第一回:情報整理とはなんぞや
「情報整理」という言葉は、近年よく聞くようになった。Amazonで検索すると、類するタイトルの本はいくらでも見つかる。どうやら情報整理に関するノウハウはもりだくさんあるらしい。
一方で、「じゃあ、そもそも情報整理って何?」と尋ねられると途端に答えに窮することになる。「えっと、情報を、整理すること?」と安直な答えを疑問系で返すしかなくなる。
漠然となら「情報整理」とは理解できるが、具体的にはそれが何を意味するのかがわからない。これは「情報整理」に関わらず、日本で流通している多くの名詞について言えることだが、ここでそこまで話を広げるつもりはない。あくまで目標は「情報整理」である。
一体全体、この言葉は何を意味しているのだろうか。そこで行われる実践とは何であり、どのような目的を有しているのだろうか。この連載では、まずそういうことを考えてみたい。
手帳とPDAのコア機能
さて、ある程度の年代で「情報整理」と聞いて真っ先に思い浮かべるのが手帳ではないだろうか。あるいは懐かしきPDAということもある。もっと近年になると、それこそスマートフォンだとかデジタルノートだとかが挙がってくるだろうが、そうしたツールの系譜を見たときに、手帳やPDAを検討するのはそう悪い筋ではないだろう。それに、この辺の界隈に興味を持った人の多くが、まずそうした手帳術やPDAから入門しているのではないかとも感じる。とっかかりとしては、そう悪くないスタート地点だろう。
まず手帳であるが、主要な機能は以下のようなものだろう。
・スケジュール管理
・ToDo
・備忘録・住所録
・メモ
そしてPDAの主要な機能もほぼ同じである。PDAはそれに加えて電子的な情報、すなわち辞書・電卓・カメラ・ゲーム・などの情報も扱えるが、一旦これらは脇に置いておけるだろう。なにしろそうしたツールがない時代でも、私たちは手帳によって「情報整理」を行ってきたのだから。
でもって上記のうち、メモを除く三つの機能は「Personal Information Management - 個人情報管理機能」と呼ばれている。紙の手帳とPDAのコアと呼べる機能をこの三つに定めても、そう飛躍とは言えないだろう。
実際、私たちが、「情報」を扱う上で気にするのもだいたいPIMの三機能であることが多い。逆に言えば、この三つさえ適切に「管理」できていれば、社会人的生活はそつなくこなせるわけだ。非常に重要な要素と言える。
とは言え、この時点ですでに用語の混乱が見られる。つまり「情報整理」と「情報管理」である。この二つは何がどう違うのだろうか。しかし、これは疑似問題かもしれない。つまり「Management」という言葉をどう訳すのかに違いがある、ということだ。Information Management がある文脈では「情報管理」と呼ばれ、別の文脈では「情報整理」と呼ばれる。十分にありえることだろう。
ただし、本連載が「情報整理」ダイアローグであるので、「どちらでもよい」と放置しておくことはできない。ターゲットは「情報整理」にしておく。その整理は、管理と似たことを行うかもしれないが、主たる目的は異なる、というのが本連載の立ち位置である。
では、その主たる目的とは何か。
情報を適切に配置し、必要に応じて取り出せるようにしておくこと。
これが情報整理のスタートとなる定義である。
(つづく)
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