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「指導」という言葉への違和感

一人一台端末の利活用と若手教員の育成の課題が出てきている公教育ですが、ここ1ヶ月でどうしても気になる用語が2回もニュースになって出てきました。

それは「指導」という言葉です。

教育業界に関わるようになって、よく耳にする言葉になりました。最初のころはあまり気にならなかったのですが、現在のテクノロジーの進化や社会情勢の変化がある中で、今もなお出てくる「指導」という言葉への違和感に対して、衝動が抑えきれず自分なりに整理してみたいと思います。


1. 「指導」の歴史的背景と現代社会での違和感

「指導」という言葉は、従来、部下や児童生徒への教育や訓練の文脈で使われてきました。デジタル大辞泉では、ある目的・方向に向かって教え導くことと定義づけられています。

ある目的に向かって、知識や技能を持つ人が、それを持たない人に伝え、教えることで目標を達成することだと解釈していますが、これが過度に進むと場合によっては、情報の非対称性を利用した上下関係や師弟関係づくりにつながるのではないかというのが自分の考えです。

しかし、現代社会はテクノロジーの発展により、情報の非対称性は減少し、知識や技能の取得が多様な方法で可能になっています。
教育ダッシュボードや学習データを使う場合は、双方が同じ情報を扱うことになるため、そこを指導で解決させるのは宝の持ち腐れになるのではないでしょうか?

2. 社会変化と教育・職場環境の進化

テクノロジーの進化が進む中、教育や職場の環境も大きく変わりました。これにより、単に指導して、知識・技能を定着させるだけではなく、批判的思考、創造性、協調性といったスキルを育てる方向へとシフトしています。
その結果、一方的な情報の伝達よりも、双方向のコミュニケーションをとる割合が重要になります。このアプローチは、学び手を尊重することで、自ら学び、考え、解決する力を引き出すことが重要になります。
では、指導ではない他の方法は何があるのでしょうか?ここからは持論になります。

3. 仮説:ダッシュボードやデータを活かすのは「意味の解釈」と「納得解」

冒頭に示した一人一台端末の利活用と若手教員の育成を考えた時に大事になるのは「意味の解釈」と「納得解」になるのではないかというのが現時点の仮説です
・ダッシュボードやデータから何を読み取ることができたか?という「意味の解釈」
・「意味の解釈」が双方にとって合意形成できる「納得解」へとつながっているのか。
これらが組み合わさることで学習データや教育ダッシュボードが効果的に活かせるのではないでしょうか?
そして、そのアプローチが双方向のコミュニケーションにつながり、結果的に学び手を尊重し、自ら学び、考え、解決する力を引き出すことにつながると考えています。

補足:「指導」が適切で効果的な場面について

個人的に以下のような場面ではまだ、指導が必要だと考えています。

緊急度が高い技術取得や正確な手順や作業が必要な場面です。
緊急事態や危機管理に直面している場面では、素早いな行動が求められます。火災や災害時の避難誘導では、これまで経験値がある人による指示が生命を救うこともあります。このような状況では、「指導」のほうが適切で迅速な対応を促すために必要とされる場合もあるかと思います。
また、特定の技術や手順が厳格に守られるべき場面でも、「指導」が最も適切なアプローチとなります。例えば、医療や製造業の分野では、正確な手順の遵守が安全性と品質の保証に直結します。このような環境では、詳細な指示が必要とされ、そのための「指導」は必要です。

4.「意味の解釈」は無限大(ロウソクを例に)

意味の解釈はその人によって無数の可能性を秘めてます。またこのアプローチは実社会でも活かされています。
実際、意味の解釈によって新たな発見と価値ができた身近な日用品があります。

それは、ロウソクです。

産業革命が起きる前の「ロウソク」は部屋を明るくするものとして使われていました。しかし、電球やLEDが出てきたことで明るさだけでは役に立つことができなくなりました。

そこで、意味の解釈が行われます。「暗さを楽しむもの」「香りを楽しむもの」という解釈、そして世の中に合意形成されることで、これだけ電気が普及している昨今でも、ロウソクは存在しています。
このように、新しい意味の解釈が提案され、双方の納得解を作っていくことはデータ利活用していく上でも1つのアプローチになるのではないでしょうか。

しかし、私自身もデータと睨めっこしている時に、自分の知識を相手に教えたくなり、指導したくなる部分があります。
自戒を込めて「意味の解釈」と「納得解」というアプローチでコミュニケーションとりながら、どのように変容するのか探究をしていきたいと思います。

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