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☆ライバルを封じた鞍上の戦術眼と驚かされた進路取り☆ ~阪神牝馬ステークス回顧~

こんにちは!ラプタスです。
今週より、注目レースにスポットを当てたレース回顧記事を書いていく事に致しました!
回顧記事では主に私自身が「レースのポイントだな」と感じた部分や「面白いな」と感じた部分、そして各馬の勝因や敗因などを様々な視点からアプローチしていけたらと考えております。
始めたばかりで、私が感銘を受けたような素晴らしい予想家さん方の文章に比べれば稚拙な文章ですが、少しでも面白いと思ってもらえたり、「こういう見方もあるのか」と興味を持って頂ければ幸いです。
前置きは長くなりましたが、以下本題に入りたいと思います。

さて、今回振り返るのは4/10(土)に行われた阪神牝馬ステークス。デゼルが勝利した1戦です。


この日まずポイントだったのは馬場状態。この日の阪神芝はとにかく速い上がりが出まくっていた。
6Rの内回り1200mでは上がり3F最速32.9を出したリプレーザが優勝し、上がり2位(33.3)のクインズセージが3着。
9Rの内回り2200mでは上がり3F2位(33.9)のエヒトが1着。ハナ差の2着に上がり最速(33.6)のカリンカ。
10Rの外回り1800mでは上がり2位(32.3)のスマートリアンと上がり5位タイ(32.5)のファルコニアが同着優勝。3着のコマノウインクルに関してはメンバー最速の上がり3F31.9というとんでもない数字を叩き出しており、これはこのメンバーどころか阪神競馬の歴史で見ても最速の上がり3Fの数字だそう。
ちなみに、先週の土曜日(大阪杯が大雨で雨のイメージが強いけど、土曜日は一切雨降っておらず馬場へのダメージ無しの良好な芝状態)と比較すると、内回りの芝で上がり3F33秒台の脚を使った馬はおらず、外回りの上がりも33.9のリーブルミノルが最速。
もちろんペースの違いもあるでしょうが、4/10の阪神芝がいかに速い上がりが出ていたかがこの比較からもわかると思います。

ここまで見て貰って芝の状態についてはおおよそ理解してもらえたと思いますが、もう一つだけ、読者の皆様には気づいてほしいことがあります。上記の6R・9R・10Rの結果がヒントなのですが....

そう!上記のレースでは上がり最速の馬と上がり2位の馬が全て馬券に絡んでいるのです!!
「上がり最速で追い込んだけど、前も止まらず掲示板にすら乗れなかった....」
そんな事が常の競馬の世界で、この現象はかなり特殊です(笑)
つまり、この日の阪神芝は速い上がりを使う能力=上位に来るための必須能力
ということが言えたと思うのです。
この認識を踏まえた上で、スタートから簡単に回顧していきたいと思います。


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スタート直後。有力どころでは緑矢印のリアアメリアと橙矢印のデゼルが出遅れている。特に、デゼルに関しては一番スタートが遅く最後方からになっています。
ところが.......

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スタートからおよそ20秒後。リアアメリアとデゼルの位置関係が完全に逆転しています。
これはスタートしてからデゼルの川田騎手がやや促して、リアアメリアの前を主張した事によるものです。川田騎手は元々リアアメリアの主戦騎手であり、彼女の特徴や能力を一番知っているジョッキー。なので、リアアメリアの「エンジンがかかるまでに少し時間がかかる」という特徴を逆手に取ることで、ライバルの動きを封じているのです。

「リアアメリアを自分より後ろに封じてしまえば、リアアメリアは自分より外を回して動くか、自分の後ろをついてくるしかない。そして、外を回れば距離ロスが大きく、後ろをついてこればリアアメリアはエンジンがかかるのに時間がかかるので、踏み遅れるだろう」

きっと川田騎手にはこのイメージが少なからずあったのではないでしょうか?
実際、このリアアメリアの前を取る動きがあったことで、川田騎手のデゼルがリアアメリアの動きを支配するという隊列の形になりました。
ライバルの背中をよく知っているからこそ、そのライバルの能力を封じることが出来た。リアアメリアの明確な敗因はゲートが決まらず、かつ、デゼルに支配されてしまった事。これが大きいと思います。自分からスムーズに動ける位置をもしリアアメリアが取れていたら結果はまた変わってきたのではないでしょうか?それをさせなかった川田騎手の戦術眼がただただ素晴らしかった。
そう思わせるほど、この川田騎手の序盤の動きは、レースの結果に大きく影響する一つのポイントでした。川田騎手、乗れてますね。お見事です。

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直線に向いたところ。橙のデゼルはリアアメリアの追い出しを遅らせた上に自身の進路確保も盤石。加えて、この日の芝は上がり勝負に強いデゼルにとってはお誂え向きの馬場状態。まさに盤石で、全てが噛み合っています。川田騎手にとってもほとんど思い通りのレースだったのではないでしょうか。

そんな川田騎手に唯一計算外があったとすれば、それは2着のマジックキャッスルの強さではないかと。

正直な話、僕自身もマジックキャッスルの強さは度肝を抜かれたというか...(笑)
それ位今日は強かったと思うし、評価を大幅に上方修正する必要があるとこの1戦を見て思いました。

というのも。もう1度先ほどの画像を見てください。青マジックキャッスルはこの時点では前に黄メイショウグロッケがいて進路が確保出来ていません。

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当然このまま何もしない訳にはいかないので、まず青マジックキャッスルは内に切り込み、桃エーポスとわずかに外に膨れた黒ギルデッドミラーの間を狙います。しかし、外に膨れたギルデッドミラーは態勢を整えようと鞍上の池添騎手が左鞭を叩いているのが画像からもわかります。ということは、どうなるか。

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当然こうなります。しかも、黒ギルデッドミラーが態勢を立て直しただけでなく、内の桃エーポスも外にやや寄ってきたので青マジックキャッスルは余計進路が狭くなってしまっています。こうなると仕方ないので、青のマジックキャッスルは再び外に切り返していくことになります。ちなみに、その間デゼルは周りに馬がいない大外で気持ちよく末脚を伸ばしていますね(笑)

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これがほぼ最終局面。結果、マジックキャッスルは進路を確保しました。そして記録した上がり3Fは32.4。勝ったデゼルを上回る最速の決め脚だったのです。

マジックキャッスルの進路どりを後で振り返ったとき、そしてその上がりが32.4という数字であることを認識したとき。僕は「この馬スゲェ!!!!」と思いました。同時に、「これはマジックキャッスルの評価を上方修正しないかん」とも思いました。

それは何故か。単純に詰まっていたから、という理由ではありません。私がこの馬を評価したい理由は「騎手の進路確保の動きにしっかりと応じ、内に外に切り返しながら上がり32.4の脚を使ったから」です。

これはどういうことか。例えば、人間が走っている時もそうです。前に水たまりなんかがあったりすると、歩いてるときなんかは直前で気づいたとしても簡単に方向を変えたりできますけど、全力で走っているときに水たまりが突如現れて進路をいきなり変える事、かなり難しいですよね!
この全力で走っている最中にあっちにこっちに進路を変える難しい作業をこのレースの中でマジックキャッスルは行っている訳です。
しかも今回の上がり32.4はマジックキャッスル自身で見ても、これまでで断トツに速い数字。その状態で、何度も切り返しながら、ノビノビと外から追い込んだデゼルよりも速い上がりを使い2着。

今日の馬場は上がりを使える馬が有利な外回りという、デゼルに最も適した条件下。その中で負けはしたものの、驚愕の進路取りで勝ち馬と同等以上の内容といってもいい2着は、デアリングタクトに迫った実力が伊達ではないことを改めて思い知らされました。
加えて、この馬は外回りでも内回りでも、右回りも左回りも問題なくこなせるオールマイティーっぷり。
自分はカレンブーケドールのファンですが、国枝厩舎のエースはもしかしたらマジックキャッスルなんじゃ?(笑)と思ってしまうくらい今回の走りは素晴らしく、先が楽しみな1頭です。今回のレースぶりはG1奪取の可能性を感じる、光るモノを見せた1戦でした。

最後にサラッと他の馬の回顧を。今回は自分からペースをつくるタイプではないけど、ある程度流れた方が持ち味をより発揮できるという馬が多かったように思うので、ほとんどの馬がこれから巻き返せると思います。4着のプールヴィル、5着のエーポス、7着ギルデッドミラー、10着メイショウグロッケはこのタイプで、もっと流れる短距離色の強いレースになれば巻き返せる公算が高いと思います。6着のイベリスに関しては自分でペースをつくるタイプですが、この馬は今日は馬場(上がりの速い馬=上位になる馬場)が合いませんでした。この馬も短距離色の強いレースで巻き返し。
3着のドナウデルタは和田騎手が持ち味をフルに活かした好騎乗で、内目から一脚を使うのがこの馬の形ですね!このうまも1400~1600の馬。
リアアメリアは後手に回ってしまったのが大きな敗因ですが、反面、好走レンジがかなり狭いのも事実。自分のペースで運ぶ必要があり、かつ小回りは大トビで合う印象が無いので、ワンターンの1600~2000かつ良馬場かつ自分から動けそうなレースというかなり難しい条件待ちです(笑)
今後も狙うときは狙って、消す時はバッサリ消したい馬。

結局こうして回顧を書いてみると、今回のレースは中距離色の強い馬>短距離色の強い馬で、とにかく速い上がりを使える馬が有利でした。

この傾向の中で行われる桜花賞はどんな結末となるのでしょうか?注目ですね!!!

以上、阪神牝馬ステークスの回顧でした!読んでくださった皆様、ありがとうございました!!

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