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第五回:情報整理の具体的な中身/その1

前回まででややこしいことは一通り検討できた。改めて「情報整理」についての図面を引いてみよう。

まず、情報整理とは「情報を適切に配置し、必要に応じて取り出せるようにする」ことを目的とする。当然、その「必要」において、「適切な配置」は変わってくる。その「必要」ごとに分類を作るならば以下のようになるだろう。

・スケジュール(排他性)
・Todo(優先順位)
・資料(適宜参照)
・アイデア(?)

これらは手帳術・ノート術で管理される対象と重なるし、同種の目的で使われるデジタルツールの用途とも同じである。よほど突飛な生活を送っていない限りは、私たちが必要とする情報はおおまかにこのカテゴリーに当てはまると考えてよいだろう。

以降において、それぞれの分類について詳しくみていくが、まずこうした「情報管理」を行うために、扱う対象を「情報化」しなければならないことは前回も確認した。書き留めること、記録すること。それが情報化のスタート地点である。

また、記録することは記憶をサポートする役割を持つので、上記すべては「備忘」という共通点を持つ。その上で、個々の役割が分類ごとに異なってくるのである。

スケジュール(排他性)

まずスケジュールだ。日付・時刻が絡む「やること」がスケジュールであり、たいていは他者との約束が関係してくる。

ではスケジュールにおいての「適切な配置」とは何だろうか。それは私たちの体が一つしかないことと関係している。

ある時刻にある場所にいたら、同じ時刻に別の場所にいることはできない。

あたり前のような話だが、これがスケジュールを考える上での制約であり、前提でもある。

簡単に言えば、「ダブルブッキングを避ける」のがスケジュール管理の要点なのだ。別の言い方をすれば、予定の排他性を維持することがスケジュール管理では重要になる。

よってスケジュールは、その情報が日付ごとにまとまっている必要がある。でないと、新しく予定を入れようとしたときに、その場所に他の予定が入っているかどうかが判断できないからだ。

また、その「ダブルブッキング」は完全に同一時刻だけを意味するわけではない。12時に東京にいて、同じ日の12時30分に札幌にいることは──現時点の科学技術の水準では──不可能だからだ。こうした判断もまた、単独で「スケジュール」を見ているだけではわからない。ある連続性に沿って情報が並べられている必要がある。それがスケジュール管理における情報整理である。

ちなみに、ものすごく疲れる作業がある日の次に、もっと疲れる作業を入れるのも破綻を呼びやすい。つまり、一日の中の連続性だけでなく、複数の日付にわたった連続性での確認ができると好ましいわけだ。一般的な表組みのカレンダーは、まさにその用途に適しているし、それを拡張させた「「超」整理手帳」の"スケジュール・シート"はさらに一覧性が増している。コミットする期間が長く、さらに多数の方面とコミットする必要がある仕事の場合は、そうした一覧性が役立つだろう。

対して、デジタルカレンダーツールは、紙面サイズがディスプレイサイズに限定されてしまうかわりに、さまざまな粒度で表示を切り替えることができる。月間と週間と日間を、ボタン一つで切り替えることもできるし「2週間」のようなカスタマイズ表示をさせることもできる。複数のカレンダーを重ねて表示させる機能も多くのカレンダーツールには実装されている。

何を使うにせよ、スケジュール管理において必要なのは、

・予定を忘れないこと(備忘)
・(広い意味で)ダブルブッキングを避けること

の二点である。さらに、その予定を予定時刻よりも前に知らせてくれるリマイダー機能などがあれば完璧であろう。そうしたリマインダーもまた、忘れっぽい私たちにとっては情報を適切に配置」することの一部である。

Todo(優先順位)

続いてTodoである。これは広い意味での「やること」の管理だと思っていい。「やること」よりも粒度が小さく、行動に結びつくものは「タスク」と呼ばれるが、それよりも上位の──GTDなどでは"プロジェクト"と呼ばれる──階層も対象である。

このToDo管理の肝は「自分は何をするのか」の決定である。つまりは、優先順位づけだ。

世の中を見渡せば、「やること」はいくらでも見つかる。家の冷蔵庫の裏のホコリとりから、町内会への参加、趣味のギターの練習、来年の仕事に向けた勉強など、ざっと考えただけでも「やること」のカテゴリーに入れたくなるものはわんさか掘り出せる。

とは言え、それらをすべて実行する時間は、有限な存在である私たちにはない。それに合わせて「やること」を限っていく必要がある。

また、私たちの意識は、多くの場合緊急的なものに反応しがちである。すると、何も「管理」をしなければ、目についた緊急的なものばかりに取り組んでしまう。そのバランスを整えるのが、Todo管理の肝である。

はっきりいって、これは単純な問題ではない。あらゆる「やること」には、何かしらの"文脈"が付随しており、それらが綱引きを起こすからだ。それほど親しくはない友人の結婚式に出ることと、今年入ったばかりの新人の教育のために休日出勤すること。いったいどちらが自分の「やること」になるだろうか。真剣に答えようとしたら、自分の価値観と向き合わなければならない。

しかし、幸いなことに仕事の現場では、だいたい「優先順位」が決まっている。明文的なものか、暗黙的なものかはさておくとして、「まずはこれをやろう」というある種の文化がある。上司からの仕事と、取引先からの依頼なら、後者を優先せよ、といったことだ。あるいは、企業内でバリバリの年功序列ができ上がっているならば、その通りに優先順位を決定する、という単純化も可能である。

が、残念なから最近はそこまで明確な序列は生まれ難くなっている。もっとフラットになってきているのだ。そうすると、頼れる優先順位がなくて決定が非常に困難になる。あるいは、私のようにフリーで仕事をしている人間は、そのような外部の優先順位はそもそもからして存在しないので、これまた難しい決定を迫られることになる。

そうした場合、対策は二つに分かれる。一つは、「何も考えない」という作戦だ。ともかく目の前のことをやると決める。つまり、そういう"優先順位"をつけるわけだ。優先順位は、意思決定のガイドラインであり、それは「何をするのかを決める」ことさえできればいいのだから、「何も考えない。目に付いたことをやる」というのでも立派な指針である。

あるいは、そのような指針があまりに単純に思える場合は、何かしらの優先順位(意思決定のガイドライン)を自分で設け、それに従って、自分が何をするのかを決めていくことになる。ただ、その優先順位は自分が決めたものでしかなく、ひとりの人間の決定が完全無欠であることはまず考えられないので、ときおり優先順位を再検討した方が良いとは言えるだろう。

ちなみに、ここまで回りくどく書いているのは、「会社における"やること"の決め方」は一般的なものではなく、むしろそれはある特殊な環境内でしか機能しない特殊なものである、ということを確認するためである。もっと違う決め方もあるし、なんならそれを自分で作って良いのだ、というのは理解は持っておきたい。

ともかく、Todo管理において重要なのは、

・「やること」を忘れないこと(備忘)
・次に自分が何をするのかが明確になっていること(優先順位)

の二点である。

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少し長くなったので、続きは次回としよう。

(つづく)


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