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綾瀬川溺死後

綾瀬川溺死寸前という九蓮宝燈主催のライブが4月28日にありました。
とんでもない空間だった。演者としても客としても、それはそれは大きな刺激を受けた。

九蓮宝燈とは今年の1月に下北沢daisybarでのブッキングライブにて初めて一緒になった。
第一印象は、音がデカいバンドだなと思った。彼らの奏でるキャッチーなロックンロールには勿論、激しく叩きつける1曲目(今回のと多分同じテレレレテレレレっていうギターリフが印象的な曲。音源化待ってます)のような側面には、特に強く惹かれた。
Vo.キチガイミサイル氏はMCにて、当時話題となっていた寿司屋の大将とインフルエンサーが揉めた事件について「俺は寿司屋の大将は悪くないと思う!!!」と絶叫言及したかと思うと、続けてこれまた訳の分からないくらい激しい曲をやっていた。

彼らの出順は1組目で我々は2組目。

これにビーフをしかけない訳にはいかないだろう。

俺はステージに立つと「寿司屋の大将は悪いと思う!!!生魚は悪!川魚しか信用してない!」などと散々な妄言を繰り返していた。

乱痴気外はライブを「牧歌」という曲で締めるのが慣例となっている。これは我々の曲の中でもとりわけ早く、ハードコアな曲(inspired by 押尾学)である。がむしゃらに飛び跳ねたりひっくり返ったり走ったりギタリストのエフェクターとアンプのツマミをめちゃくちゃにしたりした。ボロボロになりながらも謎の達成感を得てライブは終わった。

後日、九蓮宝燈Dr.童貞computer氏(メンバー皆名前どうなっとんねん)からメールが届いた。主催ライブへの出演依頼だった。我々、そして牧歌への愛に溢れたメッセージとイベントにかける熱い思いが、それはそれは長文で送られてきた。俺はそれを完全にスルーした。見逃していた。

乱痴気外Gt.松本氏の元へ出演依頼のDMが再度送られてきたらしく、申し訳ない気持ちでいっぱいの中メールを確認し、即答で出ますということになった。
何より、彼らの理想とする空間にこれまた強く惹かれた。
セミファイナルジャンキーに触発された、演者と客の境界線がないスタジオライブ。狂気。

これに出ない訳にはいかないだろう。

そこから我々は過去にない程、ライブに向けた過密な準備を初め、主に松本氏(メカに強い)を苦しめることとなる。松本氏も苦しい方を選んで案の定苦しんでいた。
制作中のアルバムから先行無料配布CDの作成、新曲作成、既存曲のリアレンジ、サンプラーという新機軸の導入などを、あーでもないこーでもないと各々作り込んでは、スタジオで集まって固めた。録音をして、ミックスを夜中までぶっ続けでやった。

そしてライブ当日、高円寺sound studio domのD roomという、ライブをやるにしてはあまりに狭くて丸腰な空間を見て呆気に取られてしまった。
そこからはずっとニヤニヤしていた。「ドア閉めず演奏すんのかい」「ドリンク代もないんかい」「フリーで4リットルのキンミヤがあるんかい」…など数えきれないほどの異常な光景に胸を躍らせていた。
1組目のeggmansが鳴らす轟音オルタナが商店街へ直通で流れていく様があまりにも可笑しかった。

2組目、我々乱痴気外の出番である。
演奏が始まると練習よりかなり早いビートを背中や左側から感じる。松本氏は2曲目からギターを抱えて客へ飛び込んでいく。俺は4曲目で椅子の上から何もない後ろにダイブして背中を痛めてギターを血塗れにした。
セットリストの後半、俺がギターを置いてピンボーカルで歌う曲が3曲続く。

その1曲目が、ライブに向けて作った新曲「モクリコクリ」
とても気に入っている。

イベントの趣旨や求められてるものに応えてみようとストレートなパンクチューンを作ろうと意気込んでいたのだが、俺がやるとどうもヘンテコなものが出来上がってしまう。メロディ自体は少ないんだけど、リフとアウトロでコードも全然違うし急にメロコアみたいなビートで駆け抜けたりする。私はそういう病気です。でもそれがなんか心地良かったりする。
今回配布したCDに収録されている喉ボコロックや牧歌のデモが入っている、昔作ったEPのタイトルが「なぞのばしょ」で、訳もわからずとも今をどうにかしてやる、ってイメージでその名をつけたんだけど、モクリコクリの歌詞は同じ「なぞのばしょ」ってワードから始まってて、その先…というよりも存在しない過去のことを歌ってる。そうなっていった経緯は色々あるのだが、これまた長くなるので割愛。
勿論今も「なぞのばしょ」にいるから喉ボコや牧歌もやるんだけど、よりインスピレーションが広がったってことだと思う。知らんけど。

