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手と目

僕はいなかったことにされている。

タクシーの運転手はしきりに咳払いをしていて、一度それが気になりだすと僕は目的地に到着するまで咳払いの回数を数えてしまっていた。新宿に差し掛かったときにかなり渋滞に巻き込まれたのだが、程なくして車は動き出し、予定通りの時間にタクシーを降車した。
雑居ビルの前には野良猫がいた。
こいつには見覚えがある。

お世辞にも綺麗とは言えない雑居ビルの階段を上がり、3階の一番奥の部屋へと足を運ぶ。

「左右が反転してる」

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