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EvernoteとWorkFlowy / デジタルノートエクスプレスvol.1

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2021/05/03 第551号

○「はじめに」

ポッドキャスト配信されております。

◇六十八回:Tak.さんとレベルアップと本のタイトルづけについて by うちあわせCast | A podcast on Anchor

◇BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 - ブックカタリスト

うちあわせCastでは、わりと新しめの話題が出たように思います。「上位にも、下位にも移動できる」という視点は、今後掘り下げる価値がありそうです。

あと、ブックカタリストで紹介された『Learn Better』は、たまたまKindleのセール対象だったので、そのままの勢いで買ってしまいました。またじわじわ読み進めようと思います。

〜〜〜本の旅〜〜〜

「本の旅」というハッシュタグを使って、Twitterで毎日一冊本を投稿することを始めました。

◇#本の旅 - Twitter検索 / Twitter

https://twitter.com/hashtag/%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%97%85?src=hashtag_click&f=live

緊急事態宣言で外に出られないので、家で本を読むための情報提供を行うという「体」(てい)ですが、単に本の話題を広げたいだけなのかもしれません。

とりあえず、普段は新しく発売された本の情報ばかりになってしまうので、できるだけそのバランスを変えられるように古い本に言及しようと考えております。

〜〜〜3000日目〜〜〜

「パズル&ドラゴン」、というゲームを始めてから3000日が経ちました。といっても、自分で数えていたわけではなく、ゲーム内でカウントしてくれる上にちゃんと通知してくれるので見逃すことはありません。

それにしても、3000日ってすごい日数です。一日10個英単語を覚えていったとしたら、3万個も覚えられることになります(よくわからない比較)。

ただ、6000日後も自分が同じようにこのゲームをしているかというと、最近は少々怪しくなってきています。ゲームバランスが変わりつつあるな、という感触があるのです。あまりにゲームバランスが変わってしまうと、「そのゲームをやっている」という体験が変質してしまうので、そのときは引退することになるでしょう。

そのあたりの塩梅が、読書という趣味との違いかもしれません。

〜〜〜新しい領域へ〜〜〜

ここ一年で、自分の情報環境がずいぶんと変わりました。インプットのスタイルも変わりましたし、情報を保存しておき、それを扱うためのワークフローも大きく動きました。それに連動して、自分が書くものの傾向や、書き方も変わってきているように感じます。大きな変化です。

自分の脳自体が変わったわけではないので、「考え方」の軸みたいなものは動いていないのですが、その「考え方」を発揮する土俵が著しく変化したような、そんな感触があります。

なんであれ、40歳という節目を越えたら、そういう変化を乗り越えていく必要があるのでしょう。

〜〜〜Evernoteのファーストインプレッション〜〜〜

今回のメルマガでは、EvernoteとWorkFlowyについて書いており、その際にかつての自分がどう使っていたか(どう考えていたのか)を振り返っていたのですが、Evernoteをインストールして、最初に触ったときは「さて、これで何をすればいいんだろう」と戸惑っていたことを思い出しました。

たぶん、現在でもNotionなどで初めて情報ツールを使いはじめた人は似たような感覚を覚えるのでしょう。そういう戸惑いの気持ちを忘れてはいけないなと、思います。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけですので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. 「このツールで、何をしたらいいのか?」と戸惑った経験はありますか。そのときどのように対処しましたか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。2021年の5月は「デジタルノートエクスプエス」と銘打って、最近のデジタル情報ツールについていろいろ書いていきます。

まず本号では、「EvernoteとWorkFlowy」について書いてみます。

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○「EvernoteとWorkFlowy デジタルノートエクスプレスvol.1」

まずは、Evernoteの話をしましょう。僕たちの知的生産が、あるいはライフハックが始まったこのツールは、話題の出発点としてこれ以上ない適役です。

■Evernoteの新しさ

βが提供された2008年から少しずつ話題は広がっていたEvernoteは、2010年に日本語版がリリースされ、日本法人も設立された勢いもあって、怒濤のごとくその知名度を獲得していきました。

