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ワープロ専用機の未来と構造化文章/新しいメルマガの書き方/1writerのAction自作戦記

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2021/02/22 第541号

○「はじめに」

ポッドキャスト配信されております。

◇40 新書ってなんだろう?(倉下忠憲さんゲスト1/3) by ぱうぜトーク | A podcast on Anchor

◇41 新書3冊選んで相互にお勧めしよう(倉下忠憲さんゲスト2/3) by ぱうぜトーク | A podcast on Anchor

◇42 いつか書きたい新書をいま考える公開企画会議(倉下忠憲さんゲスト3/3) by ぱうぜトーク | A podcast on Anchor

◇音声020:倉下忠憲さんに「DoMA」について聞く(理論編) - シゴタノ!記録部


◇第六十回:Tak.さんと発想と文章について by うちあわせCast | A podcast on Anchor

◇ブックカタリスト第06回:『闇の自己啓発』 - ブックカタリスト

はい、今回もたくさんしゃべっておりますね。お気軽にお聴きくださいませ。

〜〜〜いつの間にか無くなるスペース〜〜〜

たしか去年のことです。我が家の本棚を大整理しました。明らかに不要な本を処分し、スペースをぐんと空けたのです。

そこから一年経ち、作業机のサイドテーブルには本が山積みになっていて、あれほど空いていたスペースはもうどこにもありません。

不思議です。実に不思議です。

私が寝ている間に、本たちが細胞分裂してスペースを埋めてしまったのでしょう。そうに違いありません。

とにかく三段ボックスの一つを空っぽにし、そこにサイドテーブルの山を詰め込みました。これでテーブルはすっきりです。この状態がどれくらい続くかは、……細胞分裂の速度しだいです。

〜〜〜アイデアを一晩寝かせて見返す〜〜〜

毎日作業記録に書き出している断片的なアイデアを振り返ることにしました。というか、昔Evernote上でやっていた仕組みを復活させたのです。

・日中作業記録にアイデアを書き込む→
・一日の終わりにアイデアだけを抜き出して別ファイルに転記→
・そのファイルからWebページを生成→
・カード型でアイデアが閲覧可能

というものです。

作業記録をテキストファイルに移行してからこの仕組みが途切れていたのですが、突然思い立って復活させてみました。でもって、やっぱり良いです。「一日経ったアイデアを見返すこと」は、言い様のない良さがあります。

その「言い様のない良さ」とは何なのかを言語化するために、今後はより意識的にこの仕組みを使っていこうと思います。これから10年の知的生産にとって非常に大切だと感じますので。

〜〜〜絵文字で困る〜〜〜

デジタルノートでノートの識別性を高めるには、ノートタイトルに絵文字を入れるのが有効です。日付の情報なら「カレンダー」、書籍情報なら「本」、お出かけなら「カバン」など、たくさんの種類の絵文字から、そのノートのコンテキストに沿ったものをチョイスすることで、タイトルを「読まずに」中身を判断することができます。

ただし若干困るのが、「プロジェクト」に関するノートです。連続性のある、複数のタスクで構成される情報の管理を行うノートには、どのような絵文字を添えるのが最適でしょうか。

チェックボックスの「済み」の絵文字だと、いかにも終了済みのプロジェクトのように見えますし、かといってチェックボックスの「未」の絵文字は見当たりません。

結局、「フォルダ」のような無難な絵文字に逃げることになるのですが、いまいちしっくりきていないのが正直なところです。

皆さんだったら、何を選ばれるでしょうか。気になります。

〜〜〜Scrapboxの変えがたい良さ〜〜〜

Scrapboxと似たツールがいくつも出てきています。Roam Researchしかり、Obsidianしかりです。これらはネットワーク志向という点でScrapboxと共通点を持ちますし、いくつかの機能においてはScrapboxよりも優れた点があるでしょう。

しかし、Scrapboxを使って複数人と同期的にページを編集する楽しさは、他のツールでは味わえません。でもって、これを一度味わうと、他には変えがたい「良さ」が感じられるのです。極端なことを言えば、「メール」や「チャット」に代わる、新しい情報交流のメソッドがそこに立ち上がっている、とすら表現できます。

そうしたもろもろを踏まえて、やっぱり私はScrapboxです。別に本を書いたからそう言っているわけではなく、純粋に心の底からそう感じております。

〜〜〜「おーぷん・かーそる」の別の仕方〜〜〜

メンバー固定で作っている電子雑誌「かーそる」とは別に、寄稿者を募る「おーぷん・かーそる」という試みを考えていたのですが、以前紹介したベックさんが立ち上げられたライフハックのコミュニティーでそれを行えばよいのではないか、という閃きがやってきました。その場合は、「かーそる」の看板を掲げずに、別の名前でやることもできます。

