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エスパーか?マジシャンか?

今から半年前、父が死んだ。

昔ながらの頑固一徹オヤジで、家族からも周囲からも煙たがれることが多かった。死ぬ寸前まで我儘を通していたけど、今となっては、死ぬまで誰かに甘えられるって幸せな人だと、それが父のある意味ポリシーだったのかなと思う。

15年くらい前だが、父が心臓の手術をした時も人騒がせだった。その日は大晦日で私は北海道に帰省していた。朝方、父が急に体調の変化を訴えたので、弟が車を運転して母と病院へ連れていき、そのまま入院になった。数時間後、夕食の食材を買いにスーパーにいる時に母の携帯電話が鳴った。父が急変したとのことで、すぐにその足で病院に行った。救急車で2時間くらいある大きな病院に運ばれることになった。9時間の手術中、母方の親戚が集まってくれた。「こんな日にみんなを呼び寄せるなんて、◯◯らしいわ」と誰がが皮肉っぽいことを言ったが、みんな腹の底では同じことを思っていたに違いない。


先日、久々に帰省し弟に会った。「こないだ面白いことあったわ」と弟が話し始めた。

1年ほど前から趣味でバンドを始めた。そのバンド繋がりで色んなライブハウスに出演したり、バンド同士の交流がある中、ある男と話が合ってすぐに意気投合した。仲間の1人が「そういえば、◯◯さんも出身U町じゃなかった?」とその男に言った。U町は私達の地元だ。しかも同い年とわかり、お互い探ってみると、なんとその男は死んだ父の数少ないお友達の息子だった。小学生くらいまではたまに私たちもお家にお邪魔したり、向こうが訪ねてくることもあったが、20年以上ぶりに再会したことになる。家も引っ越して父は北海道から離れていたので、せめてそのお友達には知らせたかったのだろう。

弟と「死ぬとそういう力使えるんだ?そういう力使ったな!」と話した。

父が亡くなった日、父の弟から「お父さん亡くなったよ」と連絡を受け駆けつけることになったのだが、その日も見事に大雪を降らせてくれた。私はクローゼットにしまい掛けのコートを引っ張り出した。そして、最後の最後まで私たちを困らせるのは、お父さんらしいな、と思った。










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