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日々の「やること」と人生と

『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』(以下やるおわ)では、タスク管理に関する三つの視点を提示しました。

一つは、実際に取れる具体的な行動だけを対象にした視点。二つめは、タスク以外の情報も含めた「やること」に関わる情報を管理する視点。最後の一つは、そうした「やること」が本当に「やるべきこと」なのかを考える視点です。

タスクリストなどを使って日々の業務を回すのが一つめの視点です。これは入門編であり、効果がはっきり感じられ、しかも即効性があります。

ただし、そうしたリストだけでは情報不足になることもあります。そうしたときに、スケジューラーやプロジェクトノートなどを使い、中長期かつ大規模な情報を処理するのが二つめの視点です。

これも効果はありますが、そこにある情報すべてに即効性が感じられることは小さいでしょう。じわじわと浸透してくる。そんな感じです。

別様の視点

ここまでの段階は、それほど難しくはありません。二つめの視点となるとやや複雑性を帯びてきますが、一応は同じ考え方の発展としてやっていけるものです。

問題は三つめの視点です。ここでは、別様の考え方が必要となります。一つめと二つめでは、そこにある「やること」をいかにこなすかを考えることでしたが──言い換えれば、それが「やること」であるのは自明でしたが──、三つめの視点では異なります。

わりとラディカルに、「これって、自分がやることなのか?」を考えていくことになります。これは結構面倒くさくて、疲れるものです。だから、そういう考えと永久無縁におさらばできるなら、そうしておいた方がよいでしょう。

小さな声

でも、です。『アウトライン・プロセッシングLIFE』にこんな文章が出てきます。

でも、ずっと気にかかっていた心の声があります。確かにDAYSは、その日のDOの優先順位をクリアにすることを助けてくれます。変化する現実に合わせて優先順位を柔軟に変更し、常に最新の優先順位をクリアにしておくことができます。
でも、クリアになった優先順位は本当に「重要なこと」を反映しているのか。自分は本当に重要なことから先に終えていると確信できているのか。そんな声です。

もし、そういう声が何一つ聞こえてこないなら、それはそれで構わないでしょう。完璧な調和、絶対的な納得(あるいは諦観)がそこにはあるはずなので、わざわざその水を引っ掻き回す必要はありません。

でも、そうでないとしたら、何かアクションが必要です。自分が持っている「優先順位」──何を重要とし、何を重要としないのかという基準──、を確認してみたいところです。

だからこれは、非常に属人的なことがらです。誰しもがこのような声を耳に入れるわけではありません。聞こえてくる人がいて、そうでない人がいます。

外部からの声

そう考えると、DAYSが優先順位の変化に柔軟に対応できると言っても、それだけでは足りないことがわかります。機能やテクニックだけの問題ではないのです。

アウトライナーの柔軟な操作は、外部要因による優先順位の変化に対応できます。あらかじめ決めていたことがあったとして、それとは違う事柄が発生した場合や、制約条件が変わってしまったときに、フレキシブルに対応していけます。

対応。

応答性。

外部からの声に応えること。

では、その声があまりにも大きく、そしてたくさんだとしたら?

それに応じて、柔軟に変化し続けていったとしたら?

そのとき、自分の小さな声はどんな風に聞こえるでしょうか。いや、むしろそれが小さく思えること自体、外側からの声が大きいことを示しているのではないでしょうか。

快刀乱麻でなくても

そうは言ってもです。

応答がまったく全然できないなら、社会生活はなかなか厳しいものになるでしょう。

割り当てられた役割があり、その役割が生み出すタスクがあり、そのタスクを「やること」だと受け入れて、遂行していくこともまた必要です。

身を焦がすパッションのままに、「やること」をちゃぶ台返ししても、熱が冷めたらどこかしらで「やること」は発生してきます。そして、それをある程度は粛々とこなしていくこともまた日常の(つまりは生活の)一部です。

だからこそ、その日常に一部でも小さな声を入れていく。そのために小さな声を聞き逃さないようにする。

ここには快刀乱麻さはどこにもありません。こじれた物事を一刀両断するのではなく、その両方を抱え、どうにか折り合いをつけていこう、という姿勢です。

だから、やるおわで示したタスク管理の三つの視点は、それぞれが独立していない方がよいかと思います。日々の「やること」があり、その「やること」についてたまに考える自分がいる。その考えたことが、日々の「やること」に少しだけ影響を与える。そんな感じです。

なにせ、生活と人生はつながっているのですから。


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