見出し画像

この世の人じゃない人

私は霊感が、あるようでない。不思議な体験はあるけど、はっきり見たとは言い切れない。しかし、うちの家族の中で、この世じゃないものを見れたり、感じたりする人が二人居る。弟と母だ。見れる人が話す独特の会話が怖い。急に「あの部屋には男の人と女の人いるね」だとか、この間は心霊番組をみながら「みんなああいう風に見えると思ってるのかな、人間と区別がつかないから怖いんじゃん」とか。

でもその言葉を聞いて、「私ももしかしたらそれらしきものを見てたのかも」と思うことがある。

数年前世田谷のある街に住んでいた頃、たまに◯◯通りに現れていた、女の人。昭和の人が着るような古着っぽい洋服、真っ黒のおかっぱ頭で、前髪は目が少し隠れる感じ。私の怖いと思ったポイントは、ゆっくりゆっくり少しずつ歩いては立ち止まり、しかも止まっている時の向きが進んでる向きのまま。ただ単にいつも具合の悪い人なのだろうか、3回くらいは見た。私は「女おばけ」と名前をつけていた。

それと数ヶ月前になるのだが、お父さんに似たおじさん。なぜ父をすぐ連想するのかというと、父が亡くなる数週間前に電話をしても連絡がつかない時期があった。その時期によく会社帰りや休みの日に家の近所に現れる、歩行器で歩いているおじさんがいた。父が施設にはいっている時、自力で歩けず歩行器を使うかなど施設の人と話したこともあり、そのおじさんを見ると反射的に父が浮かんできたのだ。

ある日、会社帰りにそのおじさんが駅付近にいらっしゃった。私はコンビニに入りあらかじめ買うと決めていたものを買い、すぐにレジを済ませて店を出た。自宅マンションの前まで行って、少しビクッとした。そのおじさんが、マンションを背にして誰かを待っているように立ち止まっていたからだ。しかも、歩行器でゆっくり歩くおじさんが僅かな時間で瞬間移動していたのだ。

その後2週間ほどして父が亡くなったのだが、あれからそのおじさんには会わなくなった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?