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帝京ちばリウマチ科Bulletin 2022.05.30-06.03

2022.05.30(月)

  • サル痘(monkeypox)の話

Lancet infectious disease (online)
https://doi.org/10.1016/S1473-3099(22)00228-6

UKからMonkerypox(サル痘)についての7例報告。
臨床症状:発熱、皮疹、頭痛、リンパ節腫脹、肝機能検査異常
合併症:肺炎、脳炎、角膜炎(keratitis)、細菌感染症のoverlap
"one patient had a monkeypox virus PCR-positive deep tissue abscess"

いつもお世話になっている忽那先生速報。

上掲Case seriesで"tecovirimat"という薬を投与されている患者が1例いたが、米国FDAが2018年の時点でBioterrorism対策として認可していた模様。

  • SLEに併発した難治性IgG4関連疾患に対するBelimumab

本邦からのケースレポート。IgG4-RDとSLEの併存は個人的に経験なし。

  • 補助具を入手した。

キャップに嵌め込むとき、少し力が必要に思うが、よく考えられている。

2022.05.31(火)

  • SAPHO症候群

SAPHO症候群は混乱を来しやすい呼称であるため、個人的にはMCTDと同じく「使わない」単語の1つにしている。
ただ、上掲PodcastのDr. Brown at Cleveland ClinicはSAPHOの歴史をよく掘っていて、なかなか興味深い内容となっている。

  • Tietzeが1921年に報告している。

  • リウマチ科医にとっては"Mikulicz病"で知られるJan Mikulicz-Radeckiは偉大な外科医であったが、彼のエピソード「ポーランド人か、ドイツ人か、それともオーストリア人か」とnationalityを聞かれて"surgeon"と答えたエピソードはこのPodcastで初めて知った。

It is difficult to judge today whether this was a statement about his nationality, especially because when asked whether he was a Pole, a German or an Austrian, Mikulicz generally answered: “I am a surgeon”.
Jan Mikulicz-Radecki(1850-1905) - The forgotten surgical genius
  • 現・聖路加国際病院の田巻先生が日本語文献の翻訳のために召喚されている(28:00あたり)

  • Dr. Brownは"SAPHO syndrome"は"pustulotic arthro-osteitis(PAO)"を報告したSonozakiらのGroup(Ann Rheum Dis 1981)にcreditされても良いのでは、という意見のようだ。そうですよね。今後「SAPHO症候群疑い」でご紹介頂く患者さんたちには、積極的に「PAO」の診断名で返信を作成しよう。

  • ARD Viewpoint:AAVやLupus腎炎にSGLT-2阻害薬を。

これはもう実際に使用している先生もいらっしゃるような気がする。

2022.06.01(水)

EULAR 2022 Congressが開幕

EULARとしては初のHybrid(現地+online)開催。
現地参加した医師「食べるものはないが、Coffee is everywhere
初日にいきなり治療推奨 3つのUpdateがあった。

関節リウマチ治療推奨 2022
Sセンセの発表。20分の発表のうち10分を「ステロイドの使用についてどうしてこのような推奨になったか」の説明に費やし、ACR2021との対立姿勢を明確にする。どうでもいいけれどSセンセって強烈なカネの匂いがするよね。 その他、薬剤の中止についてMTX+tDMARDsのどちらから中止にしても良い(前回の推奨ではtDMARDsから中止)ことになった模様。

ANCA関連血管炎治療推奨 2022
PEXIVAS, LoVAS, AURORAなど多くの臨床試験の結果を受けてUpdate.

血漿交換は肺胞出血に対して「ルーチンに使用しない」ことを推奨、重症の糸球体腎炎に対しては「考慮してもよい(may be considered)」という推奨。

体軸性脊椎関節炎治療推奨(GRAPPAとの協働)2022

(まとめ中)

これらについては来週以降もう少し確度の高い情報を得てからUpdate.

2022.06.02(木)

引き続き医局でEULARモード。Cush先生の"RheumNow"は重要な情報源。

というか、学会期間ここだけ観ていれば良いのでは?
まとめきれていないけれど、以下に面白そうなセッションやTrialに言及したTweetをペタペタ貼っておきます。

SLEに対するCAR-T:昨年(Aug. 2021)NEJMに出た「SLEで奇跡の治癒」をもたらしたCAR-Tについて5例のケースシリーズが出た。リウマチ科医もCAR-T細胞療法に習熟すべき日が来るのだろうか。SScに対する骨髄移植に続いてHemato-rheumatology領域の協働が必要と思われる。

筋炎の自己抗体:まとめ図

自己炎症性疾患(AID):軽々に「否定」しないこと。

抗Ro52/SS-A抗体:Sjogren症候群においては間質性肺炎と関連。

Sjogren症候群よりは、炎症性疾患の間質性肺炎で抗Ro52抗体が陽性のときの方が色々とおよろしくない気がしている。

SLEに対するDeucravacitinib:乾癬やPsAダケジャナーイのDeucravacitinib、発音が難しいだけのお薬というダケジャナーイ。

2022.06.03(金)

Y県のK病院で外勤 → その後研修医レクチャー

MAGIC症候群からVEXASに言及するのを忘れた。
Behcet先生〔トルコの皮膚科医〕に先行すること数年、Adamantiades先生〔ギリシャの眼科医〕が同様の症候を記載してるんですよね。

Benediktos Adamantiades (1875–1962), Greek ophthalmologist from Prussa, Asia minor (nowadays Bursa, Turkey), presented a lecture entitled “A case of relapsing iritis with hypopyon”, describing a 20 year old male patient with the three cardinal signs of the disease. The disease had begun at the age of 18 with oedema and ulcerations at the left leg diagnosed as thrombophlebitis. During the following two years (1928–30) the patient developed recurrent iritis with hypopyon in both eyes, which led to blindness and atrophy of the optic nerve, scrotal ulcers healing with scars, oral aphthous ulcers, and a sterile arthritis of both knees. The last three signs were recurrent. Bacterial cultures of knee and anterior eye chamber punctures were sterile and the inoculation experiments in animals were negative, while staphylococci had grown in cultures from scrotal ulcers and a tonsilar abscess.
"Early descriptions of Adamantiades-Behçet’s disease"

今週の引用

伊藤比呂美「たそがれてゆく子さん」(中公文庫)より

偶然、母と娘の衝突・葛藤を複数(組)で見掛ける週であったように思う。


いただいたサポートで麦茶とか飲みます。