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アイデアを閉じること / タスクを整理する、心を整理する / システム手帳のペン選び / RSP+xmlを処理する

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2023/01/30 第642号

はじめに

寒さが、ヤバイです。

皆さんの体調はいかがですか。とりあえず、体が冷え込んでいるときは、無理して頑張るの厳禁ですね。

春が来るのを待ちましょう。

〜〜〜時間をおいて読むこと〜〜〜

月に一度くらいのペースで、ブックカタリストで本を紹介しています。

◇ブックカタリスト | goryugo | Substack

紹介する本はなんでもござれではなく、「ブックカタリストっぽい」本を選んでいます。何がその「ブックカタリストっぽさ」なのかは言語化できませんが──その方がいいのです。なぜなら真似できないから──、最近気がついたことがあります。

それは、読了して直後の本ではなく、しばらく「寝かせて」時間が経っている本をとりあげた方が、自分的にも面白い感じになるのです。

なぜかというと、時間が経っていると中身を忘れているので、収録の前にじっくり読み直さざるを得なくなるからです。そうした方が内容についての理解も深まり、自分なりの意見や他の本との関連も見つけやすくなります。

長らくブロガーを続けており、書評記事と言えばなるべくすぐにアップしたほうが価値がある、という感覚が染みついているのですが、ブックカタリストは書評番組ではありません。コンテンツの方向が違えば、価値の作り方も違ってくるわけです。

逆に言えば、一刻も早くこの本の存在を皆に知ってもらいたいときはHonkureで書評記事を書き、じっくりとその本の面白さを掘り下げたいならブックカタリストで取り上げる、というメディアの使い分けがよい感じなのかもしれません。

この辺は、まだまだ考えることがありそうです。

〜〜〜新しいインターフェース〜〜〜

再三話題にあげていますが、ChatGPTが便利です。だんだんプログラミングの知識はググらなくなってきました。

ポイントは、ChatGPTを使う場合はキーワードを投げるだけでなく、自分が欲している情報を文章の形で書かなければならない点にあります。そうして文章を書きはじめた段階で、すでに頭の中では「問題解決」の最初のアクセルが踏まれ始めています。黙って考え込んでいたり、キーワードをもてあそんでいる状態とは頭の動かし方からして違うのです。

加えて言えば、質問の文脈を補強するために「これこれこういう状況でこれをやりたいと思っている」という文章をつけ加えることもあります。これもまた頭の中の整理につながるのです。

乱暴に言えば、軽めのフリーライティングに似た効能があると言えるでしょう。ChatGPTが返す答えも大切ではありますが、それ以上に質問の入力を終えてエンターキーを押している段階で「自分の心は決まっている」感覚があって、そちらの方がより重要ではないかと感じるのです。

こういう「話し相手」を、24時間365日確保できるのはたいへんすごいことですし、何度質問しても、どんなくだらないことを聞いても、絶対に嫌な顔をしない(なにせ顔がありません)のもたいへんありがたいものです。

とは言え、このChatGPTを、「豊かな知性を有している」存在として捉えると過つでしょう。たしかに大量の情報があり、高度な文脈解釈が可能で、文法的に誤りのない文章を返してくれる関数を持ちますが、しかし知性はありません。知性に期待する役割を担わせるのは間違った判断です。

むしろこのChatGPTは、新しいインターフェースと捉える方がしっくりきます。

こちら側に人間があり、向こう側に大量の情報がある。その間(接面)に立つインターフェースです。

これまではGoogleがその役割を担ってくれていましたが、「キーワード検索」だけがインターフェースではないのだぞ、と示してくれたのがChatGPTです。

プログラミングやコンピュータを扱うための知識を「引く」ための辞書として、ChatGPTやその後続AIはその存在感を急激に強めてくるでしょう。

〜〜〜三項演算子の効能〜〜〜

わからない人はぜんぜんわからないと思いますが、「三項演算子」という概念があります。プログラミングで使われるコードの書き方です。

◇条件 (三項) 演算子 - JavaScript | MDN

たとえば、「もしxの値が偶数ならyに"偶数"を入れ、そうでないならyに"奇数"を入れよ」といった構造のコードはよく使われますが、普通に書けば if文が使われることになります。条件分岐というやつです。

たいていそれはブロックによってコードが構造化され、アウトライナーで言えばインデントが深くなる結果をもたらします。

一方、三項演算子を使うと、短い一行でそうしたコードを表現できます。以下のような感じです。

y = "偶数" ? x == "偶数": "奇数"

私がこの三項演算子を学んだとき、「なるほど短く書けるのか」とは思いましたが、こうした書き方を積極的に採用する理由はわかりませんでした。長く書いても別段機能はかわらないから、長く書くことと厭わないのなら、それまでの書き方でいいじゃん、と思っていたのです。

