見出し画像

第十四回:「気になること」について考える

前回は、私たちはついつい「気になること」をタスクにしてしまうので、その対策が必要であると述べた。

その一つとして、

「タスクではない形」で記録し、それがタスクであるかどうかを判断する。そういう工程を挟むのである。

を挙げた。今回は、この問題に取り組もう。

タスクではない形で

さて、タスク管理をはじめるとなれば、タスク管理ツールを使うことが推奨されるのが一般的だろう。タスク管理ツールは、名前の通りタスクを管理するためのツールである。その多くはリスト型であり、いくつかのリストに分けてタスクを保存できるようになっている。

基本的にこうしたツールは使い勝手が良いものだし、高機能さを売りにしたものもある。それ自体は別に悪いことではない。しかし、問題がないわけでもない。

一番の問題は、「タスク」以外の居場所がほとんどないことである。そのツールに保存することは、「タスク」として保存することを意味する。

だから、情報整理においてタスク管理ツールしかなければ、その人は自分の情報をタスクとしてしか保存できないことになる。これは由々しき問題であろう。なぜなら、「気になること」が「タスク」に直結してしまうからである。あっという間にタスク爆発を起こすだろうことは疑いようもない。

だからこそ、タスク以外の形で情報を保存できる場所が必要なのだ。

そのままの形で

タスクは、「気になること」から生まれる。よって、タスクをタスクでない形で保存するならば「気になること」をそのまま──つまり、タスクに変換しない状態で──保存できればよい。

ツールはなんだっていい。タスクしか管理できないツールでタスク管理を行っているならば、それ以外のツールを使えばいいし、タスク以外の情報も管理できるツール(アウトライナーやEvernoteなど)を使っているならば、そこに保存してもいい。普段がデジタルツールなら、あえてアナログツールを使う手もある。なんであれ、タスク以外の情報を保存する場所を作るのだ。

その場所に保存されるのは、広い意味での「気になること」になるだろう。

  • 掃除機が古いからそろそろ買い替えたい

  • 面白い企画案を思いついたのでちょっとやってみたいかもしれない

  • 今月末に向けて振り込みの準備をしておかないと

こういう「気になること」があるならば、それをそのままの形で記述してしまう。無理にタスクにはしないし、なんなら「ネクストアクション」も考えない。

たとえば、まっとうなタスク管理の技法であれば、「掃除機が古いからそろそろ買い替えたい」という気になることがあれば、そのネクストアクションを考えましょうと提案してくるだろう。頭をひねれば、「ネットで評判を検索する」や「カタログを集める」といったものがあるだろうか。

もちろん、来週に掃除機を買い替えるつもりであれば、こうしたネクストアクションの制定は必要なものであるし、なんなら必須でもある。しかし、私は「掃除機が古いからそろそろ買い替えたい」と思っただけなのであった。そこでは買うかどうかすらまだはっきりしていない。にもかかわらず、「ネットで評判を検索する」というネクストアクションを設定するのは時期尚早ではないか。

……というようなことを「考える」のである。

こうして書き留めた「気になること」をどう処理するのがよいのかに一般論はない。自分がそれについて考えて、一番適切であろうと思う処理を施すのだ。

逆に言えば、そうした「考え」が行われているならば、どういうツールを使い、どういうやり方をしても構わない。単に、「タスク」でないと登録できないツールでは、このような「考え」を行うための思考空間が成立させにくい、ということを念頭においておけばいいだけだ。つまり、ワンクッションを置くのである。

さいごに

上記のような「考え」は、アルゴリズム的に行うのが一番効率がよい(これを洗練させたものがGTDである)。しかし、自分の「気になること」すべてが、そのようなアルゴリズムで適切に処理できるとは限らない。また、アルゴリズムに頼りすぎて、自分の「考え」がおろそかになってしまう事態も考えられる。

そうした「考え」と「考えっぽいアルゴリズム的判断」の違いは小さいかもしれないが、積み重ねると無視できない影響をもたらすことも想定される。よって、必要に応じて自分の「考え」を発揮させられる準備は整えておいた方がよいだろう。

(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?