その人気の秘訣はなんだったのでしょうか。

一つには、その当時テック系のオピニオンリーダー的存在であったいわゆる「ライフハッカー」に熱狂的な支持を得たことがあるでしょう。そうしたライフハッカーの多くは個人ブロガーであり、彼ら・彼女らが(大半は男性でしたが)、自身のブログで「Evernoteってすごいんだぜ」と話題を提供したことは、大ヒットの要因の一つに数えられるでしょう。

しかし、彼らは(つまりライフハッカーは)、自分が気に入ったツールであれば、だいたい同じようなことをしているにも関わらず、他のツールで同種の現象が再現されているかというと、そういうわけではありません。つまり、ライフハッカーたちに人気があっただけ、というのでは弱いでしょう。
*とは言え、インターネットにおける個人ユーザーの熱狂が話題の拡散を助けた、という意味ではアンバサダーマーケティングやインフルエンサーの分析においてEvernoteは欠かせない要素になりそうです。

■EvernoteとGTD

もう一つ注目したいのは、ほとんど同時期に注目が集まったGTDという手法です。この手法もライフハッカーたちに称賛され、大きなブームになりました。

私が見る限り、この二つのブームの重なりはたまたまではありません。EvernoteというツールとGTDという手法には、そこに宿る思想に共通性があり、しかもそれがライフハッカーの心情に非常に親和性があるのです。

この共通点については、本稿の論旨からは外れるので、また次回(かそれ以降)に改めて検討するとして、もう一つ、この二つの道具(ツールとノウハウ)には共通点があります。

それが、「媒体を選ばない」ことです。

GTDは、どんなツールを使っても構わないと主張します。紙でもいいし、デジタルでもいい。自分の使いたいようにすればいい、というのがデビッド・アレン(GTDの提唱者)の主張です。

そしてEvernoteもまた、どんな端末でも使えますと主張します。Windowsでもいいし、Macでもいい。自分が使いたい端末を使えばいい、というのがEvernote社の主張です。この端末越境性こそが、Evernoteの飛躍を助けたのです。
*もちろん、ツールを選ばないGTDはEvernoteを使うこともでき、実際EvernoteでGTDを実践するという話もよく耳にしました。それについてもまた回を改めて。

■分断されていた話題

2008年には、私はSonyから発売されていたVAIOを使っていました。デスクトップもVAIO、ノートパソコンもVAIOです。当然OSもWindowsになります。それで問題があるわけではないのですが、いわゆるライフハッカーな人たちは、たいていMacを使っているのでした。彼らが面白そうなツールを使うたびに、「あぁ、Macのソフトか……」とほぞを噛んでいたわけです。

Evernoteは、その分断を越えてきました。ライフハッカーたちが楽しそうに話すツールに、自分たちも混ざれるようになったのです。これは個人的にも大きな変化ですし、情報環境的にも劇的な変化です。

それまでは一部のマニアックな人たちだけがノウハウの話をしていたのに、マニアックでない人たちもそこに混ざれるようになったのです。
*とは言え、そうして新規参入した人たちもアーリーアダプターであるわけで、すそ野が広がったというのが近しいでしょう。

それまでは、ライフハッカーがどれだけ熱心に説いても、GTDのようなツールを選ばないノウハウならばともかく、UlyssesやOmniシリーズのような動作するOSがMacに限定されているようなものは、実践者が極端に増えることはなかったのです。OSを越えて、同じツールが使えるEvernoteは、その垣根を壊しました。これが、一つ目のジャンプです。
*その当時は今からは想像できないくらいMacユーザーは少なかったのです。

■誰でもに開かれたツール

もちろん、その当時でもJavaなどで書かれた、どのOSでも使えるツールはありましたし、フリーソフトではそういったものは珍しくありませんでした。しかし、あくまでフリーソフトであり、商業的なソフトほどの強みを持っておらず、ライフハッカーたちがこぞって紹介することもありませんでした。その点で、話題の爆発力の点で弱さはあります。

しかし、Evernoteは商業ベースのソフトでありながら、フリーミアムのモデルを採用していて、使おうと思えば誰でも今日から使い始められたのです。つまり、OSを気にすることなく、値段も気にすることなく、Evernote生活を開始できました。ライフハッカーたちの話題の拡散力とその使用の敷き居の低さが重なれば、爆発的な使用の拡大は容易に予想できます。

