金銭的なダウンサイドリスクを減らす制度設計


スタートアップ、特にIPOを目指す会社さんと日々お付き合いさせていただいていますが、ここ数年でのトピックとして、

信託型ストックオプション (以下、信託SO)

の導入を検討する企業さんも増えている実感があります。


現に、Valuationzのサイトによると、信託SOを導入した状態で上場する企業も年々増えていることがわかります。
https://lnkd.in/gugdzijF


私のいるM&Aクラウドにおいて買い手企業として掲載いただいている、スーパーマーケット、ドラッグストアなどの小売チェーンがECを立ち上げるためのプラットフォーム「Stailer」を運用する株式会社10Xさんの設計思想が様々な企業の参考になるかと思います。

・10X社の信託SOの記事:https://lnkd.in/gNuyCe4T
・Stailer:https://stailer.jp/
・10X社のM&Aクラウド掲載記事:https://lnkd.in/gWf746Bv


大枠としては、「ダウンサイドリスク(想定外のことが起きた際のリスク)」をサポートするという思想のもと、下記のような制度を設計・導入されています。

・産前産後のサポートとして最大70万円支給
・育児のサポートとして認可外保育園利用の際に認可保育園との差額をサポート


当然、現時点での制度設計とその根底にあるダウンサイドリスクを減らすという思想なので、今後も不変であるというわけではないと思います。

それでも、

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「リファラル採用で1人紹介したらいくら」といったアップサイドの福利厚生は逆の発想なのでほとんど提示していません。
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といったことを記事の中で語っておられ、社としてのポリシーが明確である点が非常に良いなと個人的に感じています。



従来からある税制適格SOも有償SOも、発行時点でSOの付与数を決めるという硬直性がありますが、信託SOであれば評価制度と連動させて貢献度合いに応じて付与数を変えられる(後から決められる)柔軟性があるというのが私個人としては最大のメリットだと考えています。

一方、ある一時点で付与数を法的に決めてしまって長期でコミットして(まずは)上場まで一緒に走る、ということをポリシーとする企業に関しては税制適格SOや有償SOがマッチする可能性があります。


ここは、例えば10X社であれば、ダウンサイドリスクを減らすことを設計思想としているので、時間の経過に応じて発生する事象に対して動態的に対応することが制度設計における必要条件になるため、産前産後や育児サポート等の具体的な制度を導入されておられると考えられます。


そのため、

社としてのポリシーは何か?

を、対象市場・ビジネスモデル・望ましい組織構造・ビジョンなどから考えて、弁護士などの専門家と相談しながら決めていくことが重要です。

退職時にSOが失効するかどうかも企業によって異なっているので、スタートアップ企業の運営や転職においては是非正面切ってお訊きするのが良いです。

(このあたりを誤魔化す企業は社のポリシーとして歪みまくると思うので慎重に検討したほうが良いです。)

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