見出し画像

厚顔無恥なので『チキン・ラン』の戦術解説をします~四章:数値で考える『チキン・ラン』~

一章:ゲームの本質と序盤の方針
二章:イベントカード解説
三章:交渉テクニック集
★四章:数値で考える『チキン・ラン』

【この章のポイント】
・初手にくるニワトリの数から立ち回りを考える
・平均値は8.6、中央値は8である

閲覧ありがとうございます。ボドゲ工房Rのランブンです。本章ではラウンド開始時の手札のニワトリ数から、相手が持っているニワトリ数を推測するためのデータを公開します。『チキン・ラン』は状況の変化が激しいゲームですが、具体的な数値データを持っていればその試合の方針を決める手助けになるはずです。

なお、今回のデータはボードゲームオンラインセッション支援ツール『ユドナリウム』を用いてデータを出力しています。

【ユドナリウムのURL】
https://udonarium.app/

それでは本題に入ります。


ラウンド開始時、手札にあるニワトリ数の分布データ

まず、ラウンドが始まったときに手札のニワトリ数がどの程度になるのかのデータを見ていきます。なお、今回は5人プレイを想定しており、検証データ数は1250です。

画像1

横軸が初手のニワトリ数、縦軸が1250人中何人がそのニワトリ数だったかです。例えば初手のニワトリ数が8だった人はおよそ140人(=約11%)という見方になります。また、オレンジ色の線は初手のニワトリ数の平均値(=8.6)を表しています。なお、中央値は8で正規分布(平均値付近に数多く集まる分布)であるといえます。
このことからラウンド開始時、初手のニワトリ数は中央値前後になる確率が高い(7~9になる確率が約30%)ということができます。なのでまずは初手ニワトリ数が7~9になった場合を考えながらゲームを進めていけばよいかと思います。
また、平均値が8.6であるため交渉を行わなければ3ラウンド目には破産してしまうということができます。これはゲーム開始時の所持金が20クッカであるためです。『チキン・ラン』は多くの試合で3~4ラウンド行いますので、流れに身を任せているだけだと負けてしまう確率が高いということができます。
データの分布としては非常にシンプルで扱いやすいものなので、是非とも頭に入れておきましょう。

初手のニワトリ数別の相手のニワトリ数分布データ

次は、自身の手札のニワトリ数別に相手のニワトリ数がどのように変化するのかを見ていきます。

画像2

まず、初手のニワトリ数が2~4だった場合の相手のニワトリ数です。横軸が相手のニワトリ数、縦軸がラウンド中にそのニワトリ数の人が何人いるかの平均の値です。例えば自身が初手ニワトリ数2~4の場合、ニワトリ数が6である相手プレイヤーはそのラウンドに平均して0.4人いるということができます。(もっと砕けて言うなら、この条件なら一人は5~7辺りのニワトリを持っているプレイヤーがいてもおかしくないということ)
さて、このグラフから初手が2~4の場合、自分はほぼニワトリ数最下位であるということができます。まれに自身と同数のプレイヤーもいますが、かなり低い可能性であるといえるので、使えるならパスを使うとよいでしょう。パスを使用せずチキン野郎を回避しようとする場合、ニワトリ数5~7のプレイヤーが一人はいてもおかしくないため8以上のニワトリを目指す必要があり無理を強いられる可能性が高いです。

画像3

次に初手が5または6だった場合のグラフです。このときもやはり自身が最下位である可能性が極めて高いと考えて動いたほうがよさそうです。チキン野郎を比較的安全に回避するボーダーも先ほどと同様ですが、こちらの場合はすでに5または6ニワトリを持っているので状況に合わせてパスと他者からのニワトリ購入を使い分けるといいと思います。

画像4

次に、初手が7または8だった場合のグラフです。これだけニワトリを持っていれば、一人くらいは自分よりニワトリ数が少ない人がいるということができます。ただ、この条件の場合相手のニワトリ数の分布が緩やかであるため、相手がどの程度ニワトリを所有しているか分かりにくいということができます。ただ、ラウンドが開始しても場が動かない場合は相手も同じようなニワトリ数である可能性が高いため、あえて強気に出てトップを取りに行く動きが強いと考えられます。このあたりのニワトリ数は交渉を行わないと受ける損失が大きいので、積極的に動いていきましょう。

