難聴の方とのコミュニケーション後編

こんにちは、白紫菖蒲です。
前回の続きと致しまして、難聴の方とのコミュニケーションについて経験をを元に今回はお話していきたいと思います。



90代のご夫婦のご利用者様で、お二人共、杖や老人車を使わず、年齢から考えると、とてもお元気なご夫婦でした。ご夫婦で補聴器をつけてみえましたが、奥様の方は日常の会話が可能な聴力でしたが、ご主人様は両耳に補聴器をつけてみえました。ただ、付け外しの煩わしさと、さほど変わらない聴こえ方にて、ほとんどの時間を外されてみえました。

「聞こえないのに、外すのよ」

と、奥様は嘆いていらっしゃいました。
前回のnoteで現場で使える10ヶ条を書きましたが、全てを試し、その他のありとあらゆる限り、思いつく限りのコミュニケーション方法を試しましたが、全く聞こえない状態が続きました。最終段階として、ご本人様や御家族様の許可を経て筆談を用いてコミュニケーションをとっていました。


ただ、奥様の声だけは聞こえていたんです。
しかも、近づく訳でもなく、大きな声を出すわけでもなく、他の誰かと話す時と同じようにご主人様に話しかけると聞こえるんです。


やっぱり、長年の寄り添ったご夫婦は見えない所で繋がってるんだなあと思っていた、そんなある日のこと。


男性のご利用者様の入浴時間となり、介護士がご主人様に声を掛けにいきました。いつもなら、奥様からご主人様に声を掛けて頂き、介護士にバトンタッチして入浴されるという流れでしたが、奥様が他のご利用者様とお話しをされていた為、介護士が直接、旦那様に入浴の案内をしていました。


「お風呂です!お風呂!あの…お風呂です!」


ご主人様は介護士の方を見る様子もなく、段々と声が大きくなって来たので、これ以上はまずいと思い、私はその時に気づきました。

ゆっくりと立ち上がって、ご主人様の方に歩き出し、ご主人様と目が合った瞬間に目を逸らさずに笑顔のまま、声を出さずに「お  ふ  ろ」と読唇術を使いました。


「風呂?うん、分かった」


そう頷かれ、ご主人様は直ぐに立ち上がって浴室の方に向かわれました。

「音」でなくても伝えることは出来て
「声」でなくても聞こえるということ
「目」で話す事の大切さに、気づかせて頂くことが出来ました


近年のご時世を考えますと、対面でお話しする事が以前に比べると出来なくなってきたり、SNSの普及により、文字で済ませてしまう事も多くなってきました。
対面であれ、文字であれ、向こう側には誰かが居て、顔を合わせていない分、気持ちを汲むことであったり、表情を読み取ることが難しくなってきているように思います。

対面でも、文字でも、お互いが気持ちよく過ごせるように暮らしていきたいですね。


難聴の方とのコミュニケーションを今回はお話しさせて頂きました。次回は、少し話題を変えて、他職種協働について書き記したいと思います。

1人でも多くの良い介護士さんが増えますように。

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