水資源問題の現状
■世界人口の4割が水不足に直面、水資源問題の現状と対策
地球は、その3分の2が水で覆われた「水の惑星」とも言われます。
しかし、直接飲み水や農業用水として使うことのできる淡水はごくわずかで、世界では多くの人が水不足による貧困や、劣悪な環境での生活を強いられています。
また、水資源をめぐる紛争も後を絶ちません。
■世界の水分布と水紛争
地球には約40億㎦の水があると言われていますが、このうち約97.5%は海水で、飲み水や灌漑(かんがい)にそのまま使える淡水はわずか2.5%程度です。
また、淡水のうち大部分は南極や北極の氷や氷河であり、地下水や河川、湖沼などの淡水は地球全体の約0.8%です。
しかもその大部分は地下水で、人が利用しやすい状態にあるのは地球の水全体のわずか約0.01%、約0.001億㎦にすぎない。
■世界で勃発する水紛争
この僅かな水をめぐって、世界では対立や紛争が古くから続いている。
日本は島国なのであまり実感はありませんが、大陸では河川で接する国同士、あるいは一つの国の中でも水の所有権などをめぐる対立・紛争が、2010年以降だけでも世界で大小450件以上発生しています。
中東、アフリカを中心に紛争やデモによる死傷者が出たり、そして武力攻撃に発展したりするケースも相次いでいる。
井戸に毒物を投入されるといった事件も度々起きているようです。
このような紛争が絶えない大きな理由は、地球上の水資源が極端に偏在していることです。
■水不足の現状
カナダやニュージーランドのように、1人あたりの水資源が豊富な地域もあれば、降水量の極度に少ない中東では、1人当たりの水資源はごくわずかに限られていて、人口分布の実態と水資源量の分布は大きくかけ離れている。
そして現在、世界で「安全な飲料水を継続的に利用できない」人は、世界全体で約6.6億人、地域別ではオセアニアで人口の44%、サハラ以南のアフリカでは32%にのぼってる。
また、トイレなどの基本的な衛生施設を継続的に利用できない人は世界で約24億人、地域別ではサハラ以南のアフリカでは人口の70%、オセアニアでは65%、南アジアでは53%と、改善傾向にあるものの、依然として高い水準にあります。
■世界人口の4割が水不足になる可能性
このような環境にあるなか、人口の増加に伴い、水の使用量は増加の一途をたどっている。
特に生活用水の使用量が6.76倍と急増している。
国連によると、今後世界の人口は2050年には約97億3000万人になると予測されている。(2015年で約73億5000万人、2021年で約79億5400万人)
そしてOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)の予測では、人口増加に伴う水の使用量は、世界全体で2000年から2050年の間に55%増加し、2050年には深刻な水不足に陥る河川流域の人口は39億人、世界人口の40%を超える可能性があるともされている。
気候変動もまた、水資源に影響を与える。
大雨、干ばつといった異常気象は、すでに水の利用可能量に大きな影響を及ぼしている。
そして、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル(世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織))
の、「第5次評価報告書」では将来予測やリスクとして、
・降水量の地域差が激しくなる
・ほとんどの乾燥亜熱帯地域において再生可能な地表水及び地下水資源を著しく減少させる
・水不足を経験する世界人口の割合及び主要河川の洪水の影響を受ける割合は、今世紀の温暖化水準の上昇に伴って増加する
といったことが挙げられています。
■世界の水不足と日本
世界の水不足として人口の増加や気候変動がありますが、日本も世界の水資源のバランスに影響を与えています。
大量の水を輸入している、というものです。
■バーチャルウォーターの大輸入国、日本
1990年以降注目されているのが、「バーチャルウォーター」の考え方です。
農産物や工業製品を生産するのには水を使用します。
その量の水を、農産物や工業製品を購入した人が間接的に消費したという考え方です。
例えば、トウモロコシを1㎏生産するには、灌漑用水として1800リットルの水を必要とします。
そして、こうした穀物を餌として牛肉を生産すると、牛肉を1㎏生産するのにはその約2万倍もの水が必要になる、という計算です。
日本は、食料自給率が低いこともあり、主に食料を通じてこうした「バーチャルウォーター」を大量に輸入している国です。
2005年に海外から輸入されたバーチャルウォーターは約800億㎥で、これは日本で使われる生活用水、工業用水、農業用水を合わせた年間の総取水量と同程度に匹敵しています。
つまり、国内で消費された食料、工業製品など全てを含めると、日本は本来であれば倍量の水を使用しなければならなかった、とみなすこともできるのです。
日本が一見、世界的に深刻な水不足と無縁に見えるのは、ある意味では海外の水資源に支えられているためです。
世界的な水不足についてだけでなく、日本の食糧生産の安定をはかる上でも、なんらかの形で解消していく必要があるだろう。
■日本の水収支と地下水問題
そんな日本でも、水資源の問題は存在しないわけではありません。
2016年に日本で使用された水の量は797億㎥が河川・湖沼からのもので、残り11%、89億㎥は地下水だそうだ。
地下水は、主に工業用水として有力な資源ですが、一方で工業化以降の過剰な取水で地盤沈下が進んでいる。
現在では、主要地域では地下水採取に関する規制で対策を測っていますが、地域によってはいまだ地盤沈下が進んでいるところもあります。
■水不足解消に向けた技術開発
世界の水不足の解消に向けては、様々な技術開発が進んでいる。
大型プロジェクトの一つとしては、ドバイでの下水再利用がある。
採用されているのは日本で開発された、「MBR-RO」という技術で、これはMBR(膜分離活性汚泥法)という、微生物によって、下水の汚れを分解し、そのあとROと呼ばれる膜でろ過し、人体に有害な微生物やウイルスを除去して水を浄化するというものです。
参考文献:
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