Evernoteはツールであり、もっと言えばパーソナルな情報管理ツールであり、使う人それぞれによって使い方が変わってきます。爆発的に使う人が増え、そうした人たちの情報発信が増え、さらにより多くの人に話題が広がっていく。そういう環境が当時は存在したのでしょう。

■Evernoteと紙copi

しかし、Evernoteの独自性はどこにあったのでしょうか。たとえば、Windowsでは「紙copi」というツールがあり、メモやWebクリップを手軽に取り込む機能を備えていました。つまり、Evernoteのような機能を持ったツールはすでにあったわけです。
*ちなみに、「紙copi」の開発者洛西一周さんは、Scrapboxの開発元Nota Inc.のCEOです。

名前がそれほどかっこよくないことを除けば(すいません)、「紙copi」の機能はEvernoteに劣っているとは言えません。Webページを保存し、自動的にタイトルをつけ、保存したページを自分で編集でき、フォルダ(ノートブック)で整理のための階層構造を作ることができます。2008年のEvernoteであれば、ほとんど同じだと言えるでしょう。

しかし、「紙copi」はWindows用のソフトでした。Macで使うこともできず、それ以上にWebブラウザで使うこともできません。この点が、Evernoteの独自性なのです。

■クラウドツール

Evernoteは、OSを越えてソフトを使うことができます。MacでもWindowsでも問題ありません。当然スマートフォンも対象に入っています(その当時はたしかBlackBerryくらいしかありませんでしたが)。

よって、デスクトップの情報環境と同じものがノートブックでも使えたり、職場のパソコンの情報環境と同じものが自宅のパソコンでも使えたりしたのです。今ではまったくあたり前になっている、クラウドツールの環境です。

異なるOSでも使用できたことで、パソコンを使っているあらゆるユーザーに対して話題がリーチできるようになったわけですが、この「クラウド化」はそれ以上に大きな意味を持ちます。ある種の考え方を変更させた、つまりパラダイムシフトを引き起こしたのです。

■別の端末の情報を利用すること

パソコンに慣れている人ならば、ある端末から別の端末にアクセスしてそこから情報を引きだすことは難しくありません。

たとえば、どこかのレンタルサーバーを利用しているならば、Macのターミナルからsshでそのサーバーにログインすることはいくつかのコマンドを打ち込むだけで可能です。で、ログインすると、自分のパソコンを操作しているのと同じ感覚で、lsとかcdとかmkdirとかができるのです。
*わからない方は華麗にスルーしてください。

しかし、ごく普通にパソコンを使っている人間からすると、そのような所作はほとんど魔法のようなものです。自分にそんなことが可能なのだとは想像もしません。
*ちなみに「ごく普通にパソコンを使っている人間」とは、WEPB(Word,Excel,PowerPoint,webBrowser)しか使わない人のことです。

クラウドツールは、そうした人たちにも端末を越えてデータを扱う術(すべ)を手渡したわけですが、そのような利便性以上の変化がここにはあります。データと端末の関係性を大きく揺り動かしたのです。

■単にパイプをつなげるのではなく

Evernoteを使うと、MacでもWindowでも同じ情報が扱えるようになります。あるいは、同じ情報を扱える情報環境が構築できます。複数台のパソコンやスマートフォン・タブレットを加えることもできます。さらに言えば、自分のパソコンでなくても、Webブラウザからログインすれば、やっぱり同じ情報環境が構築できます。

これはもちろん便利なわけですが、便利以上の何かがあります。その「何か」を先回りして書いておくと、情報環境が端末から独立する感覚があるのです。

たとえば、ターミナル経由(あるいはFTPソフトを使っても同じです)で他のパソコンのデータを利用する場合は、Aという端末からBという端末にアクセスし、そこにある情報を端末Aでも利用可能にする、という意味において、それぞれの情報はあくまで端末の中に閉じこめられていると言えます。アクセスは、そこにパイプをつなげるような操作の感覚です。

しかし、Evernote以降から爆発的に普及が始まったクラウドツールは、そうしたものとは別種の感覚を立ち上げるのです。

(下につづく)

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