いちごミルク

いちごミルク

夜明けのほんの少し前、
15階からの都会の空

そこにもうすぐボクらの朝

東に向かって建つビルジング
空は若く、そして暗く、君は遠い

あの日、
初めての長い長いデートの夜
君のいちごミルクは
君とボクのいちごミルク

君の真っ赤なドキドキと
ボクのマシロな純情が
ぐるぐるぐるぐる混ざりあって

ボクらいちごミルク

ぐるぐるぐるぐる
ボクらピンクのいちごミルク

明日からしばらくお別れの日

いちいち、詩的すぎると
指摘しながら、君は私的な涙を落とす

ポロポロポロポロ
ポロポロポロリ

私の涙、枯れてないのね と
ポツリ

その雫はボクのソコに
ポトリポトリと刻まれて

大いに笑う おーいと笑う
泣きながら大いに笑うんだ

ボクらいちごミルク

最後の夜も
ボクらずっと、いちごミルク

だってさみしすぎるんだもん

うん、だから、いちごミルク

だって美味しすぎるんだもん

うん、ボクら、いちごミルク

今、空がピンク
そうだ
空もいちごミルク

君も遠くできっと見てる
空いっぱいのいちごミルク

浮き足だった昨日と
その時が迫る今日との間に
ほんのひととき

見上げて、
ほら、空がいちごミルク

胸いっぱいに
ボクらは照らされるのさ

大丈夫

これからもずっと
変わらず大好きなそれは
そこにある

僕らの甘いはじまり
僕らずっといちごミルク

美味しいね というボクに

止まらない涙で
味なんてわからないわよ

と嘆く、彼女

そのうつむいたキュートな顔を
あと20年は眺めるよ

もう、そんな顔はさせないから
これからはずっと
君の頬をいちごミルクに染めるから

たとえこの先、しわくちゃになって
ピンクの色が、うすくうすくなっても
真っ白が真っ白じゃなくなっても

ボクらきっと、いちごミルク
ずっとずっと、いちごミルク

早く一緒に飲めるといいな
ボクらのいちごミルク

ボクら、いちごミルク

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?