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目標ではなくテーマを/階層的記述の不都合/ボトムに寄りそうビジョン/プロジェクトを捉える三つの視点

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2021/01/18 第536号

○「はじめに」

ついに新刊が発売になりました。

『ライフハックの道具箱 2020年版』

ちなみにこの本は、最近書き進めているとは別の本です。2020年の12月に「よし、本を作ろう」と突然決意した突発的出版とも呼べる現象によってこの世に生を受けました。次に紹介するポッドキャストでもこの本について話をしておりますので、そちらもどうぞ。

〜〜〜ポッドキャスト〜〜〜

ポッドキャストがいくつか配信されております。

「おいおい、最近ちょっとしゃべりすぎじゃないの?」という感じもなくはないのですが、ポッドキャストをやってみることで(特に対談型のポッドキャストを重点的にやってみることで)、どのような変化があるのかを今年は確かめていこうと考えています。孤独な個でもなく、巨大プラットフォームの単なるノードでもない、そんな在り方を目指して。

〜〜〜新しいEvernote〜〜〜

Evernoteがアップデートして、「ホーム画面」が新しく追加されました。

これはとても良い変化だと思います。少なくとも、既存のEvernoteにごちゃごちゃと「新機能」を追加していく動きよりははるかに評価できます。

ウィジェットの今後についてはカレンダーやタスクリスト・チェックリストなどのサポートが考えられますし、たくさんノートを持っているユーザーならまた違った使い方を思いつくこともあるでしょう。そういう「知恵」を集めて進化していけるならば、Evernoteはまだまだ他のツールに負けない存在感を獲得できると思います。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なるアンケートなのでお気軽にお答えください。

Q. このメルマガの「はじめに」で本を紹介するとして、「最近見つけた本」「最近買った本」「最近読んでいる本」のどれが一番期待度が高いでしょうか。

では、メルマガ本編を始めましょう。今週も「一年の目標」に関する話題を盛りだくさんでお送りします。

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○「目標ではなくテーマを」

毎年、一年の始めに「今年の目標」を考えています。手帳を使っていた頃は手帳の冒頭あたりのページに、Evernoteに移行してからはその年の元日に新しいページを作ってそこに「今年の目標」を書いていました。

とは言え、欲張ることはしません。一年の目標は最大三つまでと決めています。その三つも大それた野望などではなく、仕事上のちょっとした目標のようなものです。たとえば2019年は「セルフパブリッシングに活を入れる」「メルマガ拡販」「Webメディアからの収入」が設定されていました。本当に些細な──少なくともビジネス書で目指されるようなものと比べれば地味な──目標ばかりです。

そもそもとして、そうした目標の大前提に、「今年一年を生き延びる」という通年の基礎目標が鎮座しています。冗談でもはったりでもありません。田舎に住む地味な物書きが、一年間仕事を続けること自体困難を伴いますし(伴うのです)、それが為せたとしたら一つの達成だと言えるでしょう。よって、それができたのならば、二階部分の目標が達成できていようがいまいが些細な話でしかありません。

つまり、元日に行われる目標設定は「今年一年はこういう目標に向かって、さまざまな施策を行っていこう」という一つの方向づけに過ぎませんでした。そこには、ある種の真剣さが決定的に欠落しています。

だからでしょう。そうして立てた目標も、一ヶ月も経てばすっかり忘れていました。その話は以前も書きましたが、そうして忘れてしまうからこそ、手帳やノートに書いておくのだとも言えます。忘れてしまっても、軌道修正ができるように記録という錨を下ろしておくのです。

だから今年も同じことをしようと思いました。玄関に入ったら靴を脱ぎたくなるようにEvernoteに「2021年」のノートを作り、そこに今年の目標を三つ書こうとしたのです。

でも、書けませんでした。白紙のページを前にしても、何も言葉が出てこないのです。

先ほども書いたように、通年その作業は真剣さを欠いたものでした。言い換えれば、気楽に書けるものだったのです。個人的な難易度を比較をすれば、コンビニBlogを更新するよりは難しく、シゴタノ!の記事を書くよりは簡単程度の位置づけでした。やろうと思えばできる、少なくともまったく手が動かないということはない。そんなレベルの作業です。

でも、それができなかったのです。

こうした不具合(エラー)に遭遇するとき、私は器の不一致を疑います。つまり、それまでできていたのに、それと同じことができていない状況があるならば──能力不足である可能性は低いので──出力と私の間にある存在(インターフェース)が問題なのではないか、そしてこの場合Evernoteというノートが私のやろうとしていることとズレているのではないかと疑ったのです。

散文は散文として、詩は詩として、戯曲は戯曲として、ジョークはジョークとしてこの世に生を受けます。それを異なる媒体で世に出そうとすると、脳がうまく動いてくれません。それと同じようなことが私の脳内で発生している可能性があります。

そこでツールを替えてみました。EvernoteからScrapboxにバトンタッチです。

代替の選択肢としてはWorkFlowyもあったはずですが、念頭にも上りませんでした。たぶん、Evernoteでやろうとしていたことが、構造的リストだったと直観していたからでしょう。

なにせ、「今年の三大目標」を考え、それを達成するために必要な行動をリストアップするのですから、まさにアウトライナーでやるべきアクションです。それができなかったのですから、同じ形式のツールに移ってもダメでしょう。異なるアプローチが必要です。

そこでチョイスされたのがScrapboxだったのですが、これがものの見事にはまりました。というか、あまりにも長い間Scrapboxに触れ続けたことで、私の脳が「構造的に考える」ことよりも「ネットワーク的に考える」ことに慣れてしまったのかもしれません。だから、構造的リストという器に一年間の目標を書き出すことができなかった可能性は十分考えられます。

なにせNotionを本格的に使おうと取り組みはじめたときも、結局大きなページ構造をどう組み立てていいかまったくわからなかったくらいです。「わからない」というか、そのための思考がうまく立ち上がってこなかったが正確かもしれません。

そして、思い返してみれば、その「Notionにページ構造を立ち上げようとしているけどもうまく考えられない感覚」と、「Evernoteに一年の三大目標を書けないときの感覚」は、ひどく似通っていた気がします。何かしら提出すべき「物」はあるのだけども、それがうまく形にできない。そういうもどかしさです。

きっと魔法を使える感触はあるのに、そのための呪文が思い出せない魔法使いがいたとしたら、似たようなもどかしさを憶えるかもしれません。

ともかく、Scrapboxにページを作ったことで、思っていることがスラスラと書き出せるようになりました。それは以下のページで、以前「一年のキャッチコピーをつける」で紹介したページでもあります。

このページが私の一年の目標……ではなく、テーマのページです。

■目標ではなくテーマ

「目標」ではなく「テーマ」という言葉遣いをしているのは、細かい言葉遊びをしたいからではありません。先ほど書いた、私の二つの行為の差、つまりやろうと思ってうまくできなかったことと、やってみて実際にうまくいったことの差を明確にしたいからです。

目標とテーマには重なる部分があるとは思いますが、しかし「目標を立てる」ことと、「テーマを見つける」ことには質的な違いがたしかにあります。

それはどのようなものなのか。それは以下で続けましょう。

(下につづく)

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