通じています。言い換えれば、さまざまな物事に応用が利くのです。

それがすなわち、Re:visionです。

(つづく)

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