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メモへの自問 / ログしながら執筆する / 静かなツールを使いたい

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2024/04/08 第704号


はじめに

未来屋書店さんで展開中の「Life with Books」というフェアで拙著『すべてはノートからはじまる』が取り上げてもらえているのは、以前ツイートで見かけて知っていました。

しかし、何を勘違いしたのか、特定の店舗だけで展開されているフェアだと思っており、実際に棚を見にいけないのを残念に思っていました。

だから近所にある未来屋書店さんにいったときに驚きました。その店舗でも「Life with Books」フェアが展開されていて、そこにばっちり拙著が展開されていたのです。ということは、おそらく全国の未来屋書店さんで展開されているのでしょう。

少し前に、『すべてはノートからはじまる』に増刷がかかるよと編集者さんから連絡を頂いたのですが、たぶんこのフェアが関係しているんじゃないかなと勝手に推測しております。

たいへんありがたいことですね。

〜〜〜ノートを取りながら『群論への第一歩』を読む〜〜〜

3月5日から詠みはじめた『群論への第一歩』を先日読み終えました。

Scrapboxに「ノート」を取りながらの読書です。

◇『群論への第一歩 集合、写像から準同型定理まで』 | 倉下忠憲の発想工房

ふつうに本を読むときは、ここまで詳細なノートを取ることはしないのですが、今回は未知の分野の「勉強」として読んだのでがっつりノートを取った次第です。

で、こんな感じで本を読んで勉強するときは、ほんとうにノートを取りながらの方がいいです。ノートを取りながらだと、

・自分がどれだけ解っていないかを確認しながら進めやすい
・自分がどういう風にわかろうとしているのかの記録が残る
・自分にとってどんな進め方が合っているのかが判断しやすい

という効能が生まれます。チョー重要な効能です。「書かれていることが理解できる」ことよりもメタな「勉強」の観点が得られるのです。

もう一つ、本を読んで勉強するときは、ともかく「素直に学ぶ」のが胆です。変に斜に構えずに、まっすぐに著者と共に歩いていく。その上でもノート書きは有用です。離脱したり逸脱したりするのはそれが終わってからでも十分です。

〜〜〜ゆっくり語彙を獲得する〜〜〜

ノートを取りながら本を読んでいくと、時間がかかります。一日でぐわっと進むわけではありません。

で、細かく分割して読むと、当然のように少し前のことを忘れています。「この概念って何だっけな?」ということが頻繁に起こるのです。一方で一気に読むと、それなりに記憶がホットなので「あれって何だっけな?」なことが起こりにくく、詰まらずに読んでいけます。

一見すると、後者の方がハッピーですね。しかし、こと「勉強」となると話が違います。

一気に読むことで、「あれって何だっけな?」が起きずに済んだとしても、結局その本を読み終えて数日経つとキレイさっぱり忘れてしまっています。つまり、「あれって何だっけな?」を先送りしただけなのです。

一方で、ゆっくり読み進めながら「あれって何だっけな?」と遭遇し、そのたびに少し前に戻って意味を確認して、「そうそう、そういう意味だった」という体験を繰り返していくと、じわじわと記録の奥にしみ込んでいきます。

そしてあるとき突然、「わかる」ようになるのです。その用語・概念が使われている文章を読んだときに、何を意味しているのかが記憶の領域を探索しなくても、すぐにそれと「わかる」のです。別の言い方をすれば、ふつーに読めるようになります。

語彙を獲得した瞬間です。

人間の脳は、時間をかけた反復によって学びます。ゆっくり、しかも前のことを忘れつつ(思い出しつつ)読むことは、その反復を一冊の本の中で行う読み方だと言えるでしょう。

さて、皆さんはいかがでしょうか。本の読み方は、いくつのバリエーションがあり、それぞれの内実はどうなっているでしょうか。よろしければ倉下までお聞かせください。

では、メルマガ本編を始めましょう。今回は、メモ論の続き、ロギング執筆術、ツールの静かさについてお送りします。

メモへの自問

前回は、メモの入力環境について検討した。話は比較的シンプルだったように思う。メモについてややこしくなるのはここからだ。

「思いついた」ことを瞬間的に書きとめ、後からそれを利用するというメモは、コンテキストフリーだった。なんであれ、それが「思いついた」ことであればメモの対象になりうるのだ。

言い換えれば、メモを書きとめるとき、その内実は問われない。「それが何であるのか」は入力時には検討されない。というよりも、そんなことをいちいち検討していてはメモの要件は満たされなくなる。だから、「とりあえず、書く」。それがメモだ。

よって、メモはその内側にさまざなものを含む。多様な性質の記録が、「メモ」という名称の元に折り畳まれている。そういってもいいだろう。

ここから二つのことが言える。まず一つは、メモ術とノート術について。もう一つがGTDだ。

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