で、レビューって?
ほとんどの人にとってGTDの成否のカギを握るのが、この「更新する」のステップだ。週に一度は、現在抱えているプロジェクトや「気になること」のすべてを見直し、更新していく必要がある。
『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』の「更新する」の項目である。以前はレビューと呼ばれていたターム(term)だ。
なぜそのような更新が必要なのか?
やると決めたあらゆる行動の選択肢を定期的に見直すことによって、いざ行動するときに自信をもって正しい選択ができるようになるからだ。
それが〈レビュー〉の意義であり、目的である。
では、「定期的」とは、どのくらいの頻度だろうか。それは対象によって異なる。
会議、電話連絡、その日が期限の報告書の作成など、カレンダーに記入されている行動が完了したら、ほかにやらねばならないことは何かを確認する習慣をつけておくとよい。たいていの場合、「次にとるべき行動リスト」を次に見ることになる。このリストには、1日の中で時間がとれたらすべきことが書かれている。随時確認して更新していこう。
(強調引用者)
ここで随時確認して更新していこう、と述べられている対象は、おそらく〈カレンダー〉と〈次にとるべき行動リスト〉なのだろう。この「随時」がどういうニュアンスを帯びているのかは判然としないが、おりおりというか、何か機会を設けてというのではなくalwaysで、という風に解釈できる。
で、その他の〈プロジェクトリスト〉、〈連絡待ちリスト〉、〈いつかやる/多分やるリスト〉などは、「忘れない程度」の頻度で確認して、更新していけばよいとある。
この「忘れない程度」というのは、何を指しているのだろうか。各リストの中身だろうか。それとも、レビューすることそのもの、ということだろうか。どちらにも取れるのでこの辺はややこしい。ただ、対比的に書かれているので、それがalwaysでないことはわかる。
週次レビュー
さて、〈週次レビュー〉である。
そのときどき自分が何をすべきかについて自信をもって判断していくには、すこし上のレベルの視点から定期的に仕切り直す必要がある。
それを担当するのが週次レビューだ。次の四つのことを行うとある。
・やらなければいけないことを把握し、どうすべきかを見極める
・システム全体を見渡す
・リストを更新する
・すべてのものについて、済んだものは処分し、情報を更新する
では、その週次レビューとは何か。
週次レビューとは、簡単に言ってしまえば頭を再び空っぽにし、先の数週間を見据えた体勢をとるための作業だ。週次レビューでは、ワークフロー管理の一連のステップを再度行うことになる。すなわち、現在自分が関わっているすべてのことを把握し、見極めて整理し、更新していくわけだ。
ここで示されているのは、簡単に言えば「最初に戻る」である。もう一度仕切り直すことで最初に作ったリスト群を最新の状態にリフレッシュできる。あるいはアップデートと呼んでもいいだろう。この循環性があるからこそ、GTDはシステムたり得る。
では、そこで行われるものは何か?
・明確化する
・最新の状態にする
一つめはいわゆる〈inbox〉の整理である。まず、「書類やメモ、名刺、領収書など、デスクの引き出しや服の中などに潜り込んでいるすべてのもの」を集めることになる。さらに、「会議でとったメモ、ノートやパソコンに書き出したこと」もチェックし、それらを分類して、何かしらのリストに(ゴミ箱を含む)入れ込んでいく。もちろん、その時点ではっきりとした形を取っていない頭の中にある気になることもあるだろう。それも「整理をして適切なカテゴリーに取り込んでいく」。これが明確化のプロセスだ。
また、すでに作ってある「次に取るべき行動リスト」、カレンダーのチェック(過去、未来)、「連絡待ちリスト」、「プロジェクトリスト」、チェックリストを確認して、不要なものを削除したり、新しい項目を付けくわえたり、何かしら有用な情報が何かを探したりもする。これが最新の状態に持っていく作業だ。
どうだろうか。なかなか大変ではないだろうか。作成したリストの数が多ければ多いほど、その中身が増えれば増えるほど、レビューの実施にも時間がかかることになる。
「次に取るべき行動リスト」とカレンダーに関しては、随時更新することが推奨されているので、週次レビューでのアップデート作業は小さいもので済みそうだが、その他の作業は若干時間が読み切れない。そして、時間が読み切れない作業は、人は恐怖心や抵抗感を覚えるものである。それがネックと言えばネックだろう。
ただし、そのような習慣が身につくまでは、必要なことをきっちりやらないといけない。週に一度、うまく自分を誘導して、少なくとも数時間は忙しい日常から離れるようにしよう。
まったくもって頷ける提案だが、問題はその「うまく自分を誘導する」方法がここでは提示されていない点である。
そうなのだ。GTDの週次レビューの初期というのは、「うまく自分を誘導」しないと実施できないのである。なぜなら、それは「私のやりたいこと」ではないからだ。少し高い高度から自分を眺めても、その中に「GTDの週次レビューを実施する」ということが含まれることはないだろう。特に、その効果が実感できていないときならば、なおさらである。直感的な選択で、「GTDの週次レビュー」が選ばれることはない。そこには、何かしら外部的な強制が必要なのである。
ただし、そうした行為がはじめから好き(あるいは趣味)な人や、長く週次レビューを続けることで、その効果を体感している人は話は別である。そういう人たちは直感で週次レビューを行うことが選択できる。このギャップは見逃してはいけないだろう。
でもって、この辺が週次レビューで挫折する人が結構な数に上る理由でもあると思う。
さいごに
さて、最初に戻ろう。
やると決めたあらゆる行動の選択肢を定期的に見直すことによって、いざ行動するときに自信をもって正しい選択ができるようになるからだ。
このことを逆に見れば、「いざ行動するときに自信をもって正しい選択」ができるなら、その実装は別に何だっていい、という話になる。
これがポイントなのだ。そうした選択ができていない状態というのは、「今やるべきなのは、本当にこれなのだろうか……」と悩んでしまっている状態だろう。自分がそういう状態に陥っているならば、どうすればそれが打破できるかを考えてみる。そのための大きいヒントは間違いなくGTDにある。今回紹介したレビューの中身もきっと役立つはずだ。
しかし、GTDだけが唯一の解法というわけではない。GTDに備わっている情報整理システムはたしかに有効だが、選択肢は他にもある。だからこそ、GTD以外のタスク管理システムでもきちんと日常を回せている人が存在する。
だから、完璧にレビューができなくても別に嘆かなくてもいいし、自己嫌悪に陥る必要はまったくない。そもそも、それはいきなりは難しい行動なのである。当人の性質との相性みたいなものもある。
しかし、それはそれとして、「週に一度、少なくとも数時間は忙しい日常から離れるようにしよう」というアドバイスは有効である。数時間は難しくても、1時間、ないしは30分くらいでも、自分がいろいろ考えていることについて考えてみる時間は精神のメンテナンスとして有効である。そういうのはimportしていきたいところだ。
※この記事はR-styleに掲載した記事のクロスポストです。
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