花になる祝福

ある館の記憶を見ていた。
明治時代からありそうな、赤い洋館だ。
広い庭には色とりどりの花と木が宿り、綺麗に手入れされている。

館主には、娘が3人いた。
末っ子は色んな人生を送った最後に、頭が花で、体は茎のような、それでいて人の形を持っている、花人間とでもいうような身体になり、幸せに過ごした。
末っ子がその後どうなったのか、私自身の記憶には無い。

私も、館の周りで遊んでいた。
それは楽しかった。目にも楽しい多くの植物でかくれんぼもした。
自身の記憶と、館の記憶を重ねて、幸せな気持ちになった。

実は、館には長女もいた事を、館の記憶が教えてくれた。
私はそれを知らなかった。
長女は、誰よりも早くに花人間になった。
自身の幸せを、すぐにでも留めておきたかったかららしい。
最初は、花としての自分を楽しんでいた。周りも、その姿に見とれていた。
しかし、館は言う。花人間は、いずれ9つの病を背負って、呪われた生き物になってしまう。

長女は、最初の異変として、首が直角に項垂れてしまった。
視界が悪くなり、まるで萎れたような姿は、周囲からも不気味がられた。
次に、激しい痛みが全身を蝕んだ。
痛みに呻きながら頭を項垂れる姿は、まるで幽霊のように見えた。

次に、視界がかすみ、全てが揺蕩って見えるようになった。
よろめきながら呻く姿は、更に不気味であった。
その後も、次々と病が襲いかかってきた。
しかし、長女は死ぬことも無く、呪いによってその命は保たれていた。
9つ目の病が来るまでは、苦しみ続けなければいけないからだ。

最後に、首を激しく振らざるをえない病がやって来た。
9つの病によって、呻きよろめき、背を丸めながらも激しく首を振る姿は、おぞましかった。
だから、長女のいる場所には誰も近づかなかった。
そしてとうとう、花は茎から折れてしまい、首を落として命を終わらせてしまった。

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