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欲望に忠実であることの美しさ。混沌バイオレンス女子高生キャットファイト漫画「美女で野獣」。

突然ですが、皆さんもこれ個人的に好きな漫画だけど絶対に万人にウケないから人にオススメしにくいなぁ〜って漫画が一つや二つや三つや四つはありますよね。
例えば僕が大好きな漫画である「殺し屋イチ」や「シグルイ」、「異種族レビュアーズ」なんて作品達は、オタクでもなんでもない人に読ませたら正気を疑われるでしょう
今回紹介する「美女で野獣」も割とそういう類の漫画です。

「美女で野獣」はイダタツヒコ先生によるアクションコメディ漫画。2002年から2006年まで月刊サンデージェネックスに連載されていました。主人公「一茜(いちもんじ あかね)」は古流武術「鬼首流」の伝承者。先代である父・源一郎が作った莫大な借金を返済するために同級生でヤクザの娘、中島克美が主催する地下闘技場のキャットファイトに出場する羽目になります。

1巻17P 鬼首流伝承者「一茜(いちもんじ あかね)」めちゃ強い

そして、地下闘技場には現チャンピオンとして君臨する最強女子高生「毒島リリカ(ぶすじまりりか)」が存在していました。

1巻37P 「毒島リリカ(ぶすじまりりか)」無流派の天才型

古流武術の伝承者である茜と、持って生まれた才能だけで頂点に君臨するリリカ、2人の運命の一戦が始まります。

1巻44P


1巻46P 

完全に舐めていた茜はリリカにボコボコにされますが、死に直面することで闘争の本質に目覚め、リリカに一矢報います。

堕ちたな……


お互いに胸倉を掴み合い、高笑いを始める2人。
闘争とは何か、暴力とは何か、喧嘩とは何か。
その本質を考えさせられる女子高生同士の血濡れの殴り合い。ゾクゾクしますね。
当然のことですが、欲望のままに暴力を振るう姿が美しくない訳がない

そう、皆さん何となくお察しのとおり、この物語はお互いに特大感情を抱いている暴力女子高生がひたすら拳で語り合う物語です。

  • 毒島リリカという女

この物語の主人公は一茜です。古流武術を一子相伝した天才であり、毒島リリカとの出会いによって初めて自身の「人を壊す」技術を殺人術ではなく格闘技として発揮することができて、格闘家としての血が目覚めます。
そしてそのステージへ上がらせてくれた毒島リリカにゾッコンです。
まぁ仕方ないですよね。
理不尽なまでに強くて美しい女の子を好きになるのは当然なので。

しかしながら、やはり目を引くのは毒島リリカという女の魅力。
先述したとおり、暴力の権化のような存在です。
流派に囚われず、自由で、やることなすこと滅茶苦茶の戦闘狂。普段は脳天気なパッパラ娘なのに、試合ではキレキレで華がある。しかもレズなので茜にゾッコンです。
初めて自分と同じステージで戦える強くて美しい女の子を好きになるのは当然ですよね。

特に好きなエピソードは物語の中盤のトーナメントでの一戦。
リリカと茜は決勝戦で戦う約束をしていましたが、茜の鬼首流に対抗するために生まれた流派「八津墓流」の伝承者、十文字 蒼一郎摩利 蜜姫(まりみつき)という感情薄めのバイオレンス女を刺客として送り込んできました。
摩利 蜜姫は執拗に目を狙うアウトローな戦いを仕掛け、茜は本来の古流武術の本質である「人を壊す」鬼首流の戦いをせざるを得なくなります。
茜は殺人的な武力を発揮し摩利 蜜姫をボコボコにしますが、闇堕ちし負の感情に囚われてしまいます。特大感情バディモノあるある、闇堕ちです。ありがとうございます。
茜は「もうここにいちゃけない。ここはもう私の闘う場所じゃない」と闇堕ちあるあるなセリフで闘技場を去ろうとしますが、当然ながら特大感情暴力女子高生毒島リリカの逆鱗に触れてしまいます。

4巻143P

そう、その闇堕ちした茜を暴力で光に堕とすのが、毒島リリカという女なのです。
「約束したから……堕ちるときは、一緒に堕ちるって」と心中前の文豪の彼女みたいなことを言いながら決勝戦に臨む2人。

4巻157P

闇堕ちし覚醒した一茜と毒島リリカの壮絶な殴り合いは必見です。
皆さんもオタク歴が長いので当然承知しているかと思いますが、例えば悟空とベジータ、ナルトとサスケ、なのはとフェイト、キュアピーチとイースなど、闇堕ちしている人間を光へ堕とし返すにはタイマンを張るのが一番です。
歯が折れ血飛沫舞う殴り合いをご照覧あれい。

  • 理不尽、バイオレンス、官能、ギャグ、百合

この漫画が何故万人にオススメできないかというと。
過激な戦闘描写とあまりに下世話なネタ、全体的な倫理観の無さ、狂人だらけのキャラクター、突拍子のない破茶滅茶な展開など、とにかく作者がやりたいこと、魅せたいことを詰め込みまくっているから。
格闘描写も鼻血が出るくらいは当たり前、歯が折れ、骨が折れ、目潰し、嘔吐、失禁と女子高生がやってはいけないことをほとんどやります。
そもそもキャットファイト自体がヤクザのシノギのため、ノーパン試合やコスプレ試合、スク水バトルロワイヤルなど、そもそもエロに寄った内容も多く下品。
基本的にギャグ的な描写だけど、人身売買や大麻栽培、AVに出演させられそうになったり、露出狂やストーカーと戦ったりと、基本的に全てが滅茶苦茶でパルプフィクションでも見てるような気持ちになります。
極め付けは終盤、突然日本が崩壊して世紀末状態になるというトンチキさ。
あまりのバカバカしさに訓練されたオタクでも「やってんなぁ〜」と気持ち悪い笑顔になります。

でも、それって素晴らしいことですよね。
「うわ、やってんなぁ〜」って思うこと。社会で生きてて感じる時って大体ネガティブな時じゃないですか?
でもこの漫画を読んでいる時は常にポジティブに、やっちまってんですよ。
我々が普段囚われてしまっている現代社会、倫理、常識。
そんなの関係ねぇ〜!!!人の本質はエロと暴力!!!って闇堕ちした小島よしおのような何かが我々の脳味噌に訴えかけているのです。
そんな野生の本能や、抑圧された欲望の果てのような漫画体験を求めている方、そして少女と少女の関係性や少女と少女の殴り合いが好きな方にはオススメです。
皆さんも結婚式で殴り合うリリカと茜の姿を見て僕と一緒にニッコリしましょう!


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