Notionは何ができるのか? / ハンドメイドなリストとオートマティックなリスト / 読む書く考えるの順番
はじめに
ポッドキャスト、配信されております。
◇155. 【ゲスト回】デジタル or アナログ?究極のノート論を語り合おう!~ 著者・倉下忠憲さん ·~ | ブックテラス | Podcast on Spotify
前回に引き続き「ブックテラス」へのゲスト出演回です。ノートの話ならいくらでもできますね。
よろしければお聴きください。
〜〜〜リストとカード〜〜〜
最近、Tekenote という新しいノートツールを触っております。
◇Tekenote: Driven to Achieve
◇Tekenote | 知的生産の技術
カード型が好きな私としては好みのツールで、ためしにちょこちょこ着想メモなどを書きつけているのですが、面白い発見がありました。
まるっきり白紙の状態で、「さあ、着想メモを書き留めよう」と腕まくりしても着想が降ってくることはありません。そこで、Workflowyに書き留めていたメモのいくつかをこのTekenoteに移したのですが、そこで違いに気がついたのです。
Tekenoteに書き移したものは、書き終わると「終わった」感があります。一段落ついた、という感じです。一方で、Workflowyに並べてあるものはそうした感覚がありません。強いて言えば「まだ、途中」という感じがあるだけです。
その違いはどこから生じているのでしょうか。
ちなみに、二つのツールで書かれているものはまったく同じではありません。WorkflowyからTekenoteに転記した際に、記述の変化が生まれています。
その記述の変化が私の感覚を変えている側面もあるでしょうが、それ以上に大きいのが見え方(UI)の変化です。
Workflowy上ではそれぞれの項目は区切り線なしで並べられています。一方で、Tekenoteでは「カード」という形で区切り線が入っています。この「区切り線」が、心理的な区切り・節目の感覚を生み、それが「一区切りついた」という終了感とつながっているのでしょう。
むしろそうした感覚の違いがあるから、記述される内容にも変化が生じた、と捉えることもできそうです。ここで一旦終わりにする、終わりにできるようにする。そういう感覚の変化が、カードらしい書き方を要請しているのです。
では、どちらの方が着想の管理に向いているのかと言えば、これはなんとも言えません。
Workflowy上では記述は「終わったこと」にはならず、常に流動性の中にあって、行動(処理)を促す駆動力を持ちます。それが単発の記事を書き起こすモチベーションになることは十分考えられます。
一方で、カード型ではそれぞれの着想が「終わって」いく=静止化=固定化することで、それらを組み合わせてより大きな概念に近づいていける力を持ちます。
どちらも「動き」についての力があるのですが、向かう先(あるいは向かい方)が異なると言えるでしょう。
というわけで、後は好みの問題です、といういつもの決着なのですが、それはそれとしてこうした違いはもう少し吟味していきたいところです。
〜〜〜Evernote〜〜〜
Evernoteのフリープランにまた改定が入りました。
◇Update: Evernote Free accounts can connect 1 device, create larger notes, and upload more content
これまでは2台まで同期端末が設定できたのですが、それが1台になりました。つまり、iPhoneでEvernoteを使っていたら、Webブラウザからアクセスしようとするときに、いちいちiPhoneの方をログアウトしなければならない、ということです。これは不便ですね。
とは言え、すでにフリープランのノート上限数は50になっており、普通に使うのは無理でした。フリープランの位置づけは、利用形態の一つではなく、試運期間になっていたのです。
ただし、すでにたくさんのノートを作っていた人は、ビュアーとしてならばフリープランでも問題なく使えていたので、その蛇口も締めてきたということなのでしょう。
とりあえず言えるのは、フツーにEvernoteを使うなら課金するしかない、というところです。
〜〜〜開きっぱなしのプロジェクト〜〜〜
引っ越しの準備をしています。
今回の引っ越しは業者に来てもらって一日で一気に荷物を運ぶ形ではなく、移り住む場所に少しずつ荷物を持っていく、という形で進めています。
物事を少しずつ進めるのは負荷を分散できるので、これ幸いと思っていたのですが、良いことばかりではないと気がつきました。
たとえば、少しずつ進めているので部屋がずっと中途半端に散らかっています。箱詰め作業も、終わっている部分と終わっていない部分があって、それが常時(なにせ生活空間なので)目に入るのです。
気になって仕方がない。
もしこれが仕事のプロジェクトであれば、途中で終わったとしてもパソコンならウィンドウを閉じたり、アナログならファイルを引き出しにしまったりすることで、「一旦おわり」と気持ちを切り替えられます。
しかし、生活空間の中で中途半端なものが散らばっていると、「あれも片づけないと、これも片づけないと」という気分がいっこうに静まりません。頭の中の一部は常にそういうことを考えていて、仕事にも集中できません。
そのことは、一旦外に出てカフェで作業するとすこぶる集中できることからも──比較対象実験としては弱いですが──感じられます。
そう考えると、少しずつ作業を進めるにしても、ある部分については一気に(ある種の祭りとして)進めてしまうのが全体として効率が良い場合があるとは言えそうです。
皆さんはいかがでしょうか。引っ越しのような大きな「プロジェクト」を進めるとき、どのような手順・アプローチを採用されるでしょうか。よろしければ倉下までご意見をお寄せください。
では、メルマガ本編をスタートしましょう。今回はNotionについて、二つのリストについて、読む・書く・考えるの順番についてお送りします。
Notionは何ができるのか?
急激な速度でユーザー数を拡大しているNotion。これまでは私がほとんど触ってこなかったので、メルマガでもあまり触れてきませんでしたが、情報整理ツール全体に目を配るなら、避けて通るわけにはいきません。
今回は、Notionって何ができるのかを考えてみましょう。
■モットーから考える
2024年8月現在、Notionのプロダクト紹介ページには以下の言葉が飾られています。
Write. Plan. Organize.
