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情報整理ダイアローグ第二十回:原点回帰なテキストファイル

前回は四ツールが一つ、Scrapboxを紹介した。 情報を固定的に書き留めておき、それらを積み上げていくという使い方だ。今回は、最後の一つであるテキストファイルについて紹介しよう。

テキストファイル

テキストファイルは、ツールではない。ファイルの種類である。だいたいのパソコンで扱えるファイル形式であり、「エディタ」的なツールであれば、問題なく読み込める。非常に扱いやすい、汎用性のあるファイル形式だ。

よって、テキストファイルはツール越境的な存在であると言える。固有のツールに束縛されることなく、さまざまなツールを利用可能にするもの。それがテキストファイルだ。

原点回帰

こんな話は、古くからのパソコンユーザーであればごく当然の話だろう。しかし、クラウド化・アプリ化が進んだ現在ではそうはなっていない。「テキストファイル、何ですか、それ?」という若い人もいるだろうし、そもそも「ファイル」という概念が確立されていないこともある。便利なアプリを使っていると、そのようなファイルの実体性について考えなくても済むのである。逆に言えば、ユーザーにとって「ファイル」はブラックボックスになっている。

実際これまで紹介してきた三ツールでは、別段「ファイル」を操作する必要がない。ボタンを押すなりリターンキーを叩くなどすれば、新しい要素が生まれて、そこに情報を書き込むだけですむ。ファイルを作り、名前を付け、保存場所を決める、という操作はなくても済むのである。それがクラウド化・アプリ化進んだ現在の「常識」であろう。

そういう「常識」がある中で、私はテキストファイルに帰ってきた。2010年以降ずっと「テキストファイル撲滅委員会」に属していた私が、である。

テキストファイルは一見すると不便である。エディタで開いても、これまで紹介してきたようなツールの「利便性」は得られない。機能不足だ。その反面、テキストファイルはとても扱いやすい。自分の好きなエディタで開けるし、頑張れば自作のツールやスクリプトで扱うこともできる。「この情報を扱うときは、このツールを扱わなければならない」のような制約がないのである。でもって、それがコンピューティングということではないか、とも感じる。デジタル情報。

その上、最近のモダンなエディタ(コード・エディタ)を使えば、単純なテキストファイルであっても、そうとうに高度なことができる。物書きという仕事では、「そこそこの高度さ」があれば十分事足りるので、仕事の現場ではそれで十分なのである。道具は、多機能であればよいとは限らない。そういうことが言えるだろう。

VS Code

私の場合は、テキストファイルはVisual Studio Code(以下VS Code)で扱っている。文章/原稿を書くときは、ほぼこのエディタを使うことになる。文章が書けて、背景色を変更でき、タブ型で、ワークスペースの切り替えができ、フォルダ単位の検索(grep)ができる。その上Gitとの連携も良好だ(なにせMicrosoft製である)。文句など、どこにもない。

私は、書籍の原稿以外にも、作業記録やTodoなどVS Codeで扱っている。こうした情報は、これまで紹介してきたツールでも扱えるのだが、テキストファイルでも問題はない。でもって、テキストファイルの存続はずいぶん長いと考えられるので、「まあ、これでいいか」という感じで付き合っている。

スクリプト

テキストファイルは、スクリプト(≒プログラミング言語)での処理もたやすい。

たとえば、複数の原稿をまとめてメルマガの完成稿にするとか、それをまぐまぐバージョンとnoteバージョンの二通りつくるとか、そういう操作がコマンド一つで実現できる。こういう「ハック」は、テキストファイルならではであろう。他のツールだと──不可能ではないが──ちょっと面倒なことは多い。

こういうハック(あるいは工夫)が活きやすいのが、テキストファイルである。ツール特有のバイナリファイルだとなかなかこうはいかない。それだけでも、テキストファイルを使う意義は大きい。

しかしながら、そうした操作は、「静的な情報」(Evernoteが扱う)にはほとんど必要ないし、「動的な情報」(WorkFlowy)にも「小さな固まり」(Scrapbox)も同様である。これらが活きるのは、あるプロダクト(あるいはドキュメント)を生成しようという試みに置いてである。

だからこそ原稿はテキストファイルで書くのだ。

さいごに

シンプルなテキストファイルは、モダンなツールからみると芋っぽい(これも死後だろう)かもしれないが、その実、コンピューターの力を活用する上で、一番やりやすいファイル形式である。特に、たいしてプログラミング能力がない個人が、こぢんまりとしたコードでいろいろやる上で、テキストファイルは欠かせないと言ってもいい。

もちろん、それらのファイルはDropboxフォルダに置き、クラウドで保存はされている。非常に原始的な建て付けではあるが、存外にこれが利用しやすい形の筆頭なのかもしれない。

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