見出し画像

読書メモ——『KAPPEI』(若杉公徳)

▼こんど映画化される漫画、『KAPPEI』が家にあったので読んだ。下北沢のDORAMAで友人に買わされたまま、フィルムも剥がさずに放っておいたもの。わたしのイメージとは合わないものらしく、家を訪れた別の友人に「なんでKAPPEIがおまえの本棚に 笑」と言われたこともあった。

▼先に言っておけば、男子校とかで交わされていそうな下ネタが満載で、中には女性蔑視としか思えないものもあって、その点が今の男子高校生とかが読むと「古いな・・・」と思うかもしれない。しかし、非常に今っぽさを感じる物語で、映画化を決めた人はすごいな、と思った。

▼ここ数年、お笑いの世界で言われる「誰も傷つけない」「やさしいツッコミ」を想起させるギャグ漫画。ノストラダムスの大予言でやってくる「終末」に備えて特別に鍛え抜かれた勝平ら「終末の戦士」たちが、予言が外れたこと使い道がなくなり、起伏なき終わりなき日常を「週末の戦士」としてダラダラ生き直すというストーリー。

▼ギャグ漫画とはいえ、つい、キャラたちに備わった能力(戦闘力)を活かすようなストーリー展開を期待して読んでしまう。例えば、鍛え抜かれた自分を必要としないまったりとした世界を恨み、「ならばこの世界を終末に変えてやる!」と考えるキャラが出てくる。また、勝平が好きになった女子大生を同じように想う戦闘力高めのキャラも出てくる。しかし、この漫画はそういう対立構造を作っておきながら、「衝突」を描くことを選択しない。描いたとしても、非常に不真面目な感じでそうする。

▼力を複数おき、それらがぶつかるように仕向けながら、衝突をキャンセルする。その実現には独特のチカラが必要とされる。そんなこと考えたことなかったけれど、この漫画を読んで思った。特に連載の終盤に登場する女子大生を巡る「恋敵」と勝平の衝突の無効化のエピソードは、力技だと思った。緩衝力とでも呼ぼうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?