しかし、他の人が書いたコードではよくこの三項演算子が使われているので、徐々に私も自分でコードを書くときに使うようになってきました。

すると気がついたのです。これは単にコードが短く書けるのではなく、脳の情報処理が短くなっているのだ、と。

こればかりは脳内の"出来事"なので完全な説明は不可能ですが、近いものを上げるとしたら、複文・重文で構成されていた文章を、短文の連続で書き換えた変化が近いでしょう。

複文や重文を短文で分解すると、文章がすごく読みやすくなりますが、その読みやすさは含まれている情報が変化したことによってではなく、一回一回の脳の情報処理が短く終了できるようになったことが影響しています。それと同じ変化が感じられたのです。

コードを読んでいるときに if 文に出くわすとそこまでの流れをいったん保留領域におき、その中身を読み進めていって、elseにぶつかるまでそれを続けます。で、この中でさらに if文が使われていると、だいぶハードな情報処理が脳に求められます。

だから三項演算子を使ってコードを書けば「読みやすくなる」というのはわかりやすいでしょう。でも、それだけではないのです。自分がそのアルゴリズムを考えているとき(つまコードを書いているとき)にも、確実に脳の負荷が小さくなっているのです。インデントを一つ浅いレベルで思考できているような感覚があるのです。

そう考えると、記法や概念は表面的な存在に思えますが、「実質」や「実際」に大きく関わっているのでしょう。これはたいへん面白いテーマだと思います。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週の(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりにでも考えてみてください。

Q. 今年の目標って何でしたっけ? どれくらい進みましたか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。今回は、テーマの異なる4つの記事をお送りします。

アイデアを閉じること

前回は、アイデアを育てていく上で、「閉じない」ことの重要性を確認しました。あらかじめ箱を準備し、その中にアイデアを保存していくだけではアイデアはうまく育ってくれません。できるだけ開かれた形で保存していきたいところです。

とは言え、なんでもかんでも開いておけばOKというと、さすがにそれも乱暴でしょう。やはり「閉じる」ことは必要です。というか、「閉じる」からこそ「開いておく」ことが重要なのだと言えるかもしれません。

今回はこの点を考えていきましょう。

■短期間の「アイデアを育てる」

最初に少しだけ話を戻します。前回の検討において、「短期的に一つの企画について考える場合は除いて」という留保が出てきました。この点を掘り下げていきます。

ある企画が明確に存在していて、その中身となるようなものを見つけ出す行為(あるいはそれを補助するノウハウ)は「発想法」と呼ばれます。実際、そこで見つかる着想も「アイデア」と言えるでしょう。

つまり、企画案があり、アイデア出しをして、企画を肉付けしたり整えたりする行為も「アイデアを育てている」とは呼べそうです。

前回は、しかし長期間にわたって行われる「アイデアを育てる」と、短期的に明確な企画案に向けて行われる「アイデアを育てる」とは別種の行為なのだとその差異を確認しました。とは言え、まったく別物というわけではありません。少なくとも、イルカとカジカほど違ってはいません。せいぜいイルカとクジラぐらいの違いがあるだけです。

では何が違うのか。それは「絞り方」です。

■ライトの絞り方

ここに高性能のライトがあると想像してください。そのライトは何も絞り込まなければ電球のように360度を照らします。そこから少しずつ絞り込みを増やしていけば照射する範囲は狭くなり、その代わりに光の強さは上がっていきます。

ライトという主体は同じでも、その絞り方によって、照射という「アウトプット」が変わってくるイメージです。

これと同じことが、頭の使い方においても言えます。短期的に明確な企画案に向けてアイデア出しをしているときは、ライトを絞り込んで使っているようなものです。明るさが強くなり、それまでは見えていなかったものが見つかるようになる。代わりに、それ以外の範囲は見えなくなる。強いていえば、その狭い部分だけを「掘り下げて」いける。

これは「閉じている」とも言えるでしょう。範囲全体を対象にするのではなく、ある限定的な領域だけを探索する行為です。

もし一定期間内で"成果物"を生み出す必要がある場合は──一般的には締切と呼ばれています──、こうした「絞り込み」が必要となります。360度照射の場合は、必要な材料がいつ集まるのかがまったく予測できないからです。

(ちなみに)村上春樹さんは、小説などは依頼原稿を受けず、「機が熟してから」書きはじめるとおっしゃっておられます。つまり、360度照射でじっくり貯まるのを待つパターンです。これは締め切りがない=依頼原稿を受けなくても生計が成り立つからこそ可能な方法である点は留意しておいた方がよいでしょう。(ちなみに、おわり)

つまり、アイデアを広く集め、それを"自由"に育てていきたい場合は、狭くせず360度照射のような姿勢が必要だけれども、何かしらの成果物を生み出そうとするならば、その姿勢を変えてある程度「閉じる」方向に頭を動かしていく必要があると言えます。

これが一つ目の「閉じる」です。頭を向ける方向を、一方向に限定してしまうのです。

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