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ケンドリックに起用された北カリフォルニアのハードなギャングスタラップを読む。【後半】(SOB x RBE - "Paramedic!")

writer:@raq_reezy

前回に続いて、SOB x RBEを見ていきたいと思います。

前編はこちらをご覧ください。

SOB x RBEは、幼い頃からの友だちであるYhung T.O.、Lul G、DaBoii、Slimmy Bの4人で構成されるクルーです。

北カリフォルニアの出身ですが、アトランタの音にも影響を受けたギャングスタラップを製作しています。

『Black Panther』では、おそらくキルモンガーの荒んだ心を表現するためにケンドリックに招聘されたものと思われ、「MARVELも絡んでいて、ケンドリックの監修するアルバムだから、言葉の規制も厳しくて、イケイケのギャングスタラップは出来ないのだろう」と思いつつもケンドリックに会ってみると「頭に浮かんだものをそのまま表現してほしい」と言われたので、いつも通りのラップをしたとインタビューで答えています。

自分たちのやっている音楽で、ケンドリックのアルバムに参加することになるとは思っていなかったので、本当にすごいことだとも述べています。

ということで、引き続き、SOB x RBEのイケイケのギャングスタラップを見ていきましょう。

3バース目(DaBoii + Kendrick Lamar)

California nigga and I'm heavy in these streets
If you don't keep a pole how you ready when it's beef
(If you don't keep a pole)
Lil nigga think he cut, yeah, I bet the nigga freeze
If that nigga want me dead, I can't let that nigga breathe

【意訳】
カリフォルニアのニガだ、ストリートでがっつりやってるぜ
銃をいつだって手にしてなけりゃ、争いにどうやって備えろっていうんだよ
小物が素早く動いてるつもりだろうけど、凍りつくことになるだろうよ
俺を殺したいとあいつが望んでるなら、俺だってあいつを生かしてはおけない

ここでは、自分を殺そうとしている相手なら、先に殺してやるという、殺るか殺られるかのストリートの緊張感が伝わってきます。いつ争いが起こるか分からないので銃を手放すこともないと。

Want me gone, sent a shot, like the real kind
These niggas actin' like they tough when they real kind
Thumbin' through a 100 racks just to kill time
They got a nigga at the edge, but I feel fine

【意訳】
俺に消えてほしいんだろ、本物みたいに銃をぶっぱなしてやった
こいつらはタフなふりをしてるけど、本当はナイーブなやつらだろ
1,000ドルの束を100個、数えて暇つぶし
あいつらは誰かを追い詰めてる、俺は平静さ

ストリートのギャングぶっているラッパーたちに対して、お前たちは本当は優しいやつらだろと挑発しています。その前の「real kind」が「リアルな類の奴ら」なのに対して、まったく同じ「real kind」で違う意味にしています。

racksはお金です。お金についてのスラングですが、1 rackは1,000ドルを束にしたものです。これを10個集めると、10,000ドルでstackになります。ちなみにrackを1,000個でbibleになるそうです(笑)。聖書のように分厚いということでしょう。

But it come with this shit, I'm okay with it
If your man's to his last share a plate wit' 'em
One whole wood to the neck, it's an eighth in it
New baby chop, let it sing, it's a Drake nigga

【意訳】
だけど、この件なら、俺はオッケーさ
お前の男が死にそうなら、食事を分け合おう
マリファナを吸ってる。3.5グラムさ。
新品のドラコをぶっ放そう、ドレイクみたいに歌うぜ

「仲間が食うのに困っているなら、みんなで食える方法を探さなければいけない」と本人がRap Geniusで解説しています。

この4行目がすごく巧みな言葉遊びになっており、まずこの行ではDraco(ドラコ)という銃について語られています。

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これは、Chopper(チョッパー)という銃の小さいバージョンです。

なので、Dracoのことがbaby chop(ベイビー・チョップ)と表現されているわけですが、このbaby chop(=Draco)が火を噴く様子を、baby chopが「歌う」と表現し、さらにDracoからDrakeを連想して、「ドレイクみたいに歌うぜ」とラップしているのです。

A lot of shit on my mind make me think a lot
Why it's hard for me to smile? 'Cause I seen a lot
You ain't really in the field, you just tweet a lot
If we ain't on the same page, you can kick a rock, bitch!

【意訳】
たくさんのクソみたいなことで頭がいっぱい
どうして笑うのがこんなに難しいんだろう?
それは悲惨な現実をたくさん見てきたからだ
お前はストリートにいないだろ、たくさんツイートしてるだけだ
俺たちが同じページにいないなら、消え失せろ、クソ野郎!

たびたびストリートにおらず、インターネット上でハードぶっているだけのラッパーへの苛立ちが表現されています。

4バース目(Yhung T.O. & Kendrick Lamar)

4バース目はYhung T.O.が担当しています。

And I been really tryna keep the peace
But I'm a north Vallejo nigga, and I'm heavy in the streets
I was raised by my grannie and the gangsters
So at 8 I made the choice I'ma forever be a G, and

【意訳】
俺は本当に平和を保とうとしてきた
だけど、俺は北ヴァレーホの黒人だ、ストリートでがっつりやってるぜ
俺はおばあちゃんとギャングスタに育てられたのさ
だから、8歳のときには永遠にギャングでいるって決めたんだ

好んで争っているわけではないという内心が明かされています。この曲では珍しく、少しコンシャスです。小さい自分を育てたのは、親ではなく、ギャングだったと歌っています。もともと、カリフォルニアのカラーギャングは、黒人の自衛や相互扶助を目的とした組織から始まっています。

クリップスの成り立ちについて、スヌープ・ドッグが以下のように語っています。

唯一の目的は、ブラックパンサーの反映であったということだ。彼らは、子供達の面倒を見て、放課後のアクティビティを提供し、彼らに食事を与え、子供たちの手本となり父親の役割を果たした。
I don't really like to talk
I remember we was broke and I don't really like to walk, nigga
Now I ride around in foreign cars
And I put on for my team who was with me from the start, nigga

【意訳】
俺はおしゃべりが好きじゃない
俺たちは貧乏で、俺は歩くのが好きじゃなかった
今では外国製の車を乗り回してる
俺は最初から一緒にいてくれたチームのために着飾る

あまり社交的な人間ではないけれど、ここまで勝ち上がれたのは仲間たちのおかげであり、そのチームのためにこれからも戦うということが歌われています。

I don't play games, stitch lip, I don't say names
She want a dog, I'm a Great Dane
I got great aim, Ice Age on my damn chain
My momma told me keep a stash for the damn rain

【意訳】
俺はゲームで遊ばない、口を硬く結んで、仲間の名前を明かさない
彼女は犬を欲しがる、俺はグレート・デーンさ
俺の狙いは的確、チェーンは氷河期みたいにダイヤでキラキラ
俺のママは、くそったれな雨の日のためにヘソクリを残しておきなさいと言った

グレート・デーンは「優しい巨人」とも呼ばれる犬の種類です。

チェーンは氷河期だと歌っていますが、Iceはダイヤモンドでキラキラしていることの比喩でもあるので、氷河期みたいにキラキラしているという意味になります。

They ain't wanna see me win 'cause I'm black
So I pulled up in that all black Benz in the back
If you need someone to call, I'm the man for the task
You ain't standin' for the cause, meet the man in the mask

【意訳】
あいつらは、俺の勝利を見たくないんだ、俺が黒人だからさ
だから、俺はあの真っ黒なベンツの後部座席に乗り込む
もし仕事を依頼する相手が必要なら、タスクを頼むのには俺がぴったり
お前は原因のために突っ立ってるわけじゃない、マスクを被ったやつに会え

黒人だから、みんなが人生を勝ち上がることが難しいという現状について触れています。「マスクを被ったやつ」はブラックパンサーのことでしょう。

ということで

今回は2回に分けて、SOB x RBEの"Paramedic!"を見てきました。

ウェッサイっぽい曲もあったりと、表情が豊かなので、ぜひSOB x RBE、チェックしてみてください!

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