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ようやく君は(境界)

右腕に汗疹ができた。
痒みが多少あるが、できるだけ掻かないように注意している。
傷やその痕をいじりたくなるのは人間の性であり、それは精神的な面でも同じように言えるだろう。

最初から決められていたように、僕は悲しむことをやめ、酩酊することを選んだ。8月になると僕は様々なことを整理しなければならない。それは誰かが僕の行いを待っているからだ。誰かは僕がきちんと整理できるかどうか、正しいものを正しい場所に戻せるかどうかを見ている。(僕は少々散らかしすぎたのだ)どうして8月なのかというと、僕にとっては最初であり最後であるからなので、匂いや景色を見るとどうしても繰り返されるから。(気づけばほら、また同じさ、繰り返される8月を)

船が陸の上に打ち上げられ、汽車は海へと沈んだ。やがて訪れる朝に、少しの酒と髪の香りを残して、その時間をできるだけ反芻し、微睡む姿に僕はまた頭を抱える。コーヒーが冷めて、感触を見失う。僕に残された手段は1つ。到底辿り着けない結論に、僕はよくやった方だとは思う。嘘が上手くなったんだ。君を生かす嘘は僕を殺す呪いになる。握った銃の記憶。燃え尽きた地図。コンクリートは雨に濡れて、人は堕ちていく。東京に降り注ぐ石灰。僕はこの地で、やはりこの地で決断をする。迎えにきておくれ。さようなら。

手紙をのぞいた僕は、冗談を言った。

君を夢で見たよ.

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