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コミPo!5人衆(前編)

 コミPo!5周年。
 3Dキャラで組み立てるマンガ作成ツールとして発売されたコミPo!が、2015年12月15日に5さいを迎えるのだ。
 ああ、懐かしいなあ。
 思えば私、小石川美保の人生はコミPo!と共にあった。

 おっと、自己紹介が遅れました。
 私の名前は小石川美保。
 みんなからは「こみぽ」ってあだ名で呼ばれている。

 誰からも尊敬される完全無欠な女子高生。
 昔の言葉で例えると……そうだなあ。
 立てばシャクナゲ、座ればボタン、歩く姿はユリの花、ってとこかな。
 とにかく美麗で美しくてビューティフルで、あまりの美しさにすれ違った男の人は二度見三度見当たり前。
 こないだなんかよそ見が祟ってごみ箱に突っ込んだ出前の兄ちゃんがいたっけ。
 優しい私はその人に手を伸ばして起こしてあげると、「貴女に握って貰えたこの手、もう一生洗いません」と涙ながらに感激されちゃうんだ。

 実家は5500坪の大豪邸。
 使用人は優に5万人以上。
 パパもママも某有名企業をまとめる大金持ちの社長で、年商は5京円。
 ペットのモモは血統書付きの犬でお値段プライスレス。
 お兄ちゃんは4年前、火サス展開に巻き込まれて死んだ。

 言い忘れていたけど、学園での私は誰からも尊敬される。
 男子からは性的な意味で尊敬され、学園内美少女総選挙では2位に10万票異常の大差を付けて不動の1位に輝き続けている。
 私の体操着姿を隠し撮りしたらしいブロマイドが1枚2万円で取引されていると耳にしたことがあるぐらいだ。
 女子からは模範的な意味で尊敬され、髪型やアクセから私の姿に似せる、いわゆる「コミラー」の女子が只今絶賛増殖中。
 私がいいねと褒めたリップクリームも焼きそばパンも、コミラー達があっという間に買い占め社会現象になったぐらいだ。

 私が歩いた後はぺんぺん草が生える。
 みんながしあわせ、私もしあわせ。
 そんなパーフェクトな私の周りには、ちょっと変わった仲間達が4人いる。
 私と合わせてコミPo!5人衆だ。
 そんなみんなをここで1人づつ紹介していこうと思う。
 まずこれ。

 西池かなめ。モブ。

 上部てつひさ。ガチホモ。

 越谷先生。年増。

 こんなのいたっけ?
 以上。

「『以上』じゃなーい! 誰がモブキャラよ!?」
「ひどいよこみぽちゃん! 俺ノーマルだよホモじゃないよ!!」
「だ・れ・が、年増ですってぇぇぇぇ!?!?!」
「先生に至っては名前すら出てないって酷すぎじゃないかな」

 あ~~、えーと、う~~~~ん。
 よくわかんないけど一部不服が有るみたい。

「「「「全部だよ!!!!」」」」

 やだこの人たち怖い。
 私のモノローグにまで突っ込まないでくれるかな。
 あとカギ括弧人数分重ねるの邪道だって、プロ小説家の先生方に怒られちゃうよ?

「平気でしょ読まれないから」

 デスヨネー。
 ほら、またモノローグに突っ込む。

 窓に視線を移す。
 くたびれた窓枠の向こうには、身震いしそうなぐらい青々とした空が広がっていた。
 散りかけた枯れ葉が師走の厳しさを現している。
 部室には暖房設備らしき物が何も無いけど、それでも廊下に漂うすきま風をしのげるだけ有り難い。
 侘びしい。どうしてこうなった。

「『どうしてこうなった』はこっちの台詞です。現実逃避してないで帰っていらっしゃい」

 ノーエスケープ。
 暴虐的な4人から逃げられないことを悟った私は、しぶしぶみんなの言い分を聞いてあげることにする。
 部室に雑然と置いてある机を1つ、椅子は人数分用意して対面する体裁を整えてみた。

 ちらりと一瞥し、「ではまずかなめちゃんから」
「うん」

 ちらりと一瞥し、

「弊社を希望した理由は何ですか?」
「単純に制服が可愛かったからです、って何言わせるのよ面接じゃない!」

 ノリツッコミで笑顔から怒り顔にスムーズに変えながら膝をバンバン叩くかなちゃん。

「むしろ聞きたいことが山ほど有るのはこっちのほうなんだけど! 自分だけダラダラ長く自分語りしておいて、私たちの紹介は1行で済ませるってどゆこと?」
「主人公とモブ、当然の格差だよ」

 ニッコリ笑顔でそう答え、瞳を開いてかなちゃんの様子を観察してみると……。

 般若が居た。
 違う、これはそれどころかえーと……現代の切り裂きジャックというべきかどうか。

「ひぃーっ! あなたとわたしトモダチ。だからコロサナイデクダサイ!」
「殺さないわよ! 友達を何だと思ってるの。てつひさ君も何とか言ってあげて」

 危険な雰囲気を察してか目をそらしていた面々の1人をむんずと掴み質問するジェ●ソンことかなめちゃん。
 すると当然こうなる。

 洗剤を食べたカニのようにぶくぶくと泡を吹いて気絶する犠牲者の出来上がりである。

「殺す殺さないの話なら、まずこみぽちゃんが酷いでしょ。勝手にお兄さん殺しちゃって」
「んー、そんな事言ったかな……あっ!」

 言ってた。
 ひょんな事から名探偵といわれたじっちゃんの息子と組織の薬で体が縮んだメガネ君の2人と同席した結果、誰もいないはずの密室で死んじゃったって言ってた。

「プロフィールを盛り上げたくてつい」
「ついで死んだことにされちゃ天国のお兄さんも浮かばれないよ。ったく」

 しれっとかなちゃんも殺してるし。

「それと、どんだけ自己主張強いのよ。『美麗で美しくてビューティフル』って全部意味同じだし、『誰からも尊敬される』ってなぜ二回言ったし」
「大事な事なので」
「ていうか5京円て国家予算何十年分だよ」
「政治に疎いので分かりません」
「これが面接だったら履歴書の時点で落としてるよ」
「面目ない」

 視線を落としながら反省しているフリをした結果、徐々にではあるけどかなちゃんの「激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム顔」が「おこ顔」ぐらいに収まったみたい。
 頃合いを見て残りのメンバーも口を出してきた。

「たまに間違える人もいるけど、シャクヤクとシャクナゲは全く違う植物だからね。それと、インテリぶって『ぺんぺん草も生えない』の逆を言ってみたんだろうけど、『ぺんぺん草が生える』という表現は褒め言葉でないばかりか『荒んでる』って意味だからまt──」

 出番のないキャラからの心底どうでもいいうんちくキター!

「『コミラー』って、『ア●ラー』や『シ●ラー』みたいで懐かしいわね」

 あんた何歳だよ越谷先生。

(中編に続く)