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自分の方法を発見すること

世の中には、「タスク管理」という言葉なんてまったく知らない、という人がいます。あらためて宣言するまでもない、自明のことでしょう。

でもってそれと同じくらいに、行動の前にリストを作る、ということをしない人がいます。とりあえず行動する。その場、その場で、対処する。そういうやり方です。

で、そういうやり方をしている人に、「タスク管理」という概念は結構効くわけですが、かといって、じゃあ『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』を隅から隅まで目を通し、内容をきっちり理解してね、というのはさすがにハードルが高いでしょう。

なにせ、結構分厚いのです。

間違いなくGTDは有益なシステムです。そこに含まれているメソッドは、自身の行動管理において有効に機能する成分をたくさん含んでいます。しかし、GTDを完璧に理解しなければ、「タスク管理」の果実にはありつけない、なんてことになってしまったら、ますますタスク管理を敬遠する人が増えるのではないでしょうか。

で、上記のGTD本もそうなのですが、既存の本が新版としてリニューアルされると、なぜか分厚くかつ洗練された感じなってしまうのです。もちろん、タスク管理に通じている人であれば、そうした知見の充実は好ましいでしょう。しかし、それを知らない人にとっては、よりいっそう近づきがたい対象に思えてきます。これはこれで由々しき事態ではあるでしょう。

あと、洗練されるがゆえに、「ちょっとだけやる」ということも難しくなります。システムとしての完成度が高まれば高まるほど、摘み食いは難しくなるのです。

だからこそ、大全ものって結構いいのです。ちょっとだけ試す、ということができるので。『アイデア大全』も『ライフハック大全』もそのような親しみやすさがあります。何か一つくらいなら、やってみようかと思えるのです。

ちょっとからの挫折と次なる一歩としての発見

もちろん、そうしてタスク管理をはじめて、何かしらのリストを運用し始めれば、間違いなく「不満」は出てくるでしょう。不具合、不都合という言い方もできます。たとえば、Todoリストを作ると、最初のころはうまくいくのですが、一ヶ月もすればリストが長大になります。よほど抱えている欲望が小さい人でない限りは、そうなります。しかも現代は「やること過剰社会」なのです。

こうなると、高確率でそのリストを見るのが嫌になり、最後には使わなくなります。これはもう、約束された失敗です。

で、そういう失敗を経た後で、「クローズリスト」という概念を知っていれば、「そうか、リストの項目を増やさないようにすればいいんだ」と思いつくかもしれませんし、「しばらくやらないことは、いつかやることリストに保存すればいいんだ」と気がつくかもしれません。どんな方法に至るかはわかりませんが、そうして自分で思いつくことが大切だと私は思います。自分で、「発見」するのです。

この世界で提唱されている数々のシステムは、そうした発見が積み重ねられた結果として生まれています。その中には汎用性が高いものもあるでしょうし、そうでないものもあるでしょう。それがシステムの優劣を決めたりはしませんが、「他の人が使いやすい・使いにくい」というのはあろうかと思います。で、もし、提唱されている方法と、たまたま自分が合うならばそれでいいのですが、そうでなければ大変です。自分で「発見」していくしかないのですから。

逆に言うと、自分で「発見」していけるならば、提示されている数々のシステムは、参考事例の一つになり、決して「修行して身につける」ようなものではなくなります。でもって、このパラダイム・シフトが大切なのではないかと思うのです。

一人ひとりの人生を生きるなら、一人ひとりの方法が必要です。「あなたらしい人生を送るために、他の人と同じ方法をやりましょう」って何か変ですよね。

でもって、誰かのタスク管理がうまくいっているかどうかは、結局その人にしかわかりません。ある種のメタ認知が機能していないと、判断しようもないわけです。

だからこその「発見」です。発見する目を持つのです。

あくまで参考に

修行から、発見へのシフト。

そのシフトを促すために、『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』では「提示されている方法通りにやれば、うまくいく」という考え方を極力刺激しないように努めました。そういう刺激の仕方は、結局三日無双を増やすだけだと考えたからです。

あるいは、一番最初の出会いで「この方法をやればうまくいく」という考えが刷り込まれてしまうと、次から「うまくいく方法はどこにあるんだ?」と発見ではなく、検索に意識が向いてしまいます。それも避けたかったのです。

もちろん詳しい方法を知るための参考文献は示してあります。でも、それが参考文献として示されている限りにおいて、それは参考事例の一つとして認識されるでしょう。つまり、絶対的な方法ではない、ということです。

本書の見えないテーマは、「自分の方法を発見すること」にあります。

でもってこれは、タスク管理以外においても大切なことではないかと思う今日この頃です。

※この記事はR-styleに掲載した記事のクロスポストです。

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