2ヶ月半ぶりの銭湯

2ヶ月半ぶりに銭湯へ行く。銭湯を好きになってから、こんなに足が遠のいたのは初めてだ。練馬区桜台の久松湯へ。以前来たときには露天風呂で常連らしきじいさんたちが、オリンピックはどうなるでしょうな〜と話していた。彼らは新国立競技場をしょうもないとも言っていた。

サウナ目当てだったけれど、ひとまず露天風呂に入った。体が芯から溶けていく感覚に落ちて、目を開けているのが難しかった。深い青空から柔らかい陽が射していて祝福だった。

久しぶりのサウナだし、「密」はなるべく避けたほうがよいご時世なので、1回7〜8分で出るようにした。ずいぶんと間が空いたので、汗をかきにくくなってるかと思ったが、しっかり発汗できた。銭湯までの道のりでそれなりに汗をかいたのが、まさにウォーミングアップになったのかもしれない。

久松湯の水風呂がいまいちばん好き。冷たいけれどやさしくて、ちょうどいい。

露天スペースで休んでいると、湯にトンボが落ちた。死にかけていた。浸かっていたおっさんが、両手で湯からすくいあげた。外に置いたが、また飛び立とうとして、湯に落ちる。おっさんは、再びすくいあげ、今度は自らも湯からあがって、植込みにトンボを放った。僕は植込みの縁に座っていて、瀕死のトンボと30センチの距離にいた。全裸の肌に死にかけのトンボが体当たりでもしてきたら…と思うと不快だったので、そそくさと浴室に戻った。再びサウナと水風呂の1セットを終え、植込みを見たら、トンボはもういなくなっていた。空でツバメが鳴いていたが、姿は見えなかった。

4セット目の外気浴時、濡れたタオルをしぼっていたら、ふやけた右手親指のささくれが繊維に持っていかれ、出血した。左手の指で、出血した親指を強くおさえてみたら、爪に沿って流れた血が一周した。ふと、不意に生理が来た瞬間、銭湯のお湯に浸かっていたら、どうなるんだろう、と思った。僕はそんなことも知らない。なんだか気もそぞろのままに、久しぶりの銭湯を後にした。

帰りのバスで何の気なしにTwitterを眺めていたら、「◯◯銭湯、営業再開してた。娘も気にいってるから一緒に行きたいの。来年にはもういっしょには入れなくなるし」という男性のツイートを見た。

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