見出し画像

ランブン雑談・ボドゲ編 その6 モノの価値、ヒトの価値

閲覧ありがとうございます。ボドゲ工房Rのランブンと申します。
今回は『B級映画制作委員会』を制作の上で生じた「クリエイターに対する報酬の考え方」の私とクリエイターとの差異について書いていきたいと思います。報酬に対する考え方は幅が広く、過敏になりやすい話題であるとは思いますが、ゆるーく読んでいただければと思います。
また、事情により一部詳細が載せられませんがその点はご了承ください。
それでは本題に入ります。


『B級映画制作委員会』のイラスト

イラストの価格の話をする前に、まずは『B級映画制作委員会』の各種イラストを見ていただきたいと思います。

画像1

カードのイラスト

画像2

キャラメル箱のイラスト

当然、イラストが完成する前に値段の交渉は行っているのですが、発注段階でこのレベルのクオリティを求めていました……嘘です、想像以上のモノができました。が、同時にこのレベルで仕上げてくれるという信頼があったのも事実です。
なので、ここから先の内容はこのイラストクオリティを前提に読んでいただければと思います。


イラスト依頼者としての私の立場

『B級映画制作委員会』を制作するうえで、イラストの値段計算は重要課題でした。というのも、この作品はイラストが豊富(40種類以上)かつ重要(テキストなしの大喜利ゲーム)であったため、ゲーム制作におけるイラストの重要度の比重が大きかったためです。イラストのクオリティを高くしなければゲームとして成立せず、イラストの価格を抑えなければ作品の値段が高くなってしまうという、出展を見据えると非常に難しい運営を強いられる状況でした。なので私の立場としてはイラスト受注者に対し、クオリティは求めつつ値段を抑える交渉をしなければならない立場でした。


私が考えるクリエイターへの報酬・モノの価値

イラストを発注するにあたって、まずは自身で値段の概算を出しました。その結果は以下の通り。

51種(イラスト数)×1000円=5,1000円

これに説明書やキャラメル箱、ポスター、チラシなどを含めて凡そ6万円で交渉しようと考えていました。

イラスト1枚1000円という価格は、他のイラストレーターに発注した場合と比較して概算を出しました。具体的には某絵描き屋を参考とし、それと同額であれば最低金額としては問題ないだろうと考えました。個人としては某絵描き屋さんよりイラスト担当(夜夜中氏)の方がクオリティが高いと考えているのでもう少し高い値段設定を行いたかったのですが、こちらにはこちらの事情がある以上これより高い値段を提示する必要はないという判断を行いました。
また、この値段で抑えられれば原価に加算されるイラスト料は

6,0000円÷100箱=600円

となり、どうにか赤字にならないような値段設定を行えるといういわば出展を成立させるギリギリの依頼料でもあったため、まずはこの値段で交渉を行おうという考えもありました。

つまり、私はモノ(イラスト)そのものの価値によって値段を決めるというのがクリエイターに対する報酬として適正であろうと考えました。よく時給換算で計算する方法があげられますが、それはあくまでクリエイター側が価格を決定するときに使用する方法であり、金のやり取りがある以上他のモノとの相対評価をせざるを得ないというのが私の考え方でした。


クリエイターが考える報酬・ヒトの価値

実際にイラストを発注するとき、まず全体の内容量や雰囲気、求めるクオリティなどを伝え、その後受注者から価格を提示してもらいました。つまり、相談段階ではこちらの希望額は出さなかったということです。ここで相手からの提示金額が6万円より大きくかけ離れていればその時点で破断、少し高ければ交渉、安ければ提示された金額で発注しようと考えており、こちらの希望額は提示しませんでした。

そして、受注者からの返答が来ました。その回答をみて私は思いました。

概算よりはるかに安い

詳しくは受注者の今後の値段交渉に支障をきたす可能性があるため書けませんが、某絵描き屋さんの価格で計算したのが馬鹿らしくなるくらい安かったのです。先にも述べたように私は1枚1000円でも安いと考えていたため、相手の提示した値段には驚きました。

では、何故そのような値段になったのでしょうか。それはヒト(クリエイター)としての価値(知名度)が世間的に低いからとのことでした。
某絵描き屋さんは日本で一番有名といっても過言ではないほど、最近では世界進出まで目指せるほどの知名度をもっています。このようなクリエイターには値段が少々高くても仕事が舞い込んできます。逆に知名度の低いクリエイターはそもそも依頼される仕事量が少なく、値段を高くすると依頼される可能性が減ってしまいます。もちろん実力がなければ仕事はこないのですが、値段を考えるにあたっては実力と同じ、またはそれ以上に知名度が大切であり、今回受注したクリエイターは知名度が低いため値段を下げざるをえない状況だったというわけです。つまり、仮に全く同じ絵だったとしても、それを描く人物(の知名度)によって価値が変わるという考え方のもと、このような安い値段での受注に至ったというわけです。


最後に

今回の考え方の差異は、決してどちらかが正しいというものではないと思います。発注する側が「あなたの知名度は低いから値段を下げる」というのはおかしな話であるし、逆に受注する側は自身の知名度を絡めて値段設定を行わないと依頼を勝ち取れないというのも事実だと思います。けれども、個人としてはその人の知名度に関わらず「完成されたものに対して等価の報酬が支払われる」というのが理想的な姿であると思います。何故ならそれが、消費者にとって最も有益であり、クリエイターにとっても理不尽を被らない状況であると言えるからです。

しかし、SNSなどが発達し情報を発信しやすくなった現代においても知名度の格差は依然として存在、いや、むしろ広がってしまったようにすら感じられます。情報を発信しやすくなったとしても知名度が重要であると証明されつつある現状を鑑みると、どれほどテクノロジーが発達したとしても知名度による有利不利は未来永劫無くならないと考えてよいでしょう。

そのような現実があることから、モノを販売するうえで知名度を高める、つまり広告戦略は非常に重要であるということがいえます。今まで薄っすら理解はしていたものの、自作ボドゲの出展やイラスト発注を通して知名度の重要性が身に沁みました。理想は知名度0でも良いものが売れる世界ですが、いつまでもワガママは言っていられないと改めて考えさせられました。
逆に、必ずしも「知名度が高い=良いモノ」ではないということもしみじみ感じ、これから何かを買ったり依頼したりするときも、常にこの考えは持っておかなければ知名度の誘惑に負けてしまうと感じました。これからは消費者としても制作者としても、知名度と向き合っていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。今回は少し過敏になりやすい話題でしたが、この記事をきっかけに様々な議論があがっていただければ幸いです。今回は2つ(厳密には3つ)の報酬に対する考え方をあげましたが、これ以外の考え方があればコメントしていただきたいと思います。

【広告】
ゲームマーケット2020秋
『チキン・ラン』出展決定
多人数短時間(4~7人、20分)、自由な交渉とシンプルな数比べ
キャッチコピーは「―破産か、罵倒か―」
ゲームマーケット2020秋
『B級映画制作委員会』出展決定
多人数軽量級(3~6人、10分)、リレー式大喜利ゲーム
キャッチコピーは「限られた予算と時間の中で『俺達の最高傑作』を作れ!」
【紹介動画(YouTube) URL】
https://youtu.be/m1iDNyYKa1w

『Mole in the Cult』出展延期
旧名:カルトとモグラ
多人数中量級(4~8人、60分)、じっくり遊べる正体隠匿系ゲーム
キャッチコピーは「裏切者には粛清を」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?