ノートを使う上で大切なこと──『思考を耕すノートのつくり方』#01
ノートはどうやって使ったらいいの? そもそも何のために使うの? という基本的な情報を整理する『思考を耕すノートのつくり方 自分の知的道具を手に入れる』。その一部を公開します。
はじめに
ノートの多い人生を送ってきました。
文房具マニアというのではないのですが、気がつけば家にあるノートは増えています。棚はもういっぱいです。
もちろん、ただ買っているだけでなく実際に使ってもいます。仕事、趣味、勉強、研究、家事......人生のいろいろな局面でノートは活躍してくれました。「人生はノートと共に」──そんなフレーズを思いついてしまうくらいです。
では、なぜそんなにノートを使ってきたのでしょうか。
それはノートが「考える」という行為をサポートしてくれるからです。人の思考をより広く、柔軟に発揮させてくれる力をノートは持っています。畑を耕せば作物が育ちやすくなるのと同じように、ノートを使えばアイデアや考えが伸び伸びと発展していくのです。そんな道具は──それも数百円で手に入る道具では──なかなか見当たりません。
それにしても不思議です。これほど便利で身近な道具でありながら、苦手意識を感じている人も多いようなのです。この本を手に取ったあなたもそうなのかもしれません。学校で使っていたから馴染んでいるけども、だからこそあまり近づきたくない。そんな複雑な気持ちがあるのかもしれません。
しかしながら、そうした気持ちはちょっとした見方で変化するものです。学校で使ってきたノートの使い方は、「ノートの使い方」のほんの一部でしかありません。ノートという一見単純なツールの背後には、広大な使い方の草原が広がっています。
その意味で、ノートに苦手意識を感じている人は、単に「ノートを使う」ことに慣れていないだけなのかもしれません。
では、ノートを使ううえで大切なことは何でしょうか。おそらく3つあります。
1つは「書くこと」。当たり前ですね。書かないと始まりません。
2めは「続けること」。書き続けることでノートの価値は増えていきます。
最後の1つは「自分なりの書き方を確立すること」。一番見えにくく、重要性が認識されていないにもかかわらず、ほとんど致命的と言えるくらいに重要な点です。
自分にあった書き方。それは人それぞれ違っています。日本では、「正しいやり方」を上から教えてもらうというアプローチが主流ですが、それには限界があります。学校から卒業した僕たちは、自由にノートを書いていけますし、自由に書けるからこそノートは素晴らしいツールなのだともいえます。
本書では、ノートの書き方・使い方をちょっと格好をつけて「ノーティング」と呼び、そのノーティングをそれぞれの人が自分にあったスタイルで構築できるようになることを目指しました。
最終的に構築されるノーティングの数々は、人によって違っているでしょう。そのような多様性こそが、現代では重要なはずです。とはいえ、最初から「好きに、自由にやりましょう」というのでは途方に暮れてしまうでしょう。
よって本書では、カスタマイズを経由して、自分なりのノーティングを構築できるように内容を構成しました。
まずChapter.1では、ノートを使う意義を確認します。そもそもなぜノートを使うのか、ノートを使うと何が嬉しいのかを確認することで、ノートをどのように使えばいいのかの前提が確認されるでしょう。
続くChapter.2では、基本となるノーティングの要素を紹介していきます。骨子、あるいは素子とでも呼べるような基本的な要素たちです。ある意味では当たり前の要素の確認でもあり、それらの要素を一覧・列挙することが狙いでもあります。
続くChapter.3では、具体的な場面を想定して「ノートの書き方」を紹介します。日記やアイデアの発展、読書ノートなど、興味を惹く、あるいは日常的に利用しているケースが見つかるかもしれません。とはいえ、ここで紹介するのはあくまで「基礎」です。改造される前の機体。その書き方をベースにして、自分の使いやすいようにカスタマイズをできる余地を残してあります。
そうしたカスタマイズで役立つのがChapter.2で紹介したノーティングの素子です。ベーシックなノートの書き方に、ノーティング素子を組み合わせることで、「自分なりのノーティング」を構築していくわけです。レゴブロックやマインクラフトのイメージに近いかもしれません。
これまでさまざまなノート術の本が登場していますが、このような視点からアプローチしている書籍はおそらくこれがはじめてでしょう。現代は多様性の必要性が説かれる時代ですが、ノウハウもまた、均一的ではなく、個別にカスタマイズ可能なものであるべき時代が、これからやってくるのではないか、というのが私の見立てです。
また、Chapter.3の合間には、「私のノートの使い方」のコラムが入っています。私のノートの使い方は、あくまで私自身に最適化されたもので、他の人が真似してもそのまま嬉しいわけではありませんが、何かしらのヒントになればと思います。
Chapter.2とChapter.3で、ノーティングの基本と展開は一通り紹介を終えますが、それだけで話が終わらないのが「ノウハウ」の難しいところです。実践していくうえでつまずくポイントがいくつもあります。そこでChapter.4では、よくあるノートについての疑問・質問をQ&Aの形でまとめました。細かい話から大きな話まで、さまざまなQ&Aが並んでいます。実践する際に参考にしてください。
それではさっそく始めましょう。
目次
はじめに
Chapter 1 知的道具としてのノート
#001 「頭の中だけ」は限界がある #002 頭の使い方のサポート 003 気軽に、自由に使う
Chapter 2 使い方のスタイル
#004 ノートの種類 #005 罫線の意味#006 サイズと使い心地 #007 紙質と書き心地 #008 1冊全体の使い方 #009 ページ全体の使い方 #010 記述の仕方いろいろ #011 箇条書きの3要素
C o l u m n 1 アウトライナー
#012 情報の外側と内側 #013 記述を発展させる #014 タイムスタンプの重要性 #015 ナンバリングの利便性#016 貼りつける #017 改造する #018 使うノートは1冊か分冊か #019 書き終えたノートの扱い #020 ノートを自作する #021 デジタルのノート
Chapter 3 書き方のスタイル
#022 日記 #023 作業記録 #024 メモ/アイデアメモ
C o l u m n 2 ミニノートと共に生きる
#025 勉強・仕事ノート #026 講義ノート #027 タスクリスト #028 会議・打合せノート #029 プロジェクトノート #030 発想・アイデアノート #031 着想ノート #032 着想ノートの発展 #033 思考の整理とノート
C o l u m n 3 ノートに書いて、考える
#034 趣味ノート #035 研究ノート #036 読書記録 #037 成果のまとめとノート
C o l u m n 4 趣味を楽しむノート
#038 「立ち止まる」ためのノート時間 #039 ライフログノート #040 振り返りノート
C o l u m n 5 1年の振り返りもノートで
#041 頭を動かすノーティング #042 フリーライティング #043 テーマライティング #044 ブレインダンプノート
C o l u m n 6 ノートは待ってくれる
Chapter 4ノートQ&A
#045 何から始めるのか #046 いつ見返すか #047 記入量の増やし方 #048 ノートの使い分け #049 「やること」の記録をどう利用するか #050 メモとノートの役割分担 #051 デジタル情報との付き合い方 #052 さまざまなノート術との付き合い方 #053 ノートの楽しさは何か #054 ノートを役立たせるには #055 どのように保存するか #056 ノート運用のポイント
付録 ノートをさらに使うためのブックガイド
おわりに ノートを自由に使う