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ランブンの守備的ゲームデザイン~四章:最下位いじめ~

目次
序章 負の経験の排除
一章 プレイヤー負荷
二章 キングメイク
三章 運ゲー、記憶ゲー
★四章 最下位いじめ
五章 ヘイトコントロール
六章 ソロプレイ感と過干渉
七章 協力ゲームでのラジコン

【この章のポイント】
・最下位を決めるゲームは避けた方が良い
・以下の点を抑え細心の注意を払いながらシステムを作る
①ゲーム時間を短くする
②複数人が同時に不利な状況になる、また最下位の精査ができないようにする
③短いスパンで状況(リソース)をリセット
④特定のプレイヤーを妨害しにくいシステム
⑤最下位が一瞬で確定する、またはゲーム終了まで最下位が不明

閲覧ありがとうございます。ボドゲ工房Rのランブンです。今回は少しマニアックな“最下位いじめ”について記事にしていきます。内容としては発生確率が少なく記事としての優先度は低いです。しかし、私が発表した『チキン・ラン』というゲームは最下位を決定するゲームであり、何故このようなゲームを作ったのかについても記事にまとめたいと考えたため書かせていただくこととしました。『チキン・ラン』をプレイしたことが無いと理解しづらい部分もあるかとは思いますがそこはご了承していただけたらと思います。

それでは本題に入ります。結論からいうと

最下位を決めるゲームはやめた方がいい

と考えています。逆に最下位を決めるゲームを作る際は“負の経験”に細心の注意を払う必要があるということです。最下位を決めるゲームを避けるべき理由は、意識してゲームデザインを行わないと“最下位いじめ”が発生する可能性が高いからです。
最下位を決めるゲームでは、プレイヤーは自身より状況の悪いプレイヤーを蹴落とすことを考えます。すなわち、最終的な盤面は「最下位VSその他多数」という構図となることが想定されます。最下位はただでさえ不利な状況なのにさらに不利な状況へと追い込まれ、逆転もへったくれもないゲーム内容となってしまいます。負けている状況でさらに多数から攻撃を受けるのは間違いなく“負の経験”であり、これは絶対に避けるべきです。この周りからの総攻撃=いじめはトップ取りのゲームでも同様に発声しますが、トップに対するいじめはトップ移行により対象も移行するため問題はありません。けれども、“最下位いじめ”は一度発生すると常に一人のプレイヤーが攻撃を受けることとなるので問題となります。このような問題が発生することから、最下位を決めるゲームは避けた方が無難であるということが言えます。

それでも最下位を決めるゲームを作りたい場合はどのようなことに注意すればいいのでしょうか。自身の制作したボードゲーム『チキン・ラン』は最下位を決定するゲームなので、その際に気を付けた点を含めていくつか挙げていきます。

①ゲーム時間を短くする

最下位を決めるゲームでは、プレイ時間が長ければ長いほど“最下位いじめ”が発生する確率とそのストレスが増幅します。ですので、プレイ時間を短く設定すると単純に“最下位いじめ”による“負の経験”を回避できる可能性を高められます。
『チキン・ラン』はプレイ時間が20分前後と短く、ラウンド数から見ても平均3と小さく設定されており“最下位いじめ”が発生しにくくなっております。

②複数人が同時に不利な状況になる、また最下位の精査ができないようにする

“最下位いじめ”は、誰から見ても最下位が明らかになった場合に発生します。逆に言えば状況が悪いプレイヤーが複数人現れ、その精査(誰が一番悪い状況か)が難しければ発生しないということです。これらを達成するために、一つの解決策として「非公開情報を増やす」という方法が考えられます。非公開情報があると最下位の精査は必ず推測が入り、それは個人の判断によって異なるため結果“最下位いじめ”を回避しやすくなります。
『チキン・ラン』は4~7人プレイのゲームですが、少なくとも3人は状況が悪くなるように設定されており、さらに非公開情報が多いゲームなので最下位の精査が非常に難しくよほどボロボロに負けていなければ“最下位いじめ”が発生しないようなデザインを行っています。

③短いスパンで状況(リソース)をリセットする

最初から最後まで流れが繋がっているゲームでは、後半になるにつれてどうしても最下位が明確となってしまいます。そのため、ゲームの途中でプレイヤーのリソースをリセットする場面を設けることで最下位が明確になっても逆転がしやすい状況を作りやすくなります。例えば麻雀は点数によって最下位は明確でも、局ごとにリソース(手牌)がリセットされるため明らかないじめは難しくなっています。
『チキン・ラン』においても、麻雀と同様に点数(紙幣)以外のリソースがラウンド毎にリセットされるため、いじめるのは難しくなっております。

④特定のプレイヤーを妨害しにくいシステムにする

そもそも“最下位いじめ”は妨害行動なので、それができなければ発生しません。
『チキン・ラン』では相手の妨害は難しい、またはリスクが大きいのでその点においても“最下位いじめ”は起きにくくなっています。

⑤最下位が一瞬で確定する、またはゲーム終了まで最下位が不明

“最下位いじめ”はプレイヤーの差が開き始めてから発生するので、そもそも一瞬で最下位が決定しゲームが終了すれば関係ありません。①や②とも似ていますが、一瞬でゲームが決せられるタイプのシステムなら最下位を決めるというルールと相性がいいかも知れません。

このように“最下位いじめ”を避ける方法はいくつかありますが、上記の一つだけ達成しておけば良いという問題ではなく、やはり「最下位を決める」というルールはかなり繊細に扱わなければいけないルールであるということができます。よほどの理由が無ければ最下位を決めるゲームデザインは避けた方がいいと思います。
ちなみに『チキン・ラン』は、以下のような理由で最下位を決定するルールとしました。

・トップ取りのゲームが好きではない(上振れ狙いの行動が増えるため)
・カードの配分がランダムのためトップ取りにすると運ゲーになる

本章はここまでとなります。マニアックなテーマでしたが、それゆえに参考できるものが少ないと思います。今回の記事が少しでも皆様の制作に貢献できたら幸いです。

次回も参考になるような記事を心がけますのでよろしくお願いいたします。

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