自動販売機

いつからだろう。
自動販売機の前で迷わずにコーヒーを買うようになったのは。

そういえば何でもない普通の品揃え。
お茶もスポーツドリンクもよく分からないエナジードリンクだってある。
変わらない並びの中で前はよく悩んでいた。
何が飲みたいのか特になくてぼーと見つめていることも多々あった。
それにコーヒーを買うなんていう選択肢はなかった。
苦手というか一度お腹を壊したこともあってそこから飲まず過ごしていた。

飲めるようになったのは君がふざけて押して出てきたコーヒーを
「私苦手だから飲んでね」と言ってきたのが始まりだった。
僕はコーヒーは苦手だけど君の前で「苦手だからいらない」なんて言えず強がって飲んだ。
それが年を取っていた事もあって「美味しい」と返した。
「好きでよかった。苦手だったらどうしようかと思った」と言ってきて強がって良かったと思えた。
そのお家までに帰る道でキスをして「コーヒの匂いがしてお父さんみたい。コーヒー飲んだ後のキスはこれが最後ね」と言われて笑い合った。

そこから僕は彼女と会わない日はコンビニでもカフェでもコーヒーを買うようになり、好きな飲み物の一つになった。

週に3日位は飲めない日があった日々から、今じゃ毎日飲めるようになりました。今日も一人で歩くこの道で君がふざけて押した自販機に僕はわざと選んで同じコーヒー持ってお家に帰った。

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