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【平和について願うこと】

たまには家族の話でも書こうと思う。

娘が生まれてから、もうすぐ1年と9ヶ月が経つ。
泣く、寝るばかりだった新生児が、こんなにも短期間で成長していくということに、毎日驚き続けている。
実際に子どもが生まれるまでは想像の範囲を出なかったが、たどたどしいながらも言葉を操り、徐々にコミュニケーションが取れるようになるのは嬉しいものだ。

まだまだ自分の気持ちを的確に伝えるには至らないが、彼女の認識する単語の数は、日々激増していく。

今年の1月なかば、こんなつぶやきをnoteに載せた。

当時の彼女にとって世の中の魚類は全て『ニモ』であった。
我々の世界でいうサンマも、イワシも、マグロも鯛も、全てが『ニモ』。
焼きニモ、ニモの甘露煮、ニモのたたき、ニモの姿造り。
オレンジ色のボディは、どれも食欲をそそらない。

ニモの一本釣り、ニモの漁獲量、ニモの産地偽装、砂浜に打ち上げられた大量のニモ。
どれも切なさを伴う。

そして3月に入り、気付けば彼女は随分と色々な名前を覚えたようだ。

パパ、ママ、はお手の物だ。
アンパンマン、カレーパンマン、ミッキー、ミミーミニー
上手に言えるようになってきた。

全ての魚介類がニモだった時代も終焉を迎え、そこそこ区別もつくようになった。

タイタイ、サンマ、タコ、カニ、サチシャチ
感動を禁じ得ない。

フグの写真を指さし、




プゥーーーーーーーーフグが膨れる擬音





パァァァアン!!そして破裂する。…破裂?!


?!?!



誰だよ、そんな教え方したのは。

いいや、我が家は3人家族。
教えたのは僕ではないので、疑うべきは必然的にただ1人だ。

問いただすと、容疑者はあっさりと自白した。

「あ、ごめん、それ私。」

妻は悪びれる様子もなく、ただただヘラヘラしていた。
ちなみに娘は、ハリセンボンの写真でも同様に、元気いっぱい破裂を表現している。

彼らは膨らむことはあっても、おそらく身を粉にしてまで天敵を驚かせることはしないだろう。
そんなことをするような愚かな生物は、そうそう存在しない。

娘に正しい情報を教えるのが親の務めかもしれないが、今は伸び伸びと育てって欲しい。
出来るだけ否定はしたくない。

結局は娘と一緒になってフグが体を張る、いや、「文字通り、フグが体を張らさられる」遊びに付き合うのである。


名前を覚えたのは生き物やキャラクターに限ったことではない。
体の部位、洋服、食べ物。
それは多岐に渡る。

ちょうど今朝の出来事。
出勤前に娘を膝に乗せてニュースを視ていた。

僕は世界の情勢に胸を痛めつつテレビに目を遣るが、膝の上の娘は外国での出来事になど、興味を持たない。
彼女が大きくなる頃には、そんなニュースを目にする機会ごと無くなればいいのにと、儚い願いを込めて娘の頭を撫でる。

ニュースに興味を持てない娘は、僕の顔や手にいたずらを始めた。

!」
 僕の手を指でつつく。

ほっぺ!」
 僕の頬をパチンパチンと小さな手のひらで叩く。

みーみー!」
 指を突っ込まないでくれ。痛い。

おーはーな!」
 指を突っ込まないd(以下略

めーめー!」
 メガネのレンズに指紋を擦り付けるように指で押し込んでくる。
 やめてくれ、そこはパパの本体だ。

そして僕の髪を引っ張る娘。
大きな声で…



ぼうし頭髪!」





いや、違ぇーし!!
自前です。取れません。
ちゃんと生えてます。本物ですよ。

「娘さん可愛いじゃない、これから覚えるんだから目くじら立てちゃダメですよ!」

というコメントは不要である。

ジョン・レノンだって、こう言っているだろう?
想像してごらんImagine
この現象によりどんな悲劇が起こるのか。

【公園までの散歩道】
娘は肩車をされるのが好きだ。
公園までの道中、彼女を肩の上に跨らせる。
当然彼女の眼前には僕の頭部。
髪を引っ張りながら、

ぼうし頭髪!」


いいえ、違うんです顔見知りの奥様。
フサフサとした髪の毛は本物ですよ。
どうかそんな目で見ないでください。

【保育園に送り届ける】
娘を保育園に連れて行き、先生に預ける。
荷物を置き、登園表に時間を書き、靴を脱がせる。
ここで僕はしゃがむ。
娘は傍らに立っている。
当然彼女の眼前には僕の頭部。
髪を引っ張りながら、

ぼうし頭髪!」


いいえ、違うんです先生。
フサフサとした髪の毛は本物ですよ。
何本か白髪もあるし、ニセモノならそんなことはないでしょう。
どうか「大丈夫ですよ^^」みたいな目で見ないでください。
よかったら引っ張ってごらんなさい。
えぇ、このご時世ですから、消毒液を頭にぶっかけて頂いても構いませんよ。

【スーパーでの買い物】
娘を連れて買い物。
まだチョコレートやキャンディは早いが、やはり大好きなアンパンマンが描かれたパッケージに娘は心を持って行かれる。
買い与えはしないが見ているだけで満足なようなので、しばしお菓子コーナーで足を止める。
「あー、アンパンマンだね!」などと言葉を掛ける。
そういったお菓子は子どもの目線に合うように棚の下の方に陳列されていることにお気付きだろうか。
ここで僕はしゃがむ。
娘は傍らに立っている。
当然彼女の眼前には僕の頭部。
髪を引っ張りながら、

ぼうし頭髪!」


いや、違うんだ、カントリーマアムを手に取ろうとしている女子高生諸君。
フサフサとした髪の毛は本物なんだ。
「フッ」みたいな音を発して目を逸らすのはやめてくれ。
「誰にも言いませんよw」みたいな空気を出さないでくれ。
どうせ明日学校で言いふらすんだろう。
僕に実害はないから良いけれども。


誤解のないように言っておくが、僕は正真正銘の生きた頭髪を豊富に生やしている。
本当だ。嘘じゃない。



いつの日か娘がお酒を飲めるようになる頃、僕の頭からは帽子頭髪が綺麗さっぱりと無くなっているかもしれない。
そうなってしまっても、娘が晩酌に付き合ってくれたらどんな気持ちだろう、と想像Imagineしてみる。
肴にフグの刺身があれば、なお良い。

父親の髪の毛を帽子呼ばわりしたことへの文句も、フグの生態についても、その時に話そう。
話したい。

我が家に限らず、日本に限らず、世界中のどの家庭にも、そんな光景が等しく訪れればいい。
我が家に訪れるかどうかは娘の気持ち次第だが、その選択肢は、他の誰にも奪う権利は無いと僕は考える。

どんな理由や思惑があろうとも。
どんな大義名分があろうとも。

銃撃や爆撃から頭部を保護するための帽子ヘルメットを、全ての人が投げ捨てられる世界になることを切に願う。



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