画像5

次に、初手が9~11だった場合のグラフです。これだけ持っていると自分よりニワトリが少ない人が3人程度、同じくらいが1人、自分より多い人が1人いるかいないくらいといえます。これだけニワトリを持っていると(明確にトップを狙っている人がいない限り)ニワトリを売りつけることが難しくなってくるので、この場合は腹をくくってトップを狙いに行くといいと思います。逆に明確にトップを目指す人が現れた場合は潔く道を譲り、その人にニワトリを売りつつチキン野郎を回避するのがセオリーになるかと思います。チキン野郎回避のボーダーも6くらいまで落ちているため損失を抑えやすいかと思います。また、仮に安全な進行をとって8ニワトリ持った状態でラウンドを終了してもそれまでにいくつかニワトリを売りさばけているはずなので、トータルの損失は小さいということがいえます。最初の方針だけ難しいですが、低リスクで動く場合は難しくない初手のニワトリ数といえます。

画像6

次に、初手が12~14だった場合のグラフです。この場合はほとんどのケースで同数以下なので積極的にトップを取りに行きましょう。9~11帯のプレイヤーが攻めてくる可能性がありますが、こちらが一度強気を見せれば降りてくれることが多いと予想されるので気にせず行きましょう。注意点としては、まれに自身よりニワトリ数が多い人がいること、そして「下剋上」を使われる状況だと積極的に攻めたときに致命傷を受ける可能性がある点です。どちらも即敗北につながるので、この点には意識して動きましょう。

画像7

次に、初手が15~18だった場合です。グラフを見る限り確実に自分がトップであるということができます。このあたりのニワトリ数はデータ数が少ないため信用度の低いグラフではありますが、これだけ持っていればトップ濃厚であるということは間違いなさそうです。仮に18ニワトリなら「下剋上」で「6」を一枚落とされてもニワトリ数12であり、ほとんどのケースでトップをとれるので悠々と立ち回ればよいかと思います。当然「大混乱」が存在するため、トップ濃厚だからと言ってむやみにニワトリを買わず、トップを狙ってきた相手と同数程度のニワトリ購入に抑えること動きが低リスクであるといえます。確率的に初手でこのパターンは少ないですが、ニワトリ数15がトップ濃厚のボーダーラインであることは覚えておいて損がないと思います。

最後に

いかかでしたでしょうか。今回はイメージではなく数字を用いて戦略を考えたため、有効な場面や再現性が高い情報だったかと思います。もちろん、このデータが知れ渡ればその裏をついた動きが出てくるので常に考えを更新しなければなりませんが、それでも『チキン・ラン』を遊ぶ上でかなり参考になる内容であったと思います。
さて、このシリーズは本章で最終章となります。4記事に分けて様々な戦術解説を行ってきましたが、最終的には『チキン・ラン』は短時間かつシンプルなのにここまで考えられるゲームなんだということが伝われば幸いです。

最後になりますが、このような自作ボドゲの戦術解説を最後までお読みいただき本当にありがとうございました。今後も『チキン・ラン』をはじめ様々なボードゲームを世に出していきたいと考えているので、応援のほどよろしくお願いいたします。

PS データ集めはおよそ8時間ほどかかりました。解析の知識があればこんなに手間がかからなかったはずなのに……。

【広告】
ボドマートにて『チキン・ラン』出展
【URL】
https://t.co/vwpUTOImCk
多人数短時間(4~7人、20分)、自由な交渉とシンプルな数比べ
キャッチコピーは「―破産か、罵倒か―」
2020秋ゲームマーケット
『B級映画制作委員会』出展決定
多人数軽量級(3~6人、10分)、リレー式大喜利ゲーム
キャッチコピーは「限られた予算と時間の中で『俺達の最高傑作』を作れ!」
『Mole in the Cult』出展延期
旧名:カルトとモグラ
多人数中量級(4~8人、60分)、じっくり遊べる正体隠匿系ゲーム
キャッチコピーは「裏切者には粛清を」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?