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03【プロポーズは突然に】

「もう大丈夫そうですか?
 では先生から結果の説明があるので
 ゆっくり着替えて
 診察室の前の椅子でお待ちください」

と看護師さん

這うようにして診察室の前に腰をかける

少しだけ心の臓が ドクンドクンし始める

「滝川さーん」

はいー 

診察室にはいると画像を見ている先生

「はい、お疲れ様でしたー、大丈夫ですか?」

ねぇねぇおもいませんか

ここで大丈夫ですか?と聞くのって
ずるいとおもいませんか?

どこをどうみても
こんなに言いたいことをいとも簡単に
ベラベラいいそうなムウでさえ

大丈夫ですか?と先生にきかれたら

「大丈夫です。。」になるよね
 なっちゃうよね!

ぜっっんぜん 

だいじょうぶちゃうわーーーーーーーー!!


「あ、はい。。。

 だい、、じょう、ぶ ですう」

(大丈夫感を極力おさえて) 

「でもね、よかったよ、病気、みつかったから」

きたーーーーまたきたーーーー 

なぞの見つかった宣言

おいおいおいおい

来るのか、これは来るのか、ついにくるのか。。

なぜか長年付き合ってる彼氏がやっと意を決して
スウェード生地のちっちゃいアレを
ポケットから出しパカっとして
ひざまずく時のような

”いよいよ感” というか ”ついに感”

「はい、これが喉ですねー、
 だんだんと食道におりていきますねー」

とマウスのくりくり回すところををくりくりして

次々と赤い身体の内側を見せられる

「あ、ありました、ここ、これ、わかるかなー
 ここにボコっとデキモノがありますね、

 はい、おそらくガブちゃんです」

え???? 

え????? 

あ????? 

あ????

「それもそこそこ大きくて
 食道の4分の1ぐらいを占めてますね。。
 だから食べ物が詰まる感じがあるんですよーー」

え???? 

あ???? 

ううううう??

こういうとき、人は 母音しか発さないんやなぁと
なぜか他人事のように考えたりする。

(母なる音か。。)

飛んだ意識を戻してみると

早い早い早い早い、ちょっと話の進みが早いよーー

いきなりのプロポーズですか、、

そりゃ、お付き合いも長いし、
そろそろかなぁというのもありますが、
そんなにいきなり、プロポーズ受ける前に
結婚式場も決めて、子供の名前も決めて
一緒に入るお墓も 決めてありますよーー

 っていうぐらい 早いよーーーーー

 おつちけ おつちけ、、、?

 おけつち おちけつ、、、?


いやいや あなた 落ち着け でしょうよ

 ここでパニックスイッチをOFF

 (いったん奥にいっとこ、な、な)

 戦闘モードにスイッチーーON

反撃開始ー!!!

 あきらかに 

 は?それがどうした、

”そんなことでは狼狽えませんよ私”モードで

 「あ、そうですか、ふーん(このふーんのニュアンス大事)、

 ガブちゃん、、、なんですね
 食道のガブちゃんって結構やばいですよね

  どうしたらいいですか? 
 どれぐらいやばいですか?
 切れるんですか?
 治るんですか?
 ステージとかどうですか?

  それともあれですか??」

 怒涛の質問責め
もうビビってるのを隠すためにで
出てくる出てくる
 まぁよくもこんなに次から次へにペラペラと、君〜

 「あーそれは僕は専門家じゃないのでわかりませんーーー」

 「あーそれも詳しいことはここではわかりませーーーん」

 なぬーーーー それはそうか、

わかりませんか、、、むむむむとなっていると

 「なのですぐ紹介状を書くので大きい病院にいきましょう
 腫瘍を胃カメラでつまんでるんで検体をしますから
 その結果でまた変わってきますし はい」

 あーーーそんなに急がないとやばいやつなのね

 もう。、明日が来るかもわからないやつかもしれないのね

死ぬの?死ぬの?
あたし、あした死ぬの?

 とパニックスイッチが入りかけるも再度、OFF

(もうちょっとまっててー)

 「このあたりだと千葉大学か千葉がんセンターになりますが
 どちらにするか任せてもらっていいですか?」

 はい、といいかけて

 えーっと、

 えーーっと

 ちょとまて、ちょとまて、おにいさん

 あかんあかん、ルウが駐車場でまってるのに 

あかんあかん
がんセンターに紹介状なんてかかれたら

 それこそ ガーーーーーーーーン やないの

 このタイミングでルウちゃんまで

 ガーーーーーーンってなったらあかんやないの

 それは絶対 あかんやなーーいーーーのーーーー

 と、いうのはお首にもださず、

 「千葉大でお願いします、いつも連れ合いがお世話になってるんで」

 ふーーー、、間一髪、
なんとか先延ばし作戦は成功

 「わかりました。では千葉大にいまから予約を入れてみるので
 すこし待合でお待ちください」

 ドアをスーっとあけた後ろ姿に向かって

 「でも、みつかってよかったですよ、このタイミングで」

 ですね、ありがとうごじゃいます。

(なんていえるかーーーーーー)

 「ですね、ありがとうございます。。。
 でも食道がんってやばいですよね。。。。
 間違いなくガブちゃんですか?」

 「はい、ガブちゃんであることは間違いないと思います」

 あーーーー

 あーーーー、さっき おそらくっていうのに

 あーーーー、”おそらく”をそっと消しちゃたじゃん、、

 (おそらく欲しい、、おそらくちゃん、行かないで。。)

 「確かに食道がんの”予後”は悪い傾向にはありますが、、
 いまは医学も進歩してますから」

 予後ってなに?予後って聞いたことあるような

 ないようなやけど ねぇねぇ、予後ってなに??

 もっといっぱいききたいことはあふれてきたけど
専門じゃない人にきいてもしかたないなと

戦闘モードのスイッチOFF

 胃カメラの後遺症にフォーカスを戻しドアを閉める

 その後、予約の件でもすったもんだありつつ
ゴールデンウィークを挟むためすぐの予約はとれず

5月2日に行くことになる

 いやぁ サプライズのプロポーズとかあかんよ

 それも あっさり すーーーーというのはあかんよ

 でも意外や意外、
本人は ガーーーーーーンとはならないものよ

 うすうすなんとなく気づいてるから

そして落ちるよりさきに
”ここからどうする?”モードに入ちゃうから

 というよりは胃カメラのつらさと喉の苦しさが勝って
そっちのスイッチを切れるという説も

 今回も長くなりました

 次は 駐車場でまつ ルウの元へ。。

 つづく。。。

 教訓
:サプライズは受け取る側の気持ちを考えてからにしよう
:激しい痛みがあっても他の痛みに意識を向けるとスイッチが切れる
:いまは、どの医師もあっさりと本人に告知をするらしい
↑ ショックはあれども本人にしっかり治療に参加してもらうため
:怖がらず、異変があったらすぐに専門医にみせましょう(マジで!)


ルウ’sコメント

ごめんね
1人で 告知される事になって…
ごめんね
千葉大を選ぶ事になって…
ごめんね
1週間も1人で 抱えさせて…

初めての運転免許更新に始まり 30年 なんでも一緒にやって来たのに…ごめんね

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