でも、そんなことはどうだってよかった。俺は
勿論客に飛び込んでいく。キチミサや満漢全席Gt.みかんちゃんがこっちに迫ってくるのでドロップキックでそれを返す。靴やマイクスタンドを客に投げつける。再び人のギターを奪ってアンプをフルテンにいじってノイズを出す。人がミルフィーユ状に重なる。歌詞なんてあってないようなものだった。ボーカリストとは最低。この空間に起こっている現象は最高だと思った。
肉体的なコミュニケーションがとても新鮮だった。彼らは演者でありながら今この瞬間を客として楽しんでいたし、演者である俺との境界が完全に崩壊してるのは痛快だった。
いつも以上に疲弊してライブを終え、お互いを称え合った。初めて会う方々からも肯定的な言葉を沢山かけていただいた。

しかし、テーブルに置いていた無料配布CDの山があまり減っていない。これは由々しき自体である。
ライブの熱気が冷めやらぬ俺はお客さんへの威圧・恫喝を始める。
「タダゆうとんじゃけえ持っていけや」「いらんのか?貰っていくぐらい別にええじゃろ」などと、封印されていた岡山弁が顔を出して大声で叫ぶ。何人か心優しい方が手にとってくださる。今思えば単なるお客さんへの甘えなのだが、これだ!と拍車がかかり、どんどんロビーを練り歩いていく。階段にも何人か座っている人がいたのでCDを持って恫喝しようとしたら、上のフロアで催される別のイベントのお客さんが入り混じっていることに気づく。「どこまでがどの客やねん、わからんがな」と俺の掠れた声がこだまする。

CDは終演後に無事全て渡しきることができました。皆様失礼いたしました。そしてありがとう。でもきっと素敵なものに仕上がってるはずなので是非聴いてみてください。我々の初めての音源です。

自分のライブが終わってからは1人の客として楽しむだけだ。

満漢全席。彼らもジャンルレスな不思議なライブをやっていた。Vo.阿弥陀クジオさんの声は1ボーカリストとして羨ましいです。あんな風に歌えたら気持ちいいだろうな。

自爆。いかにも仰々しい見かけと殺伐としたストレートな歌詞。ロックンロール・パンク丸出しの爆音での演奏。客のボルテージも一気に上がって盛り上がる。こういうバンドはいつの時代にも絶対に必要だと思うし、それを背負っていくという覚悟を感じるライブだった。

おそロシア革命。遠方から来て初めての東京でのライブだと言っていたが、沢山のお客さんに支持されていて凄いなあと思った。音源のローファイな雰囲気とはまた違って、音で腹と頭を殴られ続けるような経験をした。この時点でフラフラである。

トリ、九蓮宝燈。泥酔状態のキチミサ氏は演奏前から血塗れである。客への殺害予告を繰り返した後に爆音が響き、客はめちゃくちゃに暴れ回る。俺は何回か人の波に引き戻されたが、その度に食らいついて最前近くまで波を掻き分けていく。叫ぶ踊る跳ねる。あの頃よりもずっとヘヴィでパワーアップしているように感じる。何よりお客さんのボルテージの高さには演者としての嫉妬すら覚える。その波に飛び込んでは流されていくキチミサ。そしてひっくり返って着ていた松本氏デザインのTシャツに男の勲章を塗り付けていく。ライブの後半には音源として配信されている曲を披露していた。「池袋出禁」「UMEWARI」はもはや我々のアンセムとなっていた。シンガロングが起こり、至る所から拳が突き上げられる。
散々もみくちゃになった後に本日の出演者が順に呼ばれてフリースタイルを披露する流れとなった。俺は色々頭を捻りながらラップしようと思ったけど途中でどうでもよくなって「九蓮宝燈ありがとう!!!」と叫んだ。もうそれが全てです。

打ち上げでは出演者一人一人とじっくり話す機会があった。
九蓮宝燈に感謝を伝えると、相変わらず「牧歌大好きなんすよ」と言ってもらえて、やってよかったなあと思った。
クジオさんやみかんちゃん、日記ちゃんも凄く感じのいい素敵な方で面白かったです。
おそロシア革命のお三方は腰が低くて、でも気合いと自信満ちた顔をしていて、歳下なのに歳上に見えるなあなんて、ジジイみたいなことを思ってしまった(当方24歳)。
あと打ち上げだけ来た仁さんや撮影をしてくださった金子さんともナゲットをつまみながらお話ししたけど、隅っこの方でコソコソ話すあの空間も楽しかった。
自爆Vo.ササキさんは松本氏の人民服にえらく食いついて、「かっこいい」「着て写真撮らせてください」みたいな感じで凄くチャーミングでした。

ライブが終わってからも余韻が続いていて、ずっと引きずっています。九蓮宝燈は我々の比にならないくらい、そうなっていることでしょう。相当な苦労の中、これだけ素晴らしいイベントを成功されたということに尊敬しかないし、そこに混ぜてくれたことに改めて感謝します。

ライブ後の反響も今までよりもずっと多くて嬉しいです。この期待や愛を受けた上で、我々もより凄いものを作っていかなければという気持ちです。

あと、「乱痴気外」というバンド名、最初はどうかなーと思ったけどインパクトあって覚えてもらいやすいし、名は体を表すって感じで馴染んできたな。直前まで「冥府刀」にしようと思ってたけどそっちよりマシだったかな。

そんな感じでGWの予定はもう大してありません。燃え尽きつつも徐々に生活へ帰っていくのです。

皆さんまたどこかで。

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