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自信がない・ある人 (ライフハック・プロポ)

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2020/09/21 第519号より

世の中には、自信がない人がそれなりの数いるようです。何か特定の分野において自信がないのではなく、全般的に自信が持てない人。

そうした人たちは、自信がないことについて、絶対の自信をお持ちのように見受けられます。

「自分はダメなんだ」「自分は自信を持っていない」

ということについて、揺るぎない確信を持っているように感じられるのです。

「そんなことありませんよ」「そうじゃないかもしれませんね」

と他の誰かが言っても、その言葉が届くことはありません。その人の中では、自分が自信を持っていないことは確定された事実であるかのようです。「かもしれない」が入り込む隙間はどこにも見当たりません。

■ ■ ■

よく「自信のなさ」を補うために、自信がつく行動や「無根拠な自信」を持つことが推奨されるのですが、その自信のなさが、自分についての揺るぎない確信(「自分はダメなヤツだ」)で構成されているならば、そうした取り組みはあまり効果がないでしょう。むしろ、状況が悪化してしまう恐れすらあります。

そのような「自信のなさ/自信の過剰」は、心の部屋に「不信という名の確信」が入り込んでいる状況だと言えます。もはやその部屋は「不信」で一杯で、新しい自信が入ってくる余地がないのです。

そのような状況で「自信がつく行動」を実施したとしても、満タンの湯船にお湯を足すようなもので、結局はあふれ出てしまいます。認知的に言えば、どれだけ自信がつく行動を取り、そこから結果を得たとしても、「やっぱり自分はダメなんだ」と認識が上書きされてしまうのです。なにせもう部屋は一杯なわけですから。

そもそも上を見ればキリはありませんし、神でない限り完璧な人間は存在しません。つまり、ケチをつけようと思えばいくらでもケチはつけられます。嫁いびりをする姑のように、ささいなことに注目しては、「やっぱり自分はダメなんだ」と自信の元となる素材を道端に捨ててしまえるのです。

そうして確信は、さらに強まっていきます。

■ ■ ■

もし、自信のなさが、自信の欠落ではなく、自信のなさに対する自信の強さとして現れているならば、その解放は自信をつけることではなく、むしろ不信を減らすことだと言えるでしょう。

そしてそれは、「かもしれない」という緩衝材を、認知と理解の間に差し込むことを意味します。

どういうことでしょうか。

認知として、私たちは何かを実感します。ここでは「私は自信がない」と感じることです。その実感を根本から一気に変えるのは難しいでしょう。脳のブラックボックスの奥底に潜り込まなければならず、それはかなりの難業であると予想されます。

一方で、そのように感じたとしても、それが事実であると受け取る必然性はどこにもありません。「私はこのように感じているが、感じているだけかもしれない」と、保留を挟み込むことは可能です。

「私はダメだと感じている」→「私はダメだ」

これは、認識(実感)と事実(理解)が一直線につながっています。しかし、ここに「かもしれない」を差し込めば、状況は変わります。

「私はダメだと感じている」→「私はダメなのかもしれないし、そうでないのかもしれない」

もちろん、「かもしれない」を挟み込んだからといって、自分がダメである可能性がまったく否定されるわけではありません。その可能性はいつまでも残り続けます。一方で、自分がダメではない可能性も同時に立ち上がります。そして、それは「未決定の事柄」として扱われるようになります。つまり、事実ではなくなるのです。

そのとき、部屋の中に充満していた不信は、少しだけ退出してくれるでしょう。「かもしれない」が隙間を作ってくれたのです。

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これは逆説的なレトリックに過ぎないのかもしれません。しかし、ある種の自信のなさは(それが病的なものでない限り)、一定の強度を持つ思い込みであることは少なくありません。「自分はダメだ」は「自分はダメに決まっている」のパラフレーズであり、そこでは主観による事実の断定が行われているのです。

きっとデカルトならば、「君は自分の能力を疑っているみたいだが、そうして疑っている自分について疑ったことはあるのかね?」などと言ってくれるでしょう(あるいはそれはソクラテスの仕事なのかもしれません)。

あらゆる事柄の価値判断を下しているのは、自分です。少なくとも「自分」という世界の中ではそうなっています。

そして、人間は常に正しい判断を下すものではないのでした。不完全な存在です。だから、自分についての評価もまた、あまり過信しない方がよいでしょう。

良い方向にせよ、悪い方向にせよ。

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