もともと、「おーぷん・かーそる」は、もっとライトに、それこそ文房具のムック本のようなノリで雑誌を作ろうと考えており、そのテーマも「ライフハック」のそれと強く重なります。つまり、人材的にも、テーマ性的にも、ライフハックの集まりがぴったりなのです。

そのように位置づけると、本家かーそるはライトなことを考慮することなく、気にせずディープな方向に邁進すればいいと割り切れます。役割分担です。

まあ、そのようなディープさを目指すのが、本当に良いことなのかどうかはちょっとわかりませんが。

〜〜〜最近注目している漫画〜〜〜

今週は最近注目している新しい漫画3作を紹介します。mだ1〜3巻までしか出ていないので、すぐに追いつけるかと思います。

『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人、作画:アベツカサ)

魔王を倒したパーティーの一員だったエルフが、他のメンバーが(寿命で)逝った後の世界でどのように過ごしていくのか。少し寂しく、そして暖かいストーリーです。よくあるRPG・ファンタジーの世界観を使いながら、しかしこれまでになかった視点で語られる独特な物語です。

『【推しの子】』(赤坂アカ×横槍メンゴ)

タイトルからすると、アイドル好きの男性が自分の推しアイドルを応援する作品だと思いますよね。でも、違います。ネタバレを避けるので詳しくは書きませんが、かなり意外な展開を見せる作品です。

『ダーウィン事変』(うめざわしゅん)

実に説明が難しい作品です。半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーが主人公なのですが、その重なり合う存在が、そもそも「人間って何だろう」と考えるきっかけを提供してくれます。ヒューマン&ノン・ヒューマンドラマです。

〜〜〜今週のQ〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりでも考えてみてください。

Q. プロジェクトノートに絵文字をつけるとしたら、どんな絵文字を選びますか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

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○「ワープロ専用機の未来と構造化文章」

以下の記事を読みました。

◇「ワープロはいずれなくなるか?」への回答を今のわれわれは笑えるか あれから30年、コンピュータと文書の関係を考える(1/2 ページ) - ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2102/18/news017.html

論点がさまざまに伸びているので若干とっかりが難しいのですが、いくつか考えたことを書いてみます。

まず、記事中に出てくる「ワープロ専用機」は、もしかしたら若い方はご存知ないかもしれません。現代で言うところの、ハイエンドなノートパソコンくらいのサイズの、モノクロなディスプレイの、文章を作成するくらいしか機能がない、めちゃくちゃ重いガジェットが昔あったのです。

そのガジェットは、フロッピーデスクに文章を保存することもできましたし、なんと印刷機能がついていたので、そのままプリントアウトもできました。ようするに、デジタル式の日本語入力可能なタイプライターだと考えれば、そう間違ってはいないでしょう。

当時はパーソナルコンピューターがまだまだ高価であり、それに比べればワープロ専用機は「がんばれば買える」くらいの値段でした。その時代は、いわゆるホワイトワーカーが増えており、文章を書くことが仕事に組み込まれている人も増えていたので需要も高かったのでしょう。

私のように、趣味で文章を書きたい(小説ですね)人間にも、ワープロ専用機は憧れの存在でした。辞書もついているし、たくさん文字を書いても手首がいたくならないし、大量の原稿用紙を準備する必要もない。しかも、完成品をプリントアウトしてにんまりすることもできます。実に素晴らしい。

上の記事で取り上げられている各メーカーさんたちは、そうしたワープロ専用機がもっと普及している未来を「予想」していたようですが(ポジショントークというよりも、開発しているメーカーならば当然の考えでしょう)、結果的に、そのようなガジェットを見かけることはなくなりました。私も、高校生以来そうした端末を一切触っていません。悲しい現実です。

■普及している端末

とは言えです。話はそんなところでは終わりません。

まず、「文章をデジタル入力・保存する装置」として捉えれば、デスクトップパソコンとノートパソコンが(おそらく各メーカーの予想を遙かに超えて)普及している現実があります。ノートパソコンなら、ワープロ専用機よりも軽く、より多くの機能を担うことができます。技術の進歩です。

また、「文章しか入力できない装置」として捉えれば、我らが「ポメラ」という端末があります。ワープロ専用機のように印刷機能はありませんが、通信によって他の端末にデータを移すことが可能なので、現代的な状況では同じような役割をはたしていると言えるでしょう。

とは言え、ポメラが保存する文章はプレーンテキスト(.txt)です。いわゆるワープロが想定するリッチテキストではありません。この点の違いは、大きい場合もありますし、そうでない場合もあります。

ややこしいのは、そうであっても、ポメラは見出しが使えるのです。つまり、構造化された文章を扱えます。上の記事の論点をかき乱すような存在です。

さらに言えば、iPhoneやiPadなどの「パソコンでないけれども、パソコンっぽいことができる」ガジェットも話をややこしくします。これらはプレーンテキストもリッチテキストも扱え、なんなら横書きだけでなく縦書きも可能なのです。

つまり現代は、過去の状況と比較すると、ひどく混沌としていることがわかります。

■何にフォーカスするのか

もう一度、「ワープロ専用機」の話に戻りましょう。

(一応)持ち運びが可能で、テキスト入力しかできず、しかしそれはリッチテキスト(ドキュメントファイル)であり、直接印刷できる端末は、現状はもう死滅していると言ってよい状況です。しかし、これらの要素のどこかを変更すれば、それに似たガジェットは今でも生き残っていますし、なんなら普及しすぎるほど普及しているとも言えます。

よって、どの要素にフォーカスするかで話は変わってくるでしょう。

まず、持ち運び可能な入力端末に関しては、びっくりするほど普及しています。これだけたくさんの人が「メモ」できる端末を持ち歩くようになった時代は現代が初めてでしょう。それは、知的生産のための下準備が整っていることを意味しますが、そこに深い入りするのはやめておきましょう。

また、直接誰かに手渡せるメディア(媒体)を生成できる端末としてみれば、今は紙よりも電子ファイルの方が強く、しかもコンビニのマルチプリンターを介すればそのような電子ファイルから紙へのプリントアウトにも接続できるので、これまた圧倒的な普及をしていると言えます。

しかし、「テキスト入力しかできない」端末に関して言えば、スマートフォンやタブレットに比べれば普及していません。というか、スマートフォンやタブレットが普及しているので「テキスト入力しかできない」端末は下位互換だと認識されてしまうのでしょう。知的生産の技術に興味を持つ人でも、ポメラを普段使いしている人は稀です(私も一人しか知りません)。

これは素直には喜びにくい状況です。上位互換だからといって、良い結果をもたらすとは限らないからです。私たちはさまざまなことを便利にしつつも、常に「気移り」しやすい状況を作っているとも言えるのです。その気移りは、生産性においても、精神衛生的にもよいものではありません。しかし、楽しいし便利なので、そこから離れられないのです(実体験に基づいています)。

たぶん、私がいつまでもポメラへの憧れを捨て切れないのは、昔感じていたワープロ専用機の「良さ」の記憶が(若干の美化を含みながら)ずっと残っているからなのでしょう。「文章しか書けないデジタルツール」には、パソコンにはない「良さ」(もっと言えば機能)があるはずなのです。

ともかく、この「テキスト入力しかできない環境」については、また改めて考えたいと思います。

■レイアウトと構造

さて、残すはリッチテキスト(ドキュメントファイル)です。ここには絡み合う二つの要素があります。一つは、印刷を前提とした「レイアウト」。もう一つは、文章の構造化です。

基本的に、レイアウトを整える場合は、それを構成する要素を構造化します。イメージしやすいのは、HTMLでしょうか。一つひとつの要素に個別にスタイルを指定するのではなく「見出しの2は太字にして、フォントサイズを24pxにする」といったレイアウト調整が行われるのですが、これを行うためには「見出しの2」を指定しなければなりません。これは、そのページ(文章)を構成する要素に、それぞれ役割を与えることだと言えます。

そして、「見出しの2」とは、「見出しの1」の下位に属し、「見出しの3」を自らの下位に持つ、という役割を担っており、それがつまり構造化、ということです。

ワープロソフトでも、文章の見た目を整える場合は、個別の行にいちいちスタイルを設定するのではなく、「ここは見出しの2で、そのサイズは24にする」といった感じで進めていくのが一般的……かどうかはわかりませんが、そのやり方で進める方が効率的です。

そう。ここなのでしょう。文章のレイアウトやスタイルを調整する際に、文章の構造化を利用することが一般的かどうか。この点が、現代の「文書とコンピュータと技術」について考える上で重要な点だと感じます。

(以下に続く)

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