With a little help from AI.
このツールの志向性を端的に表現している言葉でしょう。
まず「できること」として、「書くこと、計画すること、組織化すること」の三つが挙げられ、その上でそうした動作を「AIの助けを借りて進められる」ことが提示されています。まさにそれこそがNotionでできることです。
EvernoteでもAIを利用する機能は整備されていますし、その他の情報ツールでもAIを利用できる場面はありますが、その中でもNotionは積極的にAI(というか生成AI)をノートツールに組み込んでいます。
今後の情報整理において生成AIの利用は必須の事柄になってくるでしょうから、この点においてはNotionは一歩抜きんでた存在だと言えそうです。
一方で、生成AIに関して言えば、ビジネスの現場でデファクトスタンダードになっているMicrosoft製品に組み込まれるシチュエーションも増えてくるでしょう。同様にGoogle DriveやNotobook LMなど、Google情報圏の中で利用される場面も少なくなさそうです。
これらの強者の中で、NotionのAI活用がどれだけ存在感を示せるかは興味深い点です。
■中心となる要素
が、いったんAIの話は脇においておきましょう。AIの活用という点を除いて、Notionでは何ができるのか。
他のデジタルツールがそうであるように、「基本的になんでもできる」が答えではあります。そもそも、デジタル化することでメディアの垣根なく情報を扱えるのがデジタルツールの利点なのですから、やろうとさえ思うならだいたいのことはできます。
しかし、その視点ではツールごとの特徴は浮かび上がってきません。そこで、できるにしても得意なことと不得意なことはあるだろう、という視点でツールを眺めてみると、やはりまっさきに挙がってくるのが「データベース」の作成および利用です。
「データベース」というものを簡易に作成でき、しかもその情報がさまざまに利用できる。この特徴だけは、他のツールが持っていないものです。
■モットーとデータベース
では、そのデータベース機能と、最初に掲げられている「Write. Plan. Organize.」の関係はどうなっているでしょうか。
まず、Writeですが、これはどんな情報ツール(特にデジタルノートツール)でもできることです。この点についてはNotionに特筆すべきものはありませんし、データベースの利用が大きく関わってくることもありません。
次に、Planはどうでしょうか。これはデータベースが大いに役立ちます。ただし、ここでの「Plan」は、いわゆる計画であり、ある硬さを持ったものです。言い換えれば、形式性が強いもの。
目標に向けた作業を決定し、それに締め切りを割り当て、誰かにアサインする。それぞれに作業にはプロパティが割り当てられていて、そのプロパティで作業を並び替えたり、抽出したりできる。
さらに、そうした情報群を多様な見せ方で提示したり、他の情報群から参照できたりもする。
そうした操作が可能なのは、Notionにおいて一つひとつの情報がデータとして扱われているからで、まさにデータベースの面目躍如です。
Notionが企業で利用されているのも頷けますし、それと同じ手つきで「自己管理」をする場合なら同じように活躍してくれるでしょう。
■データベースによる「整理」
最後のOrganizeに関しても、データベースは活躍します。
以前ご紹介した以下のページが好例でしょうか。
◇Mille Liste
断片的な情報が、メタ情報(プロパティ)を添えて一つの表組みにおいてまとめられています。この表組みの背後にあるのがデータベースで、設定を変えれば、表組み以外にも、リストやタイムライン、カレンダー、ギャラリーといった表示も可能です。
バラバラに存在している情報を、統一的な形式で表示させたい──このタイプのOrganizeでは、データベースは欠かせないツールとなります。
ここで思い出したいのが梅棹のカード法です。彼は、まったく同じ形式のカードを使って、自らの着想を書き留めていきました。それは規格化でありフォーマッティングです。
情報を保存する媒体のサイズを合わせることで収納をやりやすくし、また、ぱらぱら見返すことをスムーズにするという効果をもたらすと共に、文字数を限定することで情報の「書かれ方」も統一するという効果を生み出しています。
バラバラのサイズの紙に、バラバラな書かれ方をした情報群があったならば、それらをhandlingしていくのはすごく難しくなるでしょう。規格化が操作を補助してくれるわけです。
まったく同じ視点をこのデータベースに向けることができます。統一的な規格による情報の統治。それをNotionは可能にしてくれます。
■もう一つのNotion性
以上のようなそれぞれの要素の特徴があることに加え、Notionではそれらの情報を一つのツールのもとで扱えるという──ときに抗しがたい──魅力を持ちます。
単純に考えれば、Planならもっと高機能なタスク管理ツールがあります。Organizeでも、ExcelやGoogleスプレッドシートの方が使いやすいかもしれません。個別に見れば、より特化した専門ツールがある。しかし、Notionでは以上のような情報群を単一のツールのもとで扱えてしまう。
つまり、Writeで書いたもの、Planで立てた計画、Organizeで集めた情報が一つの場所に集まる。これは統一化欲求を持つ人からすればあまりにも楽園的な状況です。
単に情報がバラバラにならないで済むだけではありません。それぞれの情報を相互に参照できるのです。プロジェクトの計画と、その計画に必要な情報をセットで扱う。ドキュメントと、その執筆計画をセットで扱える。
蓄えた情報の「使い先」がたくさん考えられるとき、情報を有用に活用できそう感覚は高まるでしょう。そういう気持ちの良さが、Notionにはあります。
■かつての憧れ、現在の指針
「じゃあ、なぜお前はそんなにNotionを使っていないのか?」
と疑問を持たれたかもしれません。二つ理由があります。
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