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ボイジャーの旅:電波通信編③やっぱりスゴイ!パラボラアンテナ!

地球から(だいたい)140億マイル

前回の

↑こちらの記事の続きです。書ききれなかったことや、まだまだすんごい秘密がたくさんあると書いた件の補足をしていきます。

※できれば前回の記事から読んでくださいまし☆

続・周波数のひみつ

宇宙通信では 8.4 GHz 帯が有利。という話は前回しました。1970年代の科学者のみなさんも、もちろんそんなことは10も100も承知だったのですが、実は残念ながら当時の技術では、S-Band(2.1GHz帯)の通信機器までしか実用化できていなかったそうです。

それでも、あえて、チャレンジとしてボイジャーには史上初めて当時最先端の X-Band (8.4 GHz)送信機が搭載されました。(まだ実験室レベルの試作マシンってことですよ!)

うまくこのX-Bandが動かなくても、同時に搭載しているS-Bandの信頼性でなんとか運用しようという作りだったようです。

実際、X-Bandは打ち上げからしばらくは(あまりにタイトなビームになるので)使用されませんでした、S-Bandの 2.1 GHz 帯をつかった LGAとS-Band HGAアンテナでダウンリンクされていたのです。

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地球近郊(LGA)から、木星、土星へ旅するあたりで、 S-Band が届かなくなり、ようやく真打のX-Band HGAアンテナが活用されるようになりました。(というか、これが上手く運用できなかったら土星以遠からは通信できなかったと思われます)

やっぱりスゴイ!パラボラアンテナ!

画像2http://www.pyonta.city.hiroshima.jp/blog/pages/number/314/page_number/1.htmlより

パラボラアンテナのお椀の部分は放物面で形作られています。
放物線(二次関数y=ax2のグラフとしてガッコで習いますね )を、y軸を中心としてぐるっと1回転させてできた曲面をパラボラ(放物面)といいます。

パラボラ(放物面)は、y軸(中心軸)に平行に飛んできた電波が、放物面のお皿に当たって反射すると、かならず中心軸上の焦点にあつまるという性質があります。

※もちろん送信ではこの逆です。

どんなパラボラアンテナでもこの原理を利用していて、アンテナの形はどれをとっても相似形になっています。

ボイジャーの3.7mパラボラアンテナも、ゴールドストーンの70m級も、サイズはぜんぜんちがいますが、カタチはまったく同じ相似形なんですね。

そして、これは考えればすぐわかりますが、電波を受けることができるお皿が大きければ大きいほど、焦点に集められる電波は二乗で増えます。
直径が倍になるということは、面積比では4倍ですよね。なので、直径の二乗に比例してパラボラアンテナのゲインは増えていくというわけ。

そして、もう一つ、先ほどの X-Band の話につながりますが、周波数が高ければ高いほど波長が短くなり、電磁波は直進傾向を強めます。それだけパラボラアンテナが有利に働くわけです。

でっかいことはいいことだ! けれど重い!

ボイジャーが土星を超え、天王星や海王星へ向かって観測を続けることが決定された時、NASAはDSN(Deep Space Network)の主力の64m級アンテナをバラシて、70m級に作り変えたのだそうです。

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64m級のアンテナの骨組みでは、70m級の重さに耐えられなかったのだとか…。64mから70mに広げるだけで、重量が倍近くになるとのことで、それだけの重量に耐えられるよう、抜本的に構造設計から見直して作り変えたのだそうです。

そこまでやらないと、超長距離を超えてくる X-Band を受信できないことが判明したからなのですね。。

それほどまでにパラボラアンテナの直径は利得に直結する重要な要素なのです。

※なお、この改修で、アンテナのゲインは 1.4 dB 向上したそうです。(dBは対数表記ですからね! たったそれだけ!? なんて言わないように!w)

S-Bandのほうが遠くまで届くんじゃないの?

JAXAさんのラジオ放送の記事:

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http://www.kenkai.jaxa.jp/publication/radio/contrast/radio_4.html

↑には、「Sバンドは遠くまで届くという特徴があります」と書かれています。

X-Bandのほうが断然波長が短く、その分直進性があるのですが、実は欠点もあり、

電磁場の周波数が高くなると、自由空間を伝搬する際の減衰は周波数の二乗に比例して大きくなる

のです。X-Bandの周波数はS-Bandの約3倍。それだけ高周波の二乗で減衰しちゃうのでは超長距離通信に向いていないのでは!?

と思っちゃいますが、この欠点は、前回も書いたウルトラ技で解消されるのです。

つまり、

送信と受信双方にパラボラアンテナを使う。

ということ。

X-Bandの直進性で得られるゲイン利得が、双方パラボラアンテナを使うことで距離による減衰性を上回るのです。

パラボラアンテナは、周波数が高いほどゲインが向上します。その値はだいたい周波数の二乗に比例するそう。

送信側(二乗)+受信側(二乗)でゲインアップ! しているので、めちゃくちゃ単純計算してしまうと2+2-2=2、ってことで、周波数の二乗に比例した減衰を打ち消したうえで、結果的に通信経路全体では周波数の二乗でゲインが高められるそうです。

※片道だけでは減衰で打ち消されてしまうのがポイント。両方パラボラアンテナにすることで利得が高められるわけですね!

普通のアンテナだったら?

ここでもし、パラボラアンテナを使わなかったらどうなるか考えてみましょう。

電波が1点から四方八方(というか三次元なので上下も含めた全周にわたって)広がっていく(無指向性)とすると、下図のように電波は球体が大きくなるようにひろがっていきます。

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↑トランジスタ技術2019年6月号ボイジャー特集より

この時、あるエリアで電波の強度を測定したとすると、そのエリア(図中の赤い色のついた部分)に届くエネルギーの総量は(距離による減衰がなかったとしても)一定のハズです。
しかし、面積は距離(球体の半径)の二乗で広がっていくので、結果として到達する電波エネルギーは広がるぶん「薄まって」しまうわけです。

これが、電波は距離の二乗に比例して減衰していく理由となります。

この前提は球体状に電波が広がっていくからともいえるわけで、その前提を覆してしまうパラボラアンテナってやつはまさに夢の超兵器なのですね(ちょっと違う)

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この図は送信機ですね(嘘)

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なお、今回も

の特集記事を参考にして書かせていただきました。数値などすこし直している部分はありますが、もし間違いがあったらワタシの責任です。(間違いや勘違いあったら直しますので教えてくださいw)

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