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『無線と実験』復刻ダイジェスト版 〈1924-1935〉レビュー

ダイジェスト版表紙

『無線と実験』―ラジオ放送開始より電気蓄音機まで〈1924-1935〉

「MJ無線と実験」編集部 (編集)

📚

1924年、大正13年に創刊した『無線と実験』(最近は『МJ無線と実験』だそうです。MJD!?)の、創刊から11年分、1924年~1935年の記事のダイジェスト本です。
1924年というからには今から98年前!! ほぼ一世紀前に創刊してたんですね。もう老舗中の老舗雑誌です。

創刊號の表紙。なんかDJっぽくない?(違)

じつは、同じ年に創刊した『子供の科学』もダイジェスト版があり、

↑こちらで紹介しています。
『子供の科学』は名前の通り子供向けの科学雑誌ということで、科学への夢が詰まった記事ばかり。言い回しも当時の冒険小説のようで読んでいてとっても盛り上がります(わたしだけ?w)

対して、この『無線と実験』は、より実用的で実践的な大人向け(?)な内容なわけです。

創刊(発刊)の辞

大人むけなので(?)、ちょっと読みにくいです><
Google先生の助けを借りて、テキスト化してみました。

社會人類の文明尺度は、電氣應用の状況に依りて、測定せられ、また電氣精は雷智雄によりて、代表せらるるとは、近時に於ける、學界の標語なるにあらずや。
然るに、我國、斯界の現況は如何。 無線放送の法令發布せられてより、既に半歳、今に至るも、一の放送局、設置あるを聞かず。實に目醒めざるも嬉しからずや。
見よ、大震直後、横濱港内にありし、 コレア丸より、撥せる、電波は、更に、 厚ノ町無線局を経て、惨絶の状況を全世界に報じ帝都の救援と復興の第一線舞臺に活動せるに□ずや。
此活用機を、今にして、顧るなくば、寧ろ士人として、齡すべからず、と 云ふも敢て過言にあらず。
されど人、各々職あり、故に必ずしも、直接に断業に盡せと強要するに非ず、 たゞ、働くとも理解と同情を以て接せられん事を望む。
今般、余輩等同人、相議し、無線科學普及の目的を以て本誌を創刊せり。
愛國の至誠、憂の熱血、凝つて、以て本誌成る、乞ふ、一片の赤心あるを諒とせよ。

『無線と実験』主幹苫米地貢氏の発刊の辞より。
文中「□」のところは読み取れず。たぶん、あらず、の「非」ですね。

1924年発刊なので、前の年にあった関東大震災の話題が出ています。その時ちょうど横浜に停泊していた「コレア丸」という船からの一報が全世界に伝わって救助・救援が行われたとのこと。

※このあたりの熱いレポートは

↑にありました。(ちょっとどころかかなり燃える良い話なのでぜひリンク先を読んであげてください)100年前の関東大震災の時にも「トモダチ作戦」があったのですね。ありがたやです><

さてその震災時、無線電信(モールスで打鍵したんですねー)がこれだけ大活躍したというのに、まだラジオ放送局が日本に存在していないことに憤慨されています。
半年前にラジオ放送の法律が発布されているのにラジオ局がないなんて! (って、今では考えられないですけど、当時は法律のほうが早かったんですねえ。)

『無線と実験』は、そんな日本のラジオ技術の底上げと科学の普及のために創刊した。とのこと。

愛國の至誠、憂の熱血、凝つて、以て本誌成る、乞ふ、一片の赤心あるを諒とせよ。

かっこいいですねえw

この一世紀前の熱き思いが、脈々受け継がれて、いまのMJ誌があるのでしょうねー(最近のは高級オーディオな本になってるようで実は読んでないんですけど(スミマセン><))

さてさて、発刊の辞はルビもなくて読みづらかったですが、初期の内容にはだいたいルビがはいっています。

こんなかんじにルビもびっしり

言い回しは古いですけど、これならなんとか読めます。古式ゆかしい口調がよいかんじですw
この、アームストロングさんの発明やら、スーパーヘテロダイン方式やら、いろいろ技術的な話がこのあと続くので、そこらへんは興味あるかたはみてあげてほしいところ。(回路図とかもたくさん載っています)
さすがに古くて現代には通用しない技術でしょうけれど、古典というか原点は知っておいてもきっと役に立つと思います。

当時のラジオ放送テクニック

電波・無線の技術だけでなく、当時のラジオ放送の収録(あ、「録」じゃないですね、当時は録音ではなくほぼほぼすべて生放送!)テクニックもいろいろ解説されています。
面白いというかスゴイと思ったのはこれ。

ラジオドラマのスタジオの図。同心円の中心にあるのはマイク
「日本海海戦」のドラマ用に、いろんな「音」の役者さんたちの配置がわかります

当時のラジオドラマは生放送(!)なので、ドラマのなかに出てくる「音」は全部その場で一発でタイミングよく鳴らさないといけません。だから、大きなスタジオに音の反響などを考えて人員を配置して、放送が始まったらシナリオどおりに息を合わせて音の芝居をしなくちゃいけなかったようです。これ、めちゃくちゃ大がかりでスゴイですよね。緊張しただろうなあー。録音・編集できる今ではまず考えられない方法でドラマを放送していたんですねえ。
そんなことも、『無線と実験』の話題の一部として紹介されています。

当時の広告いろいろ

そのほか、いろんな記事がびっしり入っていますが、個人的に面白かった(興味深かった)のは昔の広告がそのまま乗っていること。

ナシヨナル!!(「ョ」の字こう書くんですねーw)
NEC!!
いまのバッテリーのGSユアサでしょうか?

その他、聞いたことない(もうなくなってしまった?)会社の広告などが沢山のっていて、いろいろ興味深いのです。

当時の表紙のカラー写真も

英語名にTelevisionって入り始めてます。テレビ放送も可能になってきたころ?
それはいいけど横書きで右から左へ読むのは読み辛いですわ><

なぜかラジオを修理している人の表紙写真が多いです。(格好よかったのでしょうかね?w)

電蓄を修理中の男性の表紙。
「ラジオ修理技術を持つものが大いにもてたのは、この頃と終戦直後の2回である」
という自虐的なコメント付きw

などなど、11年分のダイジェストですので、紹介したいところはまだまだありますが全部コピペするわけにもいかないので、これ以上はぜひ入手してご覧ください。『子供の科学』ダイジェストはプレミアついちゃっていますが、こちらは古本価格は安くなっているようですw

できれば、『子供の科学』ダイジェストと並べて読むと、当時の大人と子供の雰囲気が感じられておもしろいですよー☆

※さらに、『子供の科学』と『無線と実験』と同様にダイジェスト版がでている

本誌に入っていた1987年の新刊案内

『実際園芸』ダイジェスト版も入手してみたいのですが、いまだにめぐり合えていません><
ほんとに売ってるのかしら?w

この三冊、1987年発行なので、ダイジェスト版が出てからももう35年たっちゃっています。そろそろまた、こんどこそ創刊100周年記念でまただしてくれないですかねー。古本でだいぶ印刷も傷んでしまっているので、綺麗なデジタルリマスター版で見てみたいものです。誠文堂新光社さま、おねがいしますよーw

#らせんの本棚 #科学の本 #科学の歴史 #誠文堂新光社 #無線と実験



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