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本を書きました

「ロジックで進めるリウマチ・膠原病診療」(医学書院)という本を書きました。読んで・診て・考えた結果を出力したものです。

帯と本文のイラストは、成人スティル病との闘病記まんがを出版しておられるさとうみゆきさんにお願いしました。

「まえがき」より:

本書はプライマリ・ケアのセッティングでリウマチ性疾患・膠原病を診療するための方法について、主に「筋骨格・軟部組織の診察」という観点からまとめた叙説(Discours de la méthode)である。

個々の疾患について、あるいはその治療薬(生物学的製剤など)については優れた教科書・モノグラフが数多あるが、その疾患を「どのように疑い、どのように追いつめるか」、治療薬を「何をもとに決定し、どのように使用するか」など、根柢にある考えかたを説いたものが意外と見当たらず、初期~後期研修医への説明に時間を要することがあったため、自分の思考経路(ロジック)を開陳するつもりで書いた。別の言い方をすれば、優れた「単語集」「用例集」を使いこなすための「リウマチ・膠原病診療の初級文法書」を目指したものである。文法書は無味乾燥となりがちであるため、通読可能となるように、多くの注釈(Huggy’s Memo)を付した 。

英国の哲学者ギルバート・ライルは、知識を”knowing that”型と”knowing how”型に分類し、”Knowing how to operate is not knowing how to tell how to operate.”と的確に表現している。本書で述べられた個々の事項は、先人の業績を参照したもので、特に新しいことはないが、その事項を徹底して臨床現場で「斬れるかたち」に配列し、多くの注釈をつけて、”how to practice”が伝わるように工夫した点が、あえて言えば「本書の新しさ」である。

リウマチ・膠原病診療の魅力のひとつとして、適切な診断と治療方針には、苦痛から解き放たれた「患者の笑顔」が漏れなくついてくる、ということが挙げられる。その魅力が伝わる本になったかどうか、それはひとえに本書の読者が、本書内容の実践を通じて、より多くの「患者の笑顔」によって迎えられたかどうかによって証されることだとおもう。
また、決して大部とはいえない本書だが、浅学の身では一冊に纏めるために多大な労苦を要し、自身の菲才が痛感された。読者の皆様のご批判を乞う次第である。

医学書院の滝沢英行氏には本書の元になる連載「あたらしいリウマチ診療」をご提案頂き、本書の完成に至るまで一貫してご努力頂いた。また、「なんびょうにっき」でご自身の成人スティル病との闘病記を描いておられるさとうみゆきさんに本書イラストをお願いできたのも僥倖であった。記して感謝の意を表する次第である。
聖路加国際病院リウマチ膠原病センターの岡田正人先生・岸本暢将先生が主催される「リウマチ・膠原病セミナー」ではいつも多くを学んでいると同時に、筆者が本書で開陳したような「考え方」を披瀝する最初の場にさせて頂いている。そこで得られた反応が本書の通奏低音である。
最後に、本書は息子の夜泣きの合間に書かれ、娘の誕生とほぼ同時に完成したことを、家族への感謝とともに記しておきたい。

平成30年1月9日
萩野 昇

1)   注釈だけ拾い読みしていくのも面白いかもしれない。リウマチ・膠原病診療の裏道。


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