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ババア倉庫で三途の川をみる

巨大外資系蟹工船倉庫で週にほんの数回夜勤で働いている。


シフト日に物量減なので休んでもいいですよ、なんて日もあったり同じ派遣会社の他の倉庫が忙しければそちらに振替えたりで間が空いてしまったりしていた。なんなら他の倉庫に積極的に振替えていた。
そんなこんなでまだまだ新人のトレーニング期間中の身分である。

久しぶりに来てみると季節は進んでおり、暑い。
昔から暑さにめっぽう弱いのに最近は更年期なのか、若い頃は滲むだけで済んでいた頭の汗も容赦なく流れてくるようになった。

せっせと自分なりに仕事に励むも、やはり外資系のシビアさにより生産性を意識しましょうと序盤から水を差される。
そう、トレーニング中の身分なので毎回知らぬ間に柱の影から指導者に動きの一挙手一投足をチェックされているのだ。

・モニターに指示が出てから10秒で取る
(ミナヅキさんは13秒かかっています)
・脚立を上る時の足元確認を怠っている
・モニターを見過ぎ

…………他にも色々あったが受け止めきれていない。指導者により若干言う事も違うので迷いを生じたまま生産性向上を意識して人生で一番しゃかりきにやった。

食事休憩はぐったりして食欲がなく、売店でパナップを買って食べた。
「昔お母さんとお姉ちゃんとよく食べたな、昔はソースがハート型だったんだよね…今は色々ありすぎて家族みんな仲悪くなっちゃって…どうして私夜中にこんな所でアイス食ってんだろう…」
そんな事を思ったら少しだけ涙が滲んだ。

休憩明けもしゃかりきにやる。足元確認を怠らず脚立を昇ったり降りたり、下段のものはコレどうやって格納したんや?と疑問に思うほどみちみちに詰められていて全然取り出せない重い箱だったり、同じ箱に同じ品物の色違いが混在していてイライラ。こんなん10秒で取られへんやつの方が多い。
またいつ見られてるのかと思うと余計に焦る。(見られると緊張して全くできなくなるタイプ)

なんとか言われた数字を出したと思ったら本当はもっと上の数値を出してようやく外資系の基準だと言われる。
とにかくじゃんじゃん商品を放り込まなければいけない。品物だからと躊躇せず取っては投げ、取っては投げ……
これを9時間45分コンスタントにやらなければならない。

朝の5時過ぎあたりで熱中症なのか疲労なのか、立っているのがやっとでフラフラしてきた。しゃかりきに水分もほぼ取らずにやっていたのと食事も出勤前の夕方からアイスしか食べていなかったのが良くなかった。

体がフワフワしてきてすべてが他人事のようなトランス状態になってきた。
頭の中にキレイな風景が浮かんできた。
立っているのが精一杯だが無情にもロボット棚はこちらの感情などお構いなしにどんどんやってくる。その時初めてこの空間が無機質で異様な世界に感じた。
そのうちに感情は無そのものになり、ああ、これが三途の川か…キレイだなぁと思った。

まだ生きています。
そろそろクビだと思います。
無理っす


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