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アルトー、ある狂気の闊歩

ある強烈な狂気が20世紀前半のフランスを闊歩していた。 その詩は限りなく鮮烈、例えようもなく激烈で、また何より奥深くから噴出する振り絞る叫びであった。 眼前に立ちはだかる現実に常に裏切られては、その都度攻撃性を打ち出し、エクリチュールに、デッサンに、演劇にと、無数の表現様式を自在に駆使して自らの存在の根源的な可能性を問い続けた。同時代人に理解されることは皆無に等しかった。しかしその死後、今に至るまでの影響力の大きさは計るに難く、甚大だ。その存在の特異点に穿たれた痕跡は、時代の

    • 「幸せのかけら」ジョナス・メカス

      「幸せのかけら」  ~ジョナス・メカス『歩みつつ垣間見た美しい時の数々(As I was moving ahead occasionally I saw brief glimpses of beauty)』から~  「永遠なんてどうでもいい、そんなことは忘れて楽しみたまえ、そう、わたしたちはそのひととき、一瞬、そうした宵を楽しくすごした。それに、そうした宵はたくさんあった、たくさんあったではないか友よ、私は決して忘れない…」(メカス)  いつのまにかまどろみ